障害者福祉が抱える問題点とは?

目次

障害者福祉の最大の目的は「障害者の自立支援」
障害者福祉の問題点に対する政府や社会の取り組み
    ①障害者への理解を深める啓蒙活動
    ②障害者の就労支援を促進
    ③障害のあるこどものための教育支援
    ④バリアフリー化の推進

障害者福祉の問題点に対して現場ができる3つのこと
    ①障害者の自立支援に向け関係機関と連携する
    ②支援の質を高めるための人材教育を行う
    ③地域と交流し差別や偏見を減らす
最後に……

障害者福祉サービスのニーズが増加傾向にある今日では、障害者福祉が抱える問題点も多様化しています。障害者福祉に関わっていくなかで、どのような問題点を抱えているのかを知っておくと、サービスの質の向上やサービスの拡充につながる可能性もあります。そこで、以下では障害者福祉が抱える問題点と対策について解説します。さらに、問題点を解決するために事業所としてできることについても紹介します。

障害者福祉の最大の目的は「障害者の自立支援」

障害者福祉の最大の目的は「障害者の自立支援」です。障害者支援の基礎となる障害者総合支援法では、障害があっても自立した生活が送れるように支援することを目的としており、以下のような6つの理念を掲げています。

・障害の有無にかかわらず平等に基本的人権を持ち、かけがえのない個人として尊重されること
・障害の有無で分けられることなく、人格と個性を尊重しながら共生社会を実現すること
・障害者(児)が可能な限り身近な場所で必要な日常生活や社会生活を営むための支援が受けられること

・社会参加の機会が確保されること
・どこで誰と生活するかを選択でき、地域社会で他の人々との共生が妨げられないこと
・障害者(児)が日常生活や社会生活を営む上で障壁となるものの除去に資すること


これまでの障害者総合支援法の改正では、障害者の生活の場を施設などから地域社会へ移行できるよう、「生活」や「就労」のさらなる支援充実や障害児支援の多様なニーズへの対応の支援拡充が図られています。

障害者福祉の問題点に対する政府や社会の取り組み

障害者福祉の問題点に対し、政府や社会では次のような取り組みを行っています。

①障害者への理解を深める啓蒙活動

障害者福祉の抱える問題点を解決するためには、障害者への理解を深める必要があります。国は、障害者への理解を深める機会として、毎年12月3日から9日までを「障害者週間」とし、関係表彰の実施や作品展、ワークショップなどを開催し、啓蒙に努めています。また、全国社会福祉協議会に設置してある全国ボランティア・市民活動振興センターへの補助を実施し、ボランティア活動の推進や各種啓蒙活動が円滑に行えるよう支援しています。

②障害者の就労支援を促進

障害のある人が生涯にわたり自立して社会に参加していくためには、就労は欠かせません。国は、雇用する企業に向けた雇用拡大施策や、就労支援の拡大、障害特性に応じた雇用施策など、障害者の就労支援を推進しています。このうち、就労支援の拡大では、ハローワークが障害者向けチーム支援や精神障害者雇用トータルサポーター、トライアル雇用などを実施しています。また、他の機関では支援が難しい障害者を中心とした支援を総合的に行う地域障害者職業センターや、障害のある人の身近な地域での就労支援を行う障害者就業・生活支援センターなどもあります。このように、障害者の就労支援については、支援体制を拡大することで推進が進められています。

③障害のあるこどものための教育支援

障害のあるこどものための教育支援では、将来自立した生活を送れるような支援が実施できるための枠組みを作っています。例えば、小学校や中学校では以前より実施されていた通級指導が、2018年度からは高校でも実施されるようになりました。また、障害特性に応じた指導上の配慮を充実する取り組みや、キャリア教育の充実や生涯学習への意欲向上といった自立と社会生活に向けた教育内容がカリキュラムに盛り込まれています。さらに、障害を理由に高等教育などへの進学の機会を失うことがないような提案もされています。具体的には、出願資格の改善や合理的配慮の提供による公平な入試といった内容が、国から学校側に求められています。

④バリアフリー化の推進

バリアフリー化は、これまで公共施設や交通機関などのハード面を中心に行われてきました。近年は、ハード面だけではなくソフト面のバリアフリー化についても推進に取り組んでいます。バリアフリー法では、2021年度以降のバリアフリー目標として、聴覚や知的、精神、発達障害に関わるバリアフリーの進捗状況の見える化や、心のバリアフリー化の推進を掲げています。

障害者福祉の問題点に対して現場ができる3つのこと

障害者福祉の問題点を解決するために、現場である事業所ではどのようなことができるでしょうか。3つ紹介します。

①障害者の自立支援に向け関係機関と連携する

障害者支援では、さまざまな事業所や人が関わります。障害者が望む生活を実現するためには、関係機関と普段から情報交換を行い連携しておくことが大切です。もし、自社で対応できないことが起きた場合でも、普段から他機関とつながっておけば、解決に向けての選択肢が広がる可能性が高いでしょう。また、普段から情報を共有しておくことで、スピード感を持って解決に動くこともできます。

②支援の質を高めるための人材教育を行う

障害者の自立支援を行うためには、支援者側の質の向上は必要不可欠です。社内外の研修への参加や資格取得への支援など、人材教育を積極的に行うことを奨めます。社外研修の参加者が、研修で得た知識をフィードバックする機会を作ると、職員全体のスキルアップが期待でき、サービスの質の向上につながります。

③地域と交流し差別や偏見を減らす

人は知らないことについて不安を抱きやすいものです。まずは、地域の人に障害者や事業所について知ってもらうことから始めてはどうでしょう。具体的には、地域イベントへの積極的な参加や、地域に向けのイベント開催を通じて、地域との交流の機会を作るなどがあります。地域と交流し障害者や事業所について知ってもらう機会が増えれば増えるほど、そのことによって差別や偏見を減らすことにつながります。

最後に……

障害福祉サービスの事業所は、障害者と直接かかわりながら、支援やサービスを提供する役割を果たします。障害者福祉の問題点を知ることは、障害者のニーズを把握することにつながります。それによって、より適切で質の高い支援を供することが可能です。