わが子の不登校で親が感じるストレス

目次

はじめに…
不登校の子を持つ親のストレスとは?
    ストレス①:こどもへの対処の仕方がわからない
    ストレス②:こどもの将来に不安を感じる
    ストレス③:不登校になった原因は自分にもあるのではと考え込む
    ストレス④:先生とのやり取りに疲れる
    ストレス⑤:親戚や近所の人にやたらと心配される

ストレスを抱えないための4つの考え方
    考え方①:不登校を特別視しすぎない
    考え方②:こどもにとって必要な時期だと割り切る
    考え方③:理解できない点があることを認める
    考え方④:自分の生活も充実させようと考える

不登校の子を持つ親がストレスを緩和するための3つの方法
    その①:周囲の人に相談する
    その②:つらいときは距離を置いてみる
    その③:専門機関を頼る
最後に…

はじめに…

不登校のお子さんをお持ちのあなたは、以下のような悩みやストレスを抱えていませんか?

・親としてこどもにどう接してよいかわからない。
・不登校の原因が自分にもあるのではないかと考え込んでいる。
・こどもが大変なのはわかるが、親の自分はどのようにストレスを解消すればいいのか?

不登校のこどもへのケアが問題視される一方で、「当事者の親御さん自身が抱えるストレスはどう対処すべきか」という点は見落とされる傾向があります。そこで以下では、不登校のこどもをお持ちの親が感じるストレスと、その緩和策を紹介いたします。

不登校の子を持つ親のストレスとは?

不登校の子を持つ親のストレスの原因には、様々な種類があります。

・わが子が不登校になった理由がはっきりせず、どのような対応をすべきかわからない。
・こどもが心を開いてくれないため、自分にも不登校の原因があるのではないかと考え込んでいる。

上記のように、「わが子の不登校が原因のストレス」と一口に言っても、具体的に、何に起因したどのようなストレスなのかは、人によって異なります。また、お子さんの性格も、「注意するとムキになって反論してくる」「全く聞く耳を持たずに引きこもる」など様々です。これらに対する親の反応としても、「つい苛立って言い返す」「気を遣い過ぎてうまく言葉を掛けられない」など様々でしょう。このように厳密に細かく分けていくと、親のストレスには様々な種類が存在しますが、この章では、不登校のこどもを持つ親が抱えやすいストレスを「5つ」に絞って、以下お話しします。

ストレス①:こどもへの対処の仕方がわからない

最初に挙げられるストレスは、「こどもへの対処の仕方がわからない」です。不登校のお子さんは、「自分の殻に閉じこもる」「何を言っても反抗的な態度で突っぱねる」という状態になっていることも少なくありません。そういうお子さんに対して、「親としてどうしたらよいのかわからない」とストレスを抱えるのです。
また、人に「どう対処してよいのかわからない」と相談したときにも、ストレスが生じることがあります。例えば、次のようなことを言われ、具体的な対応策を示されなかったようなときです。
「できるだけ気長に受け止めるように努めてください」。
「厳しいことは言わないで、理解してあげるようにしてください」。
他にも、複数の人に相談したところ、人によってアドバイスの内容が違い、どれに従うべきかわからず途方に暮れる、ということもあるでしょう。

ストレス②:こどもの将来に不安を感じる

ストレスの2つ目は、「こどもの将来に不安を感じる」です。「このまま不登校が続いて、学校を中退するのではないか」「もし卒業できたとしても、進学せずに引きこもるのではないか」という不安によるストレスです。特にそれまでの成長過程が順調だった場合は、ギャップもあって大きな不安・ストレスとなります。

ストレス③:不登校になった原因は自分にもあるのではと考え込む

「こどもが不登校になった原因は、親の自分にもあるのではと考え込む」というのも、ストレスとしてよく聞かれるものです。これは、最初から親がそう自問自答するケースもあれば、配偶者や親戚のちょっとした言葉や厳しい言葉から自分の責任を考え始めて傷つくケースもあります。不登校の多くは様々な要因が絡みあって起こっていますので、「親の自分に責任がある」と気負いすぎないことが大切です。

ストレス④:先生とのやり取りに疲れる

こどもが不登校になると、学校との調整が多くなりますが、その所為で「先生とのやり取りに疲れる」というのもストレスにつながりやすいです。特に、学校でのこどもの態度が家庭での態度と異なる場合には、お互いの認識を一致させることから始めなくてはなりません。自分が全く知らなかった一面を知って驚いたり、ショックを受けたりすることもあるでしょう。また、クラスの人間関係に馴染めずに不登校になった場合や、特定の生徒からいじめられていることが判明した場合などは、先生を介して相手の親とやり取りをする可能性もあります。ただでさえデリケートな問題なのに、学校を中心とした複雑な人間関係に巻き込まれることで、よりストレスを抱え込むのです。

