発達障害の偏食改善法について

目次
はじめに
発達障害の半数以上に偏食がある
        大人になっても食べられない
偏食を改善する方法
        偏食3つのグループ
        どのグループになるかチェックリストの活用
偏食改善レシピ
        〇感覚で選ぶ場合のレシピ
        〇形状で選ぶ場合のレシピ
        〇慣れたものを食べる場合のレシピ
最後に
改めて発達障害があるこどもに、偏食が多い原因とは?
        〇感覚過敏
        〇強いこだわり

はじめに

発達障害の症状のひとつに偏食があります。ただたんにまずいから食べられないという我儘ではなく、最近の研究では、ほんとうにその触感や気持ち悪さから食べられないことがわかってきました。以下では、なぜ発達障害は偏食してしまうのかその原因と、どうやったら食べられるようになるのか説明します。

発達障害の半数以上に偏食がある

発達障害者の半数以上に、偏食があることが調査でわかりました。発達障害の症状のひとつに、感覚が敏感であることがあります。これは食べ物に対しても感覚が敏感で、普通の人が普通に食べられるものに対して、過剰に反応してしまうということが明らかになりました。
例えば、以下のような場合があります。

・ピーマンやニンジンなど、単色の食べ物が怖く感じる。
・イチゴなど、表面がツブツブした食べ物は気持ち悪く感じる。
・カレーや八宝菜など、たくさんの食材が入っている料理の触感が苦手。
・ポテトチップやコロッケなど、固くてイガイガしたものを食べると痛みを感じる。
・慣れたものしか食べず、新しい食材を怖く感じる。
・食べ物を食べるときの咀嚼音がうるさい、不快で食べられない。
・食材の触感そのものが苦手で、プラスチックを食べたような味に感じる。

大人になっても食べられない

発達障害でも、年齢があがるにつれて食べられる物は多くなっていくケースが多いです。しかし、以下のようなことがあると、食べられない食べ物が増えてしまいます。

・親が無理に食べさせようとする。
・先生が居残りさせてまで給食を食べさせようとする。
・最初たべたときに、まずい、汚い、痛いと強烈な印象を残してしまった食べ物。
・食べられない物を食べようと、努力をまったくしない。

食べられない物は理由があって食べられないのであって、強引に食べさせようとすると、かえって逆効果になることがあります。無理やり食べさせられ、そのせいで楽しみにしていたことが、悲しい体験となってしまった場合、食べ物を見ると感覚過敏をおこしてしまい、それで食べられなくなってしまいます。まさかこの偏食が発達障害のせいであるとは本人も周りの大人も思っていなことが多いです。

偏食を改善する方法

発達障害の困った偏食ですが、改善する方法あります。こどものうちから改善するのがもっとも望ましいのですが、大人になってからでも改善する余地は十分にあります。

偏食3つのグループ 

発達障害の偏食は、3つのグループにわかれます。

〇感覚で選ぶ…揚げ物やポテトチップなどのスナック菓子が好きな傾向がある。
       食べ物を手で触って、独自の感覚で食べられるかどうか判断する。
       食べ物の刺激に強く、味付けが濃い物や辛みがある刺激物が好きな傾向がある。
〇形状で判断…サイコロ状に切った食べ物、ポテトフライのように細長い形状のものなど、食べ物の形状で食べられ
                        るか判断するタイプ。
それぞれ好みの味付けがあるので、どんな食材でも形状にして好みの味付けに
                        すれば食べられるものが増える。
いっぺんに食べるのではなく、少しずつ食べる傾向がある。
〇慣れた食物…小さい頃に食べたことがある食べ物、料理のみを食べるタイプ。
       食べたことがない食べ物は、何が入っているか分からない、得体が知れないと恐怖を感じる。

どのグループになるかチェックリストの活用

  感覚 形態 慣れたもの
白いごはんが好き      
味付けごはんが好き(のり、ふりかけ、納豆なども)      
麺類好き      
パンが好き    
カレーが好き      
ジュースまたは牛乳は好きだがお茶は苦手  
果物が好き  
醤油・ソース・マヨネーズ等をつけるのが好きなものがある  
味噌汁が好き  
  感覚 形態 慣れたもの

ねっとりしたものが苦手

 
スナック菓子、フライドポテトが好き      
揚げ物が好き      

食材が混じりあった料理が苦手

   
せん切りのものが好き  

見て食べる食べないを決める

     
同じ食材でも切り方が違うと食べない  

同じ食品・料理等を多く食べる(具体的:  

   

牛乳・ジュースなどお茶以外の飲み物を200㏄以上飲む

 
  感覚 形態 慣れたもの
食べるのが遅い  
よく噛まない    ⁄  ⁄
ご飯を茶碗1敗以上食べる    ⁄  ⁄
口から出しながら食べる    ⁄  ⁄
道具(はし・フォーク・スプーン等)が上手く使えない      

直接手で食べる

     
遊ぶ食べをする  ⁄    ⁄
嫌な時の意思表示として嫌な顔をする  ⁄    ⁄
嫌な時の意思表示として口からだす      

  感覚 形態 慣れたもの
嫌な時の意思表示としていやという  
嫌な時の意思表示として口を開けない      
うれしい時の意思表示として笑顔      
うれしい時の意思表示として声をだす      
苦手なものを頑張る時ほめられると笑顔がみられる  
苦手なものを頑張る方法として好みの調味料をつける  
  感覚 形態 慣れたもの

(50%以下の質問事項)

