放課後等デイサービスの機能訓練担当職員になるには

目次
1.機能訓練担当職員とは
2.機能訓練担当職員になるためには?
3.理学療法士
    3-1.理学療法士になるには
        《養成校》
    3-2.理学療法士国家試験について
    3-3.理学療法士/作業療法士国家試験受験資格の認定について
4.作業療法士
    4-1.作業療法士になる方法
        《高校生から作業療法士になるには》
        《大学生・短大生から作業療法士になるには》
        《社会人から作業療法士になるには》
    4-3.作業療法士/理学療法士国家試験受験資格の認定について
5.言語聴覚士
    5-1.言語聴覚士になるには
    5-2.言語聴覚士の養成校
    5-3.言語聴覚士国家試験について
    5-4.言語聴覚士国家試験受験資格の認定について
6.心理指導担当職員
    6-1.心理指導担当職員になるには
    6-2.心理指導担当職員として働くために有利な資格
        ①公認心理師
        ②臨床心理士
        ③臨床発達心理士
    6-3.⼼理指導担当職員が放課後等デイサービスでの⽀援は
        《アセスメント業務》
        《こどもへの支援・アプローチ》
        《家族・保護者への支援》
        《関係機関との連携》

1.機能訓練担当職員とは

機能訓練担当職員は、介護保険法によって定められている職種のひとつです。利用者一人ひとりの心身の状態に合わせて機能訓練をおこない、できる限り自分で身の回りのことができるように支援していく役割を担っています。

機能訓練担当職員の仕事は、まず利用者の生活環境の確認や身体機能の評価から始まります。利用者本人やその家族の意向も伺いながら、どのような訓練が必要なのかを判断し、機能訓練計画表を作成します。機能訓練はこの計画表に沿っておこなわれるのです。また、機能訓練計画表は3ヶ月ごとに見直すのが決まりごと。そのため、3ヶ月ごとに経過や状態などを踏まえて機能訓練計画表を作成します。

2.機能訓練担当職員になるためには?

機能訓練指導員という職種はあくまでその役割を意味するもの。機能訓練という資格があるわけではありません。放課後等デイサービスで機能訓練担当職員として働くためには、下記4つの資格の内いずれかを持っていることが条件となります。

《機能訓練指導員として認められる資格》
①理学療法士
②作業療法士
③言語聴覚士
④心理指導担当職員

3.理学療法士

機能訓練指導員として働く理学療法士は、病気やケガなどにより運動機能に障害を持った利用者さんのリハビリテーションをおこなうことができます。リハビリテーションに特化している理学療法士は運動療法や物理療法により、日常における運動・動作の機能改善や症状悪化の防止を目的とします。

3-1.理学療法士になるには

理学療法士として人の役に立つ仕事をするためには、まず国家資格を取得することが必要です。国家資格とは、国が法律で定め、国や地方自治体などが認定する資格のことをいいます。理学療法士の場合は、「理学療法士及び作業療法士法」にもとづき、厚生労働大臣が免許を与えます。
理学療法士の国家試験を受験するためには、養成校で3年以上学び、必要な知識と技術を身につけることが必要です。養成校には4年制大学、短期大学(3年制)、専門学校(3年制、4年制)、特別支援学校(視覚障害者が対象)があります。資格取得後、より専門的な知識を身に付ける場合、研究職をめざす場合などは大学院もあります。(修士課程・博士課程)。なお、すでに作業療法士の資格を持っている人は、養成校で2年以上学べば受験資格が得られます。また、外国の養成校を卒業した方、外国で理学療法士の免許を取得した人は、所定の手続きをして厚生労働大臣の認定を受ければ、新たに養成校に入る必要がない場合や不足した単位のみ取得すればいい場合もあります。

《養成校》

養成校のカリキュラムには、大きく分けて、一般教養科目、専門基礎科目、専門科目、臨床実習の4種類があります。専門科目には実技やグループで課題に取り組む授業もあります。 また、養成校それぞれにも特色がありますので、自分が将来どんな職場で働きたいかを考え、それに合うカリキュラムや実習先を用意しているところを選ぶことをお薦めします。