ストレス⑤:親戚や近所の人にやたらと心配される

「親戚や近所の人にやたらと心配されること」でストレスを感じる人もいます。不登校に加えて、部屋から出ることができない引きこもりのような状態の場合には、お正月に親戚が来た際などに、事情をどう伝えればよいか迷うことが多いようです。また、近隣住民との付き合いが強い地域に住んでいると、こどもが不登校になっているという事実が、すぐに周囲に知られる場合があります。結果、ご近所との立ち話になるたびに、やたらと心配されてどう返事をすればよいか困ったり、世間体が悪いように感じられたりと、ストレスを感じる場面が増えていきます。

ストレスを抱えないための4つの考え方

それでは、ストレスを抱えないためには、どうすればよいのでしょうか? ストレスには、「自分でコントロールできるもの」と、「自分の力だけではコントロールできないもの」の2種類があります。ここでは、あなたが不登校について持っている認識や考え方を変えていくことで、ストレスを緩和する方法を探ってみます。なお、親の「不登校の捉え方」によっては、何かしらの発言を通して、お子さんにも悪影響を与える場合があります。例えば、両親の言動の端々から「不登校は普通ではないしすぐに改善すべきだ」という意識が感じ取れる気がして、学校に復帰するための意欲を余計に失うことがあります。ここでは、「こどもは親に不登校をどう捉えてほしいと思っているか」という点も併せて解説していきます。

考え方①:不登校を特別視しすぎない

まずは「不登校を特別視しすぎない」ようにしましょう。特に、ストレートで学校を卒業して就職するという、いわゆる「普通」にこだわりを持つ親は大勢いるかと思います。しかし、進路も成長のスピードもこどもによって異なるため、こうした「普通」が誰にでも必ず当てはまるとは限りません。例え不登校を経験したとしても、その後に学校に復帰をしたり、他校へ転校したりして勉強に追いつくなど、学び直しをすることは十分可能です。しかし、親が不登校を特別視していると、それがこどもに伝わって「自分は普通じゃないんだ」と自己肯定感を失わせることにもなりかねません。
不登校になることは、現在では珍しいことではありません。文部科学省の統計によると、不登校の児童・生徒の割合は年々増えつづけており、小学校で「1.3%」、中学校で「5.0%」、高校で「1.7%」、特に中学校では「20人に1人が不登校」と、決して少なくない数字になっています。(参考:文部科学省『令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果』)
クラスに1人は不登校のこどもがいる計算になるため、不登校は決して特別なことではないのです。まずは、不登校を特別視し過ぎていないか、ぜひ一度考えてみてください。

考え方②:こどもにとって必要な時期だと割り切る

不登校は「こどもにとって必要な時期だと割り切る」ことも大切です。お子さんの中には、部屋に閉じこもったり、ゲームばかりしていて、時間を無駄にしているように感じられたりする場合もあるかと思います。しかし、そうした一種の休養は、お子さんが自分の気持ちを整理するためにも必要な時間です。一見、逃避に見える行動を取っているときでも、何かを考えるきっかけになったり、自分を見つめ直す機会になったりする場合があります。不登校は「こどもにとって必要な時期」だと割り切って考えてみてはいかがでしょうか。

考え方③:理解できない点があることを認める

3番目として「理解できない点があることを認める」ことをオススメします。こどもが不登校になったり、引きこもりになったりすると、できるだけ理解して受けとめるように助言をする人もいるかと思います。もちろん、それは大枠では間違いではありません。しかし、こどもは皆同じではありません。心や考え方、身体の特徴もひとり一人異なります。お子さん自身のことを理解して受け止めるようにアドバイスを得たとしても、理解できない部分はどうしても出てきます。その「理解できないこと」を認めずに、「なぜ親子なのにわかり合えないのだろう」と考え込むことで、ストレスを抱える恐れがあるのです。「どうしても受け入れられない面もある、理解できない点があることを認める」ことで、気持ちがラクになることがあるということは、覚えておいてもよいかもしれません。

考え方④:自分の生活も充実させようと考える

自分を追い詰める前に、「あなた自身の生活も充実させようと考える」ようにしてください。人によっては、「こどもが不登校で悩んでいるのに、休日に遊びに出掛けたり、趣味を楽しんだりしてよいのだろうか」と思うかもしれません。こどもが悩んでいるときに、自分だけが楽しい気持ちになれないと思うのはもっともです。しかし、親が生活を楽しみ、充実した姿をお子さんに見せることは、「大人として望ましいロールモデルを見せること」にもつながります。それによって、「自分も自立して大人になろう」とお子さんが考えるようになるのです。お子さんに希望を持たせる意味でも、まずあなた自身が生活を充実させることを意識してみてください。

不登校の子を持つ親がストレスを緩和するための3つの方法

最後に、不登校の子を持つ親がストレスを緩和するためにできる具体的な方法を見ていきます。大切なのは、無理をしないこと、ひとりで抱え込まないことです。不登校は親の責任だと気負わずに、できるだけ周囲の人を頼りながら解決策を模索していきましょう。

