「介護保険制度」とは何か?

目次
1カ月の支給限度額と自己負担額
要支援・要介護の状態像
第2号被保険者の介護保険サービスが受けられる16種類の特定疾病
介護保険サービスの種類

介護保険制度は、2000年に高齢者の介護を社会で支えることを目的にスタートしました。
65歳以上の人を第1号被保険者、40歳から65歳未満で国民健康保険や健康保険などの医療保険に加入している人を第2号被保険者といいます。
運営は市区町村が主体となり、財源は税金が50%(市町村12.5%、都道府県12.5%、国25%)、残りは被保険者の保険料でまかなわれています。
加入者は毎月保険料を支払いますが、その人の居住地や収入によって保険料も異なります。
利用を始めるには、住んでいる地域の市区町村の窓口へ「要介護認定」の申請をする必要があります。その後、認定のための面談を受けて、サービスがスタートします。認定区分は7つに分けられ、1カ月に利用できる上限額が異なります。介護保険で受けられるサービスにはさまざまな種類があります。
利用する際の自己負担は、原則1割(一定以上の所得がある人は2割または3割)です。
第1号被保険者は寝たきりや認知症などで介護が必要な状態(要介護)や日常生活に支援が必要になったとき(要支援)に介護保険サービスを利用できます。一方、第2号被保険者は末期がんや糖尿病性神経障害など加齢を原因とする病気(16種類の特定疾病)になったときに介護保険サービスが受けられます。

1カ月の支給限度額と自己負担額

(2021年10月現在)

介護度 支給限度額 自己負担額(1割)
要支援1 50,320円 5,032円
要支援2 105,310円 10,531円
要介護1 167,650円 16,765円
要介護2 197,050円 19,705円
要介護3 270,480円 27,048円
要介護4 309,380円 30,938円
要介護5 362,170円 36,217円

※支給限度額は、市区長村によって異なることがあるため、正確な額は市区町村の窓口で確認してください。

要支援・要介護の状態像

区分 状態像
要支援
状態
要支援1・2 日常生活上の基本的動作(*1)については、ほぼ自分で行うことが可能。ただし、要介護状態になる予防に資するよう、手段的日常生活動作(*2)についたなんらかの支援を要する状態。
要介護
状態

日常生活上の基本動作について、自分で行うことが困難であり、なんらかの介護を要する状態。

要介護1 要支援状態から、手段的日常生活動作を行う能力がさらに低下し、部分的な介護が必要となる状態。
要介護2 要介護1の状態に加え、日常生活動作についても部分的な介護が必要なとなる状態。
要介護3 要介護2の状態と比較して、日常生活動作および手段的日常生活動作の両方の観点からも著しく低下し、ほぼ全面的な介護が必要となる状態。
要介護4

要介護3の状態に加え、さらに動作能力が低下し、介護なしには日常生活を営むことが困難となる状態。

要介護5 要介護4の状態よりさらに動作能力が低下しており、介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態。

*1食事、排泄、入浴などの日常生活を送るための基本的な動作を指す。
*2買い物や掃除、金銭管理など複雑で高次な日常生活動作を指す。
以上は、厚生労働省「介護保険制度における要介護認定の仕組み」より

第2号被保険者の介護保険サービスが受けられる16種類の特定疾病

1)がん(末期)
2)関節リウマチ
3)筋萎縮性側索硬化症(ALS)
4)後縦靭帯骨化症
5)骨折を伴う骨粗しょう症
6)初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症等)
7)進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
8)脊髄小脳変性症
9)脊柱管狭窄症
10)早老症(ウェルナー症候群等)
11)多系統萎縮症(シャイ・ドレーガー症候群等)
12)糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13)脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等)
14)閉塞性動脈硬化症
15)慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎等)
16)両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

介護保険サービスの種類

介護保険には以下のようなサービスがあります。要介護1~5に認定された人はすべてのサービス、要支援1~2に認定された人は予防給付(表内の)のサービスが利用できます。