3-2.理学療法士国家試験について

理学療法士国家試験については、厚生労働省ホームページ:理学療法士国家試験の施行 を参照してください。

3-3.理学療法士/作業療法士国家試験受験資格の認定について

理学療法士/作業療法士国家試験受験資格の認定については、厚生労働省ホームページ:理学療法士・作業療法士国家試験受験資格の認定について を参照してください。

4.作業療法士

理学療法士が日常的な基本動作のリハビリテーションを得意とする一方、作業療法士は心理的リハビリテーションや、入浴・食事・読書・掃除などの応用動作のリハビリテーションをおこないます。また、レクリエーションや創作活動もリハビリテーションに取り入れ、心身ともにケアをすることで社会生活への復帰の手助けをします。

4-1.作業療法士になる方法

作業療法士になるためには、国家資格を取得しなければなりません。しかし、国家試験を受けるためには、受験資格を満たす必要があります。受験資格を得るためには、作業療法士の養成課程がある大学、短大、専門学校で3年以上学び、所定の過程を修了しなければなりません。
そのため、作業療法士になるためには、受験資格を満たすことができるかを確認してから、学校選びをするようにしてください。

《高校生から作業療法士になるには》

高校生から作業療法士の知識・技術、国家試験要件を満たし、作業療法士として働くには、以下のようなルートがあります。
①高校卒業後、作業療法士の養成校(大学・専門学校)に入学。
②養成校を卒業し、国家試験受験資格を取得。
③作業療法士国家試験合格。
④作業療法士として勤務。

《大学生・短大生から作業療法士になるには》

大学卒業後から作業療法士になる方法もあります。しかし当然、作業療法士の国家資格を取得しなければならないため、養成校(大学・専門学校)へ行き、学ぶことが最短ルートでもあります。
①大学卒業後、作業療法士の養成校(大学・専門学校)に入学。
②養成校を卒業し、国家試験受験資格を取得。
③作業療法士国家試験合格。
④作業療法士として勤務。

《社会人から作業療法士になるには》

作業療法士として働くためには作業療法士の国家資格を取得している必要があるため、作業療法士に転職をするためには、作業療法士の養成校(大学・専門学校)へ進学する必要があります。
①作業療法士の養成校(大学・専門学校)に入学。
②養成校を卒業し、国家試験受験資格を取得。
③作業療法士国家試験合格。
④作業療法士として勤務。
全国の作業療法士養成校一覧(一般社団法人日本作業療法士協会)

4-3.作業療法士/理学療法士国家試験受験資格の認定について

理学療法士/作業療法士国家試験受験資格の認定については、厚生労働省ホームページ:理学療法士・作業療法士国家試験受験資格の認定について を参照してください。

5.言語聴覚士

機能訓練指導員として働く言語聴覚士は、言葉を介したコミュニケーションに障害を持つ方に対して、その機能回復訓練や指導、リハビリテーションをおこないます。またそのほか、嚥下障害や口腔機能など「食べる」ことに関しての機能回復を目指すことも重要な業務です。

5-1.言語聴覚士になるには

言語聴覚士になるには、法律に定められた教育課程を経て国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。試験は毎年3月に行われ、合格率は50~60%台で推移しています。
最終的には国家試験に合格しなくてはなりませんが、国家試験の受験資格を得るには必要な知識と技能の習得が義務付けられています。
高校卒業者の場合は、文部科学大臣が指定する学校(3~4年制の大学・短大)または都道府県知事が指定する言語聴覚士養成所(3~4年制の専修学校)を卒業することで受験資格が得られます。
一般の4年制大学卒業者の場合は、指定された大学・大学院の専攻科または専修学校(2年制)を卒業することで受験資格が得られます。
以上が一般的なコースですが、言語聴覚士の養成に関わる一定基準の科目をすでに習得している者を対象とした指定校(1年制)もあります。また、外国で言語聴覚士に関する学業を修めた者の場合は、厚生労働大臣の認定が得られれば受験資格が取得できます。

5-2.言語聴覚士の養成校

養成教育の現場では、基礎・専門基礎科目として言語・コミュニケーション行動に関連する医学、心理学、言語学、音声学、音響学、社会科学などを学びます。
また、専門科目として言語聴覚障害学総論、失語・高次脳機能障害学、言語発達障害学、発声発語・嚥下障害学、聴覚障害学などを学習します。
さらに、病院、リハビリテーションセンター、小児の療育施設などで臨床実習を行い、言語聴覚障害がある方を支援するのに必要な知識・技術・倫理を修得します。
全国の言語聴覚障害養成校の検索(一般社団法人言語聴覚士協会)