その①:周囲の人に相談する

ストレスをため込んで限界を迎える前に、まずは「周囲の人に相談」しましょう。あなた一人で不登校のお子さんをケアする必要はありません。というのも、周囲の人の視点からお子さんを見ることで、はじめて不登校の問題点が見えてくることがあるからです。ここで言う「周囲の人」とは、具体的には同じ子育ての悩みを抱えるご友人や、親戚のことです。こうした周囲の人は、あなたが気付かなかったお子さんの一面や、これまで接する上で配慮していなかった点を指摘してくれる場合があります。それが糸口になって、不登校の解消に結びつくことがあります。また、周囲の人に相談することは、単に解決策を探すためではなく、あなたのストレスを解消することにもつながります。ぜひ一人で抱え込まずに、できるだけ周囲の人に相談してみてください。

その②:つらいときは距離を置いてみる

「つらいときは距離を置いてみる」というのもストレス対処として有効です。前述した点と似てはいますが、「親子なのだから、常にこどものそばにいて、助けにならなくては」と気負い過ぎると、どうしても息苦しくなることがあります。また、親がつきっきりになることで、お子さん自身が、「親に迷惑を掛けている」「そっとしておいて欲しい」と感じることもあります。お子さんが、「今はひとりでいたい」「じっくりと考えごとをしたい」と思うときも、きっとあるでしょう。そういったときは、親であるあなたも適度に距離を取ることが大切です。特に、一人の時間を持つこと、自分がリラックスできる環境に身を置くことに集中してみてください。のんびりとお風呂に浸かるなど、こどもにつきっきりにならず、自分のペースを取り戻すように意識することがオススメです。とはいえ、日頃から仕事で忙しく、ほとんどお子さんと向き合う時間が取れていないという方は、その限りではありません。お子さんがコミュニケーションを求めているかどうかを慎重に判断した上で、ときには距離を置いてみるようにしてください。

その③:専門機関を頼る

周囲の人に相談するだけでなく、「専門機関を頼る」というのも有効な手段です(学校の担任やスクールカウンセラーも専門機関の一つです)。不登校のこどもに関する相談窓口は、以下のようなものがあります。

〇児童相談所、児童相談センター
〇ひきこもり地域支援センター
〇発達障害支援センター
〇教育センター(高校相当年齢) 「教育センター 〇〇(お住まいの地域)」で検索が可能です。

上記は自治体が設置する相談窓口です。お住まいの市区町村の公式サイトから、教育関連のページにアクセスし、記載の関連窓口からお子さんの状況に合うところを探してみましょう。どこが窓口かわからない場合は、役所の総合窓口や代表電話で確認できます。また、民間の支援団体やフリースクール、私たちキズキ共育塾のような不登校の支援を行う学習塾に相談するのもよいでしょう。学習面のサポートだけでなく、メンタル面のケアについてもサポートが得られるため、親御さんのストレスを軽減する助けになるはずです。

なお、お子さんによっては不登校の原因が「発達障害」にあるケースも存在します。発達障害には、主に以下の3種類があります。

・ASD(自閉症スペクトラム障害)…社会性やコミュニケーション能力に関わる障害
・ADHD(注意欠陥・多動性障害)…不注意や落ちつきのなさに関わる障害
・LD(学習障害)…「読む・聞く・話す・書く・計算する・推論する」能力に関わる障害

もし、お子さんの状態に心当たりのある場合は、専門の医療機関で一度検査を受診しましょう。お子さんが発達障害の診断を受けた場合は、親御さんの不安も大きくなるかもしれません。しかし、現在は具体的な対処法もあり、医師や専門家からアドバイスを得ることも可能ですのでご安心ください。医療機関に加えて、上述した「発達障害支援センター」に相談をするのもオススメです。発達障害支援センターでは、発達障害の症状があるにも関わらず、確定診断が下りていない場合でも、「日常生活に関すること」「人との関わり方に関すること」「学校生活に関すること」などについて相談することが可能です。ちなみに、複数機関に相談した結果、それぞれから異なるアドバイスを受けた場合には、「どのアドバイスに従うか」は、最終的には親(とお子さん)が決めることになります。

最後に…

繰り返しになりますが、「ストレスを緩和する一番の手段は、ひとりで抱え込まずに周囲に相談すること」です。不登校の問題を親子の問題として家庭内のみで抱え込むと、お子さんだけでなく、親であるあなた自身も孤立する可能性があります。お子さんのケアも大切ですが、あなた自身のケアもとても大切なことです。学校の先生や塾の先生だけではなく、専門機関など頼る先はたくさんありますので、お悩みの方は一度問い合わせをしてみてください。これまでの説明が少しでも不登校の子を持つ親の助けになれば幸いです。