     
鮭フレークやミンチやごまなどつぶつぶしたものが好き  
水分、とろみなど濡れたり、ぬるっとしたものが苦手  
よく器からこぼす  
歯磨きを嫌がる  

 

  感覚 形態 慣れたもの
(50%以下の質問事項)      
触ってみて食べる食べないを決める  
苦手なものを頑張る方法として食材名を伝える  
苦手なものを頑張る方法として好きなものとかけひきできる  
       

集計 チェック数

     
総項目数 27 22 20
     

偏食改善レシピ

次に、偏食を改善するためのレシピを3つのタイプから考えてみます。

〇感覚で選ぶ場合のレシピ

食べられない食べ物を、食べられる物の触感にさせることがポイントです。
このタイプは、揚げ物やスナック菓子が好きな傾向があるので、「揚げる」ことが良い方法です。
・うどん→素揚げ→柔らかい素揚げ→炒める→最終的にゆでたうどん
・ごぼう、ニンジン、玉ねぎのサラダ→素揚げか衣をつけて揚げる→徐々に茹でたものを上げる→最終的にゆでるだけ
・カレー→春巻きにカレーを入れて揚げる→徐々に柔らかくあげる→最終的にカレーのみ

〇形状で選ぶ場合のレシピ

形状タイプは、食べられる好きな食べ物の形状に合わせることがポイントです。また、味付けの好みがあるので、醤油が好きならどんな料理でも醤油味にすることで食べやすくなります。
形状と味付けが分かりやすいように、料理や食材は細かく小皿に分けてよそうことがポイントです。
味付けが自分好みにできるように、好きな調味料をテーブルに置いておきましょう。

《細切りが好きな場合》
野菜サラダ→きゅうり、にんじん、レタス、ハム、トマト、すべて細切りにする
揚げ物→さつまいも、コロッケ、ナスの天ぷらなど、全て細切りにしてから揚げる
煮物→ジャガイモ、ピーマン、たまねぎ、お肉すべて細切りにする
細切りが好きな場合は、徐々に形状を大きくしていき、最終的に普通の大きさで食べられるようにすることが目標です。

〇慣れたものを食べる場合のレシピ

小さい頃から食べていた物なら食べられるタイプは、そのまま食べられる物を利用して、どんどん食べられる食材を増やしていきます。
ポテトサラダが好きだったら、その中に少量、食べられない食べ物を混ぜていきます。
かぼちゃが食べられるようになったら、かぼちゃサラダにするなどして、食べられる範囲を広げていきます。
煮物が好きな場合→好きな煮物に食べられない食べ物を混ぜる、食べられる食材で湯がいた食べ物
味噌汁が好きな場合→食べられない具材を1つ入れる
食べられる物を徐々に増やし、最終的には食べられる物がたくさんできるようにするのが目標です。

最後に

食べ物を食べられるようになるポイントは、個人個人の特徴をみて、それぞれにあった方法を取り入れるべきです。以下は、その一例になります。

・食器の変化に敏感な場合、すべての食器の材質、形を同じ食器で提供する
・形状に敏感な場合は、形状が分かりやすいように食器を別々にし、方向をそろえてきれいに盛り付ける
・たくさん入った料理が苦手な場合、じゃがいもはじゃがいもの場所、にんじんはにんじんの場所といったよう
    に、一か所にまとめてきれいに盛り付ける
・周囲の環境に敏感な場合は、ついたてを用いる
・スプーン一口ではなく、米粒一粒食べたら褒めるという、スモールステップを踏んでいく
・食器に少なくよそって、食べた達成感を味合わせる
・食事が食べられなくなるような、過剰なお菓子を与えない(幼児は100カロリーまで)
・いろいろな場所で、いろいろな人と食事をとると効果的な場合がある

改めて発達障害があるこどもに、偏食が多い原因とは?

〇感覚過敏

発達障害がある人の中には、感覚(五感と呼ばれる視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)のはたらきに過度に偏りがみられる人がいます。このような感覚の偏りは、特定の感覚・刺激を過剰に受け取ってしまう「感覚過敏」と、逆に、感覚・刺激に対する反応がにぶくなる「感覚鈍麻」に分けられます。
感覚過敏の症状の中には、味覚に偏りがあり、特定の味に過剰に刺激を感じてしまう「味覚過敏」や、特定のにおいを過剰に受け取ってしまう「嗅覚過敏」というものがあります。
この感覚過敏と発達障害には密接な関係があり、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)の人に多い特性であるといわれています。感覚過敏がある人は、味やにおいの刺激が過剰に感じられるため、特定の食べ物に拒否反応を示してしまう場合があります。食べたくてもどうしても食べられず、偏食につながります。

〇強いこだわり

発達障害の特性のひとつである、強いこだわりも、偏食の要因になっています。
こだわりの例としては、毎食同じ食べ物ばかり食べ続けたり、同じ食品の中でもある特定のメーカーのものしか食べなかったりするというものがあげられます。
また、初めてある食品を食べたときに味覚や食感が合わないといった違和感を感じると、強い嫌悪感を抱いてしまい、その後一切、その食品を口にしなくなることがあります。
このようなこだわりが、偏食を固定化し、特定の食べ物だけしか食べないという行動をとらせてしまいます。こうした発達障害の人特有の感じ方は生まれつきのもので、本人の努力だけでどうにかなる問題ではありません。それにもかかわらず、周囲の人からはなかなか理解されず、わがままや、親のしつけの問題にされ、本人やその家族が追い詰められてしまうことがあります。

偏食を改善するのは、なかなか難しいことですか、これまで述べてきたことをヒントにトライしてみてください。