5-3.言語聴覚士国家試験について

作業療法士国家試験については、厚生労働省ホームページ:言語聴覚士国家試験の施行 を参照してください。

5-4.言語聴覚士国家試験受験資格の認定について

言語聴覚士国家試験受験資格の認定については、厚生労働省ホームページ:言語聴覚士国家試験受験資格の認定について を参照してください。

6.心理指導担当職員

心理指導担当職員は心理学の知識を用いて、こどものケアをします。児童発達支援や放課後等デイサービスには、さまざまな障害を持った子どもたちが通っています。抱えている問題も一人ひとり違うため、オーダーメイドの療育が必要です。そんなときに活躍する人が心理指導担当職員。専門的な知識を持っているからこそ、障害特性や心理的外傷を理解でき、寄り添った指導が期待されます。心理指導担当職員が、児童発達支援や放課後等デイサービスで、具体的に行う心理的支援は以下の通りです。
・アセスメント
・こどもへの支援
・保護者支援
・関係機関と連携
こどもたちのケアが中心のお仕事です。ただしそれだけでなく、保護者や関係機関との連携も行います。心理指導担当職員は、さまざまな人に向き合わなければなりません。難しい部分もありますが、多くの人から感謝される仕事です。

6-1.心理指導担当職員になるには

心理指導担当職員になるために、資格取得は絶対的条件ではありません。「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」によると、心理指導担当職員の要件は以下のように定められています。
心理指導担当職員は、学校教育法の規定による大学(短期大学を除く)において、心理学を専修する学科若しくはこれに相当する課程を修めて卒業した者であつて、個人及び集団心理療法の技術を有するもの又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者でなければならない。(“児童福祉施設の設備及び運営に関する基準”)
心理指導担当職員は心理学の専門的な知識を用いて、障害や課題のあるこどもの手助けを行います。資格は必要ありませんが、専門的な観点からアドバイスしなければならないため、上記のような要件があります。簡単になれるものではありませんが、その分やりがいをもって働ける職業です。
また心理指導担当職員になるために資格は不要です。ただし就職する場合は関連資格を持っていると有利に働きます。例えば公認心理師や臨床心理士や臨床発達心理士等です。これらの資格を持っていないと働けない事業所もあるため、事前に理解するようにしてください。

6-2.心理指導担当職員として働くために有利な資格

心理指導担当職員となるための専門の資格は必要ありません。
ただし求人を見ると、ほとんどが『公認心理師』や『臨床心理士』『臨床発達心理士』等の資格所有者を条件として定めています。心理指導担当職員として働くために有利な資格は主に以下の3つです。
①公認心理師
②臨床心理士
③臨床発達心理士
以下資格要件を記します。

①公認心理師

まず公認心理師とは、幅広い心理分野で活躍できる職業です。公認心理師資格を取得することで、公認心理師として認められます。公認心理師資格は2017年に、初めて心理職での国家資格として認められたもので、権威ある職業です。公認心理士になるためには、「公認心理師法」で定められている受験資格が必要なため、通常ルートの3つを紹介します。
イ)4年制大学で「指定の科目」修得し、大学院で「指定の科目」を修得した者。
ロ)4年大学で「指定の科目」修得し、卒業後「特定の施設」で2年以上の実務経験をした者。
ハ)外国の大学において心理に関する科目を修め、外国の大学院において心理に関する科目を修了した者。
公認心理士の合格率は、約60%と言われています。ただし比較的新しい国家資格のため、データー不十分と考えられています。

②臨床心理士

つぎに臨床心理士とは、スクールカウンセラーや病院での勤務など、幅広い分野で活躍できる職業です。資格は1988年に民間資格として制定されました。臨床心理士になるためには、「公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会」が認定する資格を取得する必要があります。主なルートを3つご紹介します。
イ)指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を充足している者。
ロ)臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者。
ハ)諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後の日本国内における心理臨床経験2年以上を有する者。
公認心理師と資格受験の内容はほぼ同じですが、合格率は60%から65%と言われており、少し高まります。

