質問10 障害のあるこどもの就学先はどのように決定されるのでしょうか。(障害者全般:学童期)

回答10 障害のあるこどもの就学先については、本人・保護者の意見を可能な限り尊重し、教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則としています。障害の状態や必要となる支援の内容、教育学等の専門的見地といった総合的な観点を踏まえて市町村の教育委員会が決定することになっています。

目次
障害のあるこどもの就学先決定のモデルプロセス
    〇就学先の検討
    〇就学先の決定・通知
特別支援学校への就学
 (1)就学先の決定
 (2)障害の判断に当たっての留意事項(留意事項とは決定をする上での判断基準のことです)
小学校,中学校又は中等教育学校の前期課程への就学
 (1)特別支援学級
        《障害の種類及び程度》
 (2)通級による指導
        《障害の種類及び程度》

障害のあるこどもの就学先決定のモデルプロセス

〇就学先の検討

就学先の決定は、就学する予定の学校においてどのような学習内容が設定され、どのような方法で教育を行うのかなど、保護者にとっての最大の関心事項の一つです。このため、就学先の検討にあたっては、市町村教育委員会において、学校見学や体験入学の機会を活用した保護者への情報提供や面談等を経て、教育上必要な支援内容等の判断・調整が行われます。

〇就学先の決定・通知

就学先の決定については、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が教育ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とした上で、最終的には市町村教育委員会が児童生徒の就学先を決定することになります。

特別支援学校への就学

(1)就学先の決定

視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者または病弱者(身体虚弱者を含む)で、その障害が、「学校教育法施行令第22条の3*」に規定する程度のもののうち、市町村の教育委員会が、その者の障害の状態、その者の教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して、特別支援学校に就学させることが適当であると認める者を対象として、適切な教育を行うことになっています。

*「学校教育法施行令第22条の3」とは以下の通りです。

《視覚障害者》
両眼の視力がおおむね 0.3 未満のものまたは視力以外の視機能障害が高度のもののうち、拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度のもの。
《聴覚障害者》
両耳の聴力レベルがおおむね 60 デシベル以上のもののうち、補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが不可能又は著しく困難な程度のもの。
《知的障害者》
知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの。知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの。
《肢体不自由者》
肢体不自由の状態が補装具の使用によっても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能または困難な程度のもの。肢体不自由の状態が前号に掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの。
《病弱者》
慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療または生活規制を必要とする程度のもの。身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの。

(2)障害の判断に当たっての留意事項(留意事項とは決定をする上での判断基準のことです)

ア)視覚障害者については、専門医による精密な診断に基づき総合的に判断を行うこととなっています。なお、年少者、知的障害者等に対する視力及び視力以外の視機能の検査は困難な場合が多いことから、一人ひとりの状態に応じて、検査の手順や方法をわかりやすく説明するほか、検査時の反応をよく確認すること等により、その正確を期するように特に留意することとなっています。

イ)聴覚障害者については、専門医による精密な診断結果に基づき、失聴の時期を含む生育歴及び言語の発達の状態を考慮して総合的に判断を行うこととなっています。

ウ)知的障害者については、知的機能及び適応機能の発達の状態の両面から判断することとなっています。標準化された知能検査等の知的機能の発達の遅滞を判断するために必要な検査、コミュニケーション、日常生活、社会生活等に関する適応機能の状態についての調査、本人の発達に影響がある環境の分析等を行った上で総合的に判断を行うこととなっています。

エ)肢体不自由者については、専門医の精密な診断結果に基づき、上肢、下肢等の個々の部位ごとにとらえるのでなく、身体全体を総合的に見て障害の状態を判断することとなっています。その際、障害の状態の改善、機能の回復に要する時間等を併せ考慮して判断を行うこととなっています。

オ)病弱者(身体虚弱者を含む)については、医師の精密な診断結果に基づき、疾患の種類、程度及び医療又は生活規制に要する期間等を考慮して判断を行うこととなっています。

