質問3 三歳半の男の子になりますが、同年代のこどもたちと比べると言葉が遅いように思うのですが。(幼児期)

回答3 言葉の遅い子は男の子によくみられる傾向です。但し、小学校に入るころには正常になっていることも多くみられます。時期が来れば自然に良くなることもあるので、焦らないで温かく見守ることも大切なことだと言えます。

目次
判断のポイントは言葉の理解
    言葉の発達の目安
        「ことばが遅い」ことを疑う
          ことばの遅れの原因を考え

判断のポイントは言葉の理解

言葉の理解ができていれば、特別な努力をする必要はありません。話すのを待ってあげてください。
理解の目安は次のとおりです。

 (1)2歳:身体部位の識別や簡単な指示の理解。指さしができている。
(2)3歳:大小や長短、色の理解ができている。
(3)4歳:数の概念の理解ができている。

これらの理解が遅いこどもは、ただ言葉が遅いだけでなく、精神遅滞(知的発達の遅れ)や広汎性発達障害の可能性もあるので、かかりつけの小児科医に相談してみてください。なお、自治体が運営する言葉の教室では、言葉の遅いこどもに楽しく遊びながら言葉を投げかけるものもありますので、母親の負担の軽減にもなります。利用することをお薦めします。

言葉の発達の目安

以下には、言葉の発達の目安となるものを表にしてみました。注意していただきたきたいことは、これはあくまでも目安であり、出来ていて当り前というものでは決してないということはいうまでもありません。これは、こどもの言葉の発達を観た結果から記したものであり、早い/遅いで能力の優劣を決めるものではないということです。また実際、発達の早い/遅いでお子さんの能力の優劣は決まることはありません。
以上のことを十分理解した上で、言葉の発達の目安となる表をご覧ください。

〇言葉の発達の目安

年齢 わかる 話す
0~1 音に応じる
音や言葉の聞き分け
言葉と物の関係
喃語(バーバ、マンマ、ブーブー)
身近な人の声の調子の模倣
身近な人の言葉の模倣
1~2 言葉と意味の関係づけ
簡単な指示に従う
欲求
1歳:1~3語
1歳半:15~20語
2歳:200語、盛んに真似をする
2~3 2歳半までに400語
3歳までに800語
2つの指示に従う

状況の報告:どうする、どうしている、どうした
2語文:「おかし ちょうだい」
ことばの急増期:つかえたり繰り返しなど目立つ、「なに?」「どこ?」「だれ?」

3~4

複文:日常生活に関する言葉はほぼ理解する

3、4語文:「ふくろの おかし ちょうだい」
会話に助詞が入る:「これとって」⇒「これをとって」、「ネコすき」⇒「ネコがすき」
単文:大人と会話できる1,700語
「いつ?」「どうして?」「どんな?」
4~5   3、4音節語
4、6語文:「さっきの ふくろの おかし ちょうだい」
脈略がある話、発音もほぼ完成
5~6   完全な5、6語文:「さっき スーパーで かった ふくろの
おかし ちょうだい」
相手や話題に合わせる、複文
就学時 6000語
概念理解は個人差が大きい
比喩など文字どおりでない意味の理解も可能に
日常生活に用いる語録や構文
3,000語
単語の音節分解、文字の対応

「ことばが遅い」ことを疑う

言葉の発達はかなり個人差があります。一歳過ぎで意味のあることばが全く出なかったり、二歳半ぐらいで二語文が全く話せなないようであったら「ことばが遅い」ことを疑ってみても良いと思われます。
言葉が遅い理由としては、「難聴がある場合」、「活舌が悪い場合」、「言語障害」、「知的障害」、「発達障害(自閉症)」などが考えられます。
 自閉症のお子さんの場合、言葉の遅れだけではなく周囲の人と共感することが難しく、呼ばれても振り返らない、同年代のこどもといても関わりを持とうとしないなどの特徴が見られます。

ことばの遅れの原因を考え

では、ことばの遅れにはどんな原因が考えられるでしょう。
聴力には問題はないか…ことばの発達には耳がしっかりと聞こえていることが重要です。多くのお子さんは新生児の時期に、聴覚スクリーニングテストを受けていると思います。母子手帳に貼ってあることが多いので確認してください。ただ新生児期には正常でも、その後の中耳炎などで聴力が低下して脳へ刺激が入らず、ことばの発達に影響を及ぼすこともあります。ですので、ことばが明らかに遅れている場合には、まず聴力検査をおこなって音が確実に聞こえているかを確かめる必用があります。

発達性言語障害》
発達性言語障害(言語症)は、ほかの面での発達の問題がないにも関わらず、ことばが遅れる場合があります。ことばの理解が良好な場合と、ことばの理解が難しい場合があります。ただジェスチャーなどを通じた周囲の大人との間のコミュニケーションは良好です。
《神経発達症》
神経発達症(発達障害)の中で、自閉症スペクトラムのお子さんの多くは、言葉の遅れをともなっています。こうしたお子さんは、ことばだけでなく視線があいにくい、ジェスチャーや身振りなどによるコミュニケーションにも課題があるのが特徴です。手のひらを自分に向けてバイバイをしたりもします。

《知的障害》
ことばの発達には幅広い認知機能(知能)の発達も必用です。知的な課題があるお子さんは、ことばの発達が遅れることもしばしばみられます。

《メディア漬け》
一番多くみるパターンには、メディア漬けのため言葉がでてこないお子さんです。耳も異状なく、こちらの理解もできている。自閉傾向もなくて、知的課題もないお子さんの場合は1ヶ月間、テレビ、スマホとの接触を完全に断ち切り、親子のあいだでの会話時間をとりもどすだけで発語がはじまることは珍しくありません。以上のような原因が考えられますが、いずれにしても乳幼児との毎日のコミュニケーションはとても大切なことです。
ことばが遅れているお子さんも、お母さんとのコミュニケーションがうまくいかなくて困っているかもしれません。ことばの遅れが心配になるような気になることがあれば、かかりつけの小児科医や、地域の健康診断のときにご相談ください。何か原因がないかどうかを確認することは大事なことです。また毎日の家庭でできることをアドバイスしてもらえるかもしれません。