質問4 こどもと上手く関われない指導員に対しては、どうしたらいいでしょうか?

回答4 確かに事業所内のマネージメントは大変精神的にもストレスを抱える重要な問題だといえます。放課後等デイサービスにおいて、こどもと上手く関われない指導員のタイプは大きくいって2つに分けられるのではないでしょうか。

1.こどもの発達段階や心情を踏まえず、高圧的な態度で一方的な指示や注意を繰り返してしまうタイプ。

2.こどもの言いなりになってしまい、プログラムへの参加を促せず、問題行動を止められないタイプ。

1つめの高圧的なタイプは、比較的改善しやすいタイプといえます。こうした態度はあからさまにこどもの反発を招くため、指導者からも管理者からも問題として判りやすく、そういった意味では対策を施しやすいといえます。

対応が難しいのは、むしろ2つめのこどもの言いなりになってしまうケースの方です。なぜならば、こどもは教室のルールを守ることを求める指導員よりも、自分が何をしても許してくれる指導員のそばにいることを好むからです。そのため、こどもの言いなりになる指導員は、しばしば「自分は子どもから慕われている」と勘違いしがちです。こうなるとなかなか簡単に改善はできません。

目次
 こどもに誤った学習をさせてしまう指導員
 施設の目的とルールの明示

 働く仲間としての放課後等デイサービスの責任

こどもに誤った学習をさせてしまう指導員

こどもの言いなりになる指導員は、表面的にはこどもから慕われているように見えても、本当の意味での信頼は得られてはいません。
その証拠に、このタイプの指導員は常にこどもの暴力・暴言の対象になります。「この先生なら叩いても悪口言っても叱られないだろう」と思われてしまうのです。
実際その通りなので暴力や暴言を受けてもそれを止めることができずにます。
それを放っておくわけにも行かないので、やむなく他の指導員がその子の対応に入ることになります。
1人の子に2人の指導員が関わることになるため、その分他のこどもへのケアが手薄になりがちです。
このことからも解かるように、こどもの言いなりになる指導員の存在は、他の指導員も巻き込んで教室運営を困難にさせる上、何よりその子に「相手次第で暴言や暴力を振るっても構わない」と誤学習をさせてしまう点で極めて大きな問題であると言わざるを得ません。
しかし、こうした指導員に管理者が「こどもの言いなりになるな」と頭ごなしに指示しても納得し難く、かえって反発を招くことがあります。
先に述べたように、指導員自身は「自分はこどもから慕われている」と思い込んでいることが多いため、こうした指示を「こどもに良かれと思ってやっていることを否定された」と受け止めてしまうからです。
こうした理由から、高圧的な態度の指導員に比べ、こどもの言いなりになる指導員のマネージメントはずっと難しいといえます。
管理者として無理に指示を押し通そうとすれば、関係が壊れかねません。

施設の目的とルールの明示

この問題を本当に解決しようとすれば、一旦指導員のマネージメントという視点から離れ、より大きな視野で考える必要があります。つまり、施設の目的とルールから考えることです。
・私たちはこどもに何を提供しようとしているのか
・それを提供するためにどんな仕組みを用意するのか
「こどもの言いなりになる指導員」は、この二点が明らかになっていないことによって生まれます。
言い換えれば、「こどもの言いなりになる指導員」の問題は、施設としての目的を明確にできていない経営者の問題であり、その目的を実現する仕組みを構築できていない管理者の問題であるともいえます。
従って、「こどもの言いなりになる指導員」に困っている経営者の方は、下記の点をチェックしてみてください。

経営書の方へ


①施設の目的を文章化できているかどうか。
②その目的は自分が雇用している人全てに浸透しているかどうか。
③なにより、経営者である自分自身がその目的を心から追求しているかどうか。

また、目的を実現する仕組みを作る管理者は下記の点をチェックしてみてください。

管理者の方へ


①こどもたちの来所から退所までの指導員の動きについて、文章化できているかどうか。
②トラブルへの対応の原則について、文章化できているかどうか。
③問題行動を繰り返す特定のお子さんについて、指導員の間で対応方針は一本化されているかどうか。
④上記の内容を話し合うため、充分な研修やフィードバックの時間が取れているかどうか。

上記のポイントをきちんと抑えていれば、経営者や管理者が「こどもの言いなりになる指導員」に対して「私たちでこういう目的のもと、こういう仕組みでこどもと関わっている。あなたもそのようにやってもらえないか」と話ができます。
その結果、指導員がそれを受け入れてくれるにせよ、受け入れてくれないにせよ(この場合、その指導員は施設を去ることになるでしょう)、お互いが納得の行く話し合いができ、具体的な改善に繋がります。

働く仲間としての放課後等デイサービスの責任

放課後等デイサービスの利用者は、様々な障害を抱え発育に課題があるこどもたちのため、預かる側の責任は重大です。
しかしながら独りで抱え込むのではなく、施設職員全体でチームとしてフォローしあいながら課題に向き合っていける職場づくりが大切なポイントになります。
放課後等デイサービスに通うこども達は、突発的で予想外の行動を起こすことが多々あります。
他の児童と喧嘩してしまったり、転んで怪我をしてしまったりすることは日常茶飯事です。
一人ひとりの心身の状態や禁忌事項、行動特性にも違いがあるため、支援する側は毎日神経をすり減らしながらこどもたちの安全を確保しなければならず、重い責任がのしかかります。
例えばASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)を持つこどもの場合は、自分の“こだわり”や“空間”が他者から脅かされることによってパニック状態になってしまい、それをきっかけに思わぬ事故が起こってしまうことがあります。
経管栄養や痰吸引が必要な医療的ケア児を預かっている場合は、1つのミスが命に直結してしまう場合もあります。ある放課後等デイサービスでは、精神的な未熟さが原因でこども達同士の性的トラブルが発生してしまったケースもあります。
このように放課後等デイサービスを利用するこどもたちは、常にこころやからだを傷付けてしまうリスクにさらされています。
放課後等デイサービス利用中に万が一事故が起きたときは、職員が責任を問われてしまうため、その重責から日常的なストレスにさらされています。
そこで放課後等デイサービスで働く一人ひとりが責任に押し潰されないようにするには、精神的負担を分散させる環境整備がとても大切になります。
このことは責任を押し付け合うのではなく、チームとして課題に取り組むような体制を作っていく姿勢のことを指します。
困ったことや心配なことがあれば、管理者や現場のリーダーである児童発達支援管理責任者が、いつでもすぐに相談できる体制を整備するのも大切なことです。