質問5 保護者との人間関係が難しいことによるストレスで職員が辞めてしまうことがあります。どうしたらいいでしょうか? (事業所責任者)

回答5 悩ましい問題ですね。障害を抱えているこどもを育てている保護者の方々には、「今までこうやって頑張ってきた!」という自負やプライドがあるものです。
またこどもと最も長い時間を共に過ごしてきているため、介助や関わり方にも独自の方法が染みついていることも当然あります。
対して施設側としては、科学や医学的な根拠に基づいた方法で、こどもたちと関わることが基本なので、保護者から理解を得られないまま支援を続けると、やがて保護者は「自分のこどもには合わない」と感じ、介助方法に注文や苦情を言ってきたりします。

想像するに、保護者が大切にしている「生まれてから今まで親子が共に育ってきた」時間を否定されたと感じているのかも知れません。
施設が、こどもや保護者が大切にしてきたものを、間接的に傷つけている可能性があるかもしれないということです。
やはり、今までの時間や保護者のご苦労をねぎらい、尊重した上で、「こどもの成長のために最善の方法を一緒に考えていきましょう」という姿勢で関わることが重要だといえます。
お互いの立場の違いを理解し合いながら、保護者の“想い”に寄り添い「共に子どもを支えていく」という姿勢を示すことで再び信頼関係を構築していくことが必要となります。
目次
 「事業者向け放課後等デイサービス自己評価表」「保護者等向け放課後等デイサービス評価表」について
  ▷二つの評価表の基本的な活用手順
   ① 保護者による評価
   ② 職員による自己評価
    事業所全体による自己評価
   ④ 自己評価結果の公表
   ⑤ 支援の改善
  ▷他に理由はないか?
  ▷対処方法は?

「事業者向け放課後等デイサービス自己評価表」「保護者等向け放課後等デイサービス評価表」について

そこで事業者向けの自己評価表保護者向けの評価表を活用してみるのはいかがでしょうか。
厚生労働省の放課後等デイサービスガイドラインは、放課後等デイサービス事業所における自己評価に活用されることを想定して作成されたものです。
各事業所で簡易に自己評価を行うことができるよう、ガイドラインの内容を踏まえた「事業者向け放課後等デイサービス自己評価表」が作成してあります(ただし、この自己評価表を活用してより適切に自己評価を行うためには、ガイドライン本文を熟読することをお薦めします)。
放課後等デイサービスを利用するこどもの保護者等による、ユーザー評価に活用していただくために、一層簡素な「保護者等向け放課後等デイサービス評価表」も併せて作成してあります。
二つの評価表はあくまで「雛型」でしかありません。事業所等でこれに適宜加除修正を行って活用していただくことも可能ですし、どのような形で活用するかも自由です。
保護者との人間関係が難しいと感じている時など、この評価表を使うことで関係改善に繋がることもあるのではないでしょうか。
二つの評価表は、こちらからコピー下さい。⇒2021事業者向け 放課後等デイサービス自己評価表(「2021保護者等向け放課後等デイサービス評価表」は同ホルダーに続いてあります)
2つの評価表の基本的な活用方法としては、以下の手順が想定されています。

二つの評価表の基本的な活用手順

① 保護者による評価

事業者から保護者に対して、「保護者等向け評価表」を配布してアンケート調査を行います。保護者からの回答を集計し、特記事項欄の記述を含めてとりまとめてください。

② 職員による自己評価

事業所の職員が「事業者向け放課後等デイサービス自己評価表」を用いて自己評価を行います。その際、「はい」「いいえ」などにチェックするだけでなく、各項目について「課題は何か」「工夫している点は何か」について記入してください。

③ 事業所全体による自己評価

職員から回収した評価表を集計の上、職員全員で討議をし、項目ごとに課題や工夫している点について、認識をすり合わせようにしてください。
討議に際しては、保護者等に対するアンケート調査結果も十分に踏まえ、支援の提供者の認識と保護者等の認識のずれを客観的に分析してみてください。
職員間で認識が共有された課題については、改善目標を立ててください。討議の結果は書面に記録し、職員間で共有するようにしてください。

④ 自己評価結果の公表

自己評価結果の公表の仕方については、基本的には「改善目標」や「工夫している点」の主なものについて、できるだけ詳細に発信するようにしてください(「はい」「いいえ」の数の公表を想定しているものではありません)。
保護者のアンケート調査結果は、保護者にフィードバックしてください(対外的に公表することまでは前提とはしていません)。

⑤ 支援の改善

立てられた改善目標に沿って、支援を改善する努力をしてください。
※この評価表は、もともと業務改善のために必要となるものです。真摯に取り組む事業所ほど、公表される自己評価結果(義務化)には、改善目標に関する記述が多くなされるものと厚生労働省では想定しているようです。また、(地域自立支援)協議会や事業者団体において、これら評価表を使った自己評価結果の事例発表を行う機会を設けることにより、自己評価の取組が広がっていくことが望まれています。

他に理由はないか?

職員が辞めた理由は、職員が偽らざるところを話してくれたとは限りません。他にも理由があるかもしれないので、この機会に事業所内のマネージメントを発揮するためにも、他にどんな理由が考えられるかを以下に記しておきます。

④ どんな仕事でもついてまわることですが、職場内の人間関係が上手くいかない。
⑤ 職場の運営方針に不満を感じている。
⑥ 利用者に対して職員の数が足りておらす、人手不足の所為で仕事が過重に感じる。
⑦ 仕事の質や量に対して、給与が少ない。

以上のことなどから、職員が職場に対して日頃、正直に思っていることを自己評価表など活用して、掌握しておくことが職場のマネージメントの第一歩となるはずです。放っておくと職員の定着がかんばしくなく、事業内容の質の面にはなかなか手がつけられず、絶えず職員募集ばかりに時間を割かれることになります。人員の欠如は、今ある収入を下げざるを得なくなり、悪循環に陥ることもありえます。そうならないためにも事業改善は重要なことです。

対処方法は?

③ と②に関しては、Q&Aで答えていますので、ここでは省きます。
③や⑤は、特に注意しなければならない点だといえます。事業所の運営に直接関わることなので、全員で討議し話し合うことが賢明な要件です。
④は個別に話を十分聞き、何が問題なのかを明らかにする必要があります。その上で、チームとして業務を運営する障害をいかに取り除くかがポイントとなります。
⑥に対してできることは、当面、支援の工夫と業務の効率化が考えられます。人員補充は人件費がかかることですので、事業所の経済状態に左右されます。よって、支援と業務の質を落とさずにスリム化することを薦めます。職員にアイデアを広く求めるのも悪くありません。
⑦に関しては、事業所の経済状態を抜きで言えることは、時間外の副業を認めるか、転職を勧めるかしかありません。
以上、辞めるまでには至らなくとも、職員がどのようなことを心配し、不満に思っているかを把握することは、事業所の責任者にとって避けては通れない道です。よって、きつく思わずに、少しでも改善するよう皆の力で達成することが求められます。