小学校,中学校又は中等教育学校の前期課程への就学

(1)特別支援学級

「学校教育法第81条第2項*」の規定に基づき特別支援学級は、障害の種類及び程度の児童生徒のうち、その者の障害の状態、その者の教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して、特別支援学級において教育を受けることが適当であると認める者を対象として、適切な教育を行います。
障害の判断に当たっては、障害のある児童生徒の教育の経験のある教員等による観察・検査、専門医による診断等に基づき教育学、医学、心理学等の観点から総合的かつ慎重に行います。

*「学校教育法第81条第2項」とは、以下の通りです。

小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校には、次の各号のいずれかに該当する児童及び生徒のために、特別支援学級を置くことができる。

1 知的障害者
2 肢体不自由者
3 身体虚弱者
4 弱視者
5 難聴者
6 その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの

《障害の種類及び程度》

ア)知的障害者
知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通に軽度の困難があり日常生活を営むのに一部援助が必要で、社会生活への適応が困難である程度のもの。
イ)肢体不自由者
補装具によっても歩行や筆記等日常生活における基本的な動作に軽度の困難がある程度のもの。
ウ)病弱者及び身体虚弱者
慢性の呼吸器疾患その他疾患の状態が持続的又は間欠的に医療又は生活の管理を必要とする程度のもの。身体虚弱の状態が持続的に生活の管理を必要とする程度のもの。
エ)弱視者
拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が困難な程度のもの。
オ)難聴者
補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが困難な程度のもの。
カ)言語障害者
口蓋裂、構音器官のまひ等器質的又は機能的な構音障害のある者、吃音等話し言葉におけるリズムの障害のある者、話す、聞く等言語機能の基礎的事項に発達の遅れがある者、その他これに準じる者(これらの障害が主として他の障害に起因するものではない者に限る。)で、その程度が著しいもの。
キ)自閉症・情緒障害者
自閉症又はそれに類するもので、他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のもの。主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの。

(2)通級による指導

障害の判断に当たっては、障害のある児童生徒に対する教育の経験のある教員等による観察・検査、専門医による診断等に基づき教育学、医学、心理学等の観点から総合的かつ慎重に行うこととなっています。その際、通級による指導の特質に鑑み、個々の児童生徒について、通常の学級での適応性、通級による指導に要する適正な時間等を十分考慮します。

通級による指導(つうきゅうによるしどう)とは、日本の義務教育における特別支援教育の制度の一つで、通常の学級に在籍していながら個別的な特別支援教育を受けることの出来る制度です。

《障害の種類及び程度》

ア)言語障害者
口蓋裂、構音器官のまひ等器質的または機能的な構音障害のある者、吃音等話し言葉におけるリズムの障害のある者、話す、聞く等言語機能の基礎的事項に発達の遅れがある者、その他これに準じる者(これらの障害が主として他の障害に起因するものではない者に限る。)で、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの。
イ)自閉症者
自閉症またはそれに類するもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの。
ウ)情緒障害者
主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの。
エ)弱視者
拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が困難な程度の者で、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とするもの。
オ)難聴者
補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが困難な程度の者で、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とするもの。
カ)学習障害者
全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算するまたは推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示すもので、一部特別な指導を必要とする程度のもの。
キ)注意欠陥多動性障害者
年齢または発達に不釣り合いな注意力、または衝動性・多動性が認められ、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもので、一部特別な指導を必要とする程度のもの。
ク)肢体不自由者、病弱者及び身体虚弱者
肢体不自由、病弱または身体虚弱の程度が、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの。

《その他》

(1)重複障害のある児童生徒等について……重複障害のある児童生徒等についても、その者の障害の状態、その者の教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して、就学先の決定等を行います。
(2)就学義務の猶予または免除について……治療または生命・健康の維持のため療養に専念することを必要とし、教育を受けることが困難または不可能な者については、保護者の願い出により、就学義務の猶予または免除の措置を慎重に行います。