③臨床発達心理士

さいごに臨床発達心理士とは、人々の発達・成長・加齢に寄り添って「人の健やかな育ち」を支援する専門家の資格です。臨床心理士や公認心理士の大きな違いは、発達心理関係に特化した支援を行う点です。発達心理学は、2001年に誕生した民間資格で、人が一生を通じて心と体を成長・発達させ、変化していく過程を研究します。 臨床発達心理士になるためには、条件を満たし、一次審査、二次審査の二つの審査をクリアしなければなりません。一次審査を突破しなければ、二次審査に進むことはできず、民間資格でありながら、簡単に取れるものではありません。一般的な受験資格を3つ紹介します。
イ)大学院在学または修了後、3年未満な者。
ロ)公認心理師を取得している者。
ハ)臨床経験(医師や薬剤師、臨床心理士など)が3年以上ある者。
合格率は、65%から70%です。臨床心理士に比べると難易度が下がると言われています。

6-3.⼼理指導担当職員が放課後等デイサービスでの⽀援は

《アセスメント業務》

放課後等デイサービスのアセスメントは、対象者や支援者との面談をもとに、アセスメントシートを作成し、一人ひとりにあった計画書を作成します。こどもの置かれている環境(家族構成・生育歴)、発達の課題等の情報を保護者などから集め、必要に応じて知能検査を行うこともあります。こどもと直接話す過程や、一緒に遊ぶことで情報を収集することもあります。単純にヒアリングするだけでなく、家や学校等の様子から、今なにが必要で、どのような課題があるか探すことが重要です。アセスメントシート作成は、こどもの課題が明確に記されるため、共通支援にも繋がります。

《こどもへの支援・アプローチ》

こどもへの支援アプローチの方法は様々で、ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)や、ペアレントトレーニングなど、社会生活に適した支援を行います。本人が興味のあることや、好きなことなどを肯定的に捉え、遊びや表現活動を通じて安心感してもらうことで、信頼関係にも繋がります。さらに持っている力を発揮させるなどして、発達を促すことも重要です。
ソーシャルスキルとは、社会(ソーシャル)の中で暮らしていくためのスキルのことです。SST(ソーシャルスキル・トレーニング)では、社会で人と関わるときに生じる挨拶、人に何かをお願いしたり断ったりするなどのコミュニケーションはもちろん、毎日歯を磨く、決まった時間に薬を飲む等の日常生活で重要な生活スキルをテーマとして、トレーニングを行うことです。ソーシャルスキルを身に着けるために、本人が行いやすい方法を見つけることも課題になります。こどもが出来ることを増やし、自信をもって安心して生活することを目的としています。
ペアレントトレーニングとは、こどもの行動変容を目的として、親がほめ方や指示などのこどもに合った具体的な養育スキルを獲得するためのトレーニングです。1974年にアメリカで誕生しました。本人に合っていない指示や褒め方をすると、こどものやる気が落ちる可能性があります。専門家による療育現場の対応だけでなく、親が日常生活でこどもに適切にかかわることができると、こどもの行動改善や発達促進がより期待できます。家族や本人への自信にも繋がるため、重要な支援です。

《家族・保護者への支援》

支援の対象は、こどもだけでなく、保護者や家族にも及びます。家族が安定していることにより、こどもの安心できる場所になり、心の安定に繋がります。こどもの障害や課題による育児のしづらさで『親としての自信』をなくしたり、周囲からのなにげない言葉に『傷ついている方』が多くいます。発達障害のこどもを持つ親は、迷惑を掛けてはいけないとプレッシャーに思っていることもあります。心理指導担当職員は障害児支援のプロとして、そのような保護者を支えることも重要な役割です。保護者や家族の気持ちに寄り添い、助言や指導などをすることで、安心してもらうなどの心理的ケアを行います。

《関係機関との連携》

関係機関(小学校、自治体など)に、こどもやその保護者の情報の共有することや、こどもたちの障害や課題についての理解を深めてもらう連携作業を行います。理解を深めてもらうことにより、こどもや家族がより安心して社会生活を行うきっかけに繋がることが目的です。情報共有だけでなく、関係機関への指導や助言を行うこともあります。