介護の相談・ケアプランの作成
居宅介護支援
(介護予防支援)
適切なサービスが受けられるようケアマネジャー(介護支援専門員)が本人や家族の希望などに沿ってケアプラン(居宅サービス計画)をつくり、事業所との連絡・調整などのサービスおよび介護給付管理業務を行う。
自宅に訪問
訪問介護
(ホームヘルプ)
訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの介護(身体介護)や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活支援(生活援助)を行う。
訪問入浴介護 看護職員や介護職員が自宅を訪問し、もってきた浴槽で入浴の介護を行う。
訪問看護 看護師などが自宅を訪問し、主治医の指示に基づいて血圧、脈拍などのチェック、清拭、床ずれの処理、かかりつけ医との連絡と調整などのサービスを行う。
訪問リハビリテーション 理学療法士、作業療法士、原語聴覚士などが自宅を訪問し、自立に向けたリハビリテーションを行う。
居宅療養管理指導 医師、歯科医師、薬剤師などが自宅を訪問し、療養上の管理や指導、助言などを行う。
夜間対応型訪問介護 夜間、定期的な巡回や利用者の求めに応じた訪問介護などを行う。
定期巡回・臨時対応型訪問介護看護 24時間365日、訪問介護と訪問看護が密接に連携して定期巡回と臨時の対応を行う。
施設に通う
通所介護
(デイサービス)
通所介護の施設に通い、施設では食事や入浴などの支援、機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供する。施設は送迎も行う。
通所
リハビリテーション
(デイケア)
老人保健施設、病院、診療所などの通所リハビリテーション施設に通い、施設では食事や入浴などの支援や機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供する。施設は送迎も行う。
地域密着型通所介護 定員18人以下の小規模なデイサービスセンターなどに通い、施設では食事や入浴などの生活支援や、生活機能訓練、口腔機能向上サービスなどを提供する。
施設は送迎も行う。
認知症対応型
通所介護
認知症の人を対象に少人数で家庭的な雰囲気のなか、食事や入浴などの生活支援や、生活機能訓練を提供する。施設は送迎も行う。
訪問・通い・宿泊の組み合わせ
小規模多機能型
居宅介護
施設への通いを中心に、短期宿泊や利用者の自宅への訪問を組み合わせて、生活支援や機能訓練などのサービスを提供する。
看護小規模多機能型
居宅介護
(複合型サービス)
施設への通いを中心に、短期宿泊や利用者の自宅への訪問(介護)に加えて、看護師による訪問(看護)も組み合わせて提供する。
短期の宿泊
短期入所生活介護
(ショートステイ)
つねに介護が必要な人が介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)等に短期入所し、施設では食事や入浴などの支援や日常生活動作訓練などのサービスを提供する。
短期入所療養介護 医療機関や介護老人保健施設、介護医療院に短期入所し、施設では日常生活向上の世話や、医療、看護、機能訓練などのサービスを提供する。
施設などで生活する
介護老人福祉施設
(特別養護老人ホーム)
つねに介護が必要な方が入所し、施設では日常生活の支援や機能訓練、療養上のサービスを提供する。
介護老人保健施設
(老健)
在宅復帰を目標に、入所者が可能な限り自立した日常生活を送れるよう、リハビリや必要な医療、介護などのサービスを提供する。
介護医療型医療施設 慢性疾患があって長期の医療が必要な人のために、介護職員が手厚く配置された医療機関で、必要な医療サービスなどを提供する。
特定施設入居者
生活介護
介護保険の指定を受けた介護付有料老人ホーム、軽費老人ホームなどが、入所者に入浴、排泄、食事などのサービスを提供する。
介護医療院 長期にわたって療養が必要な人に対し、「日常的な医学管理」や「看取りターミナル」などの医療機能と「生活施設」としての機能を提供する。
地域密着型サービス
認知症対応型
共同生活介護
(グループホーム)
認知症の高齢者が生活するグループホームにおいて、家庭的な環境と地域住民との交流のもとで、生活支援や機能訓練などを行う。ひとつの共認知症の高齢者が生活するグループホームにおいて、家庭的な環境と地域住民との交流のもとで、生活支援や機能訓練などを行う。ひとつの共同生活住居に5~9人の利用者が、それぞれの役割をもって家事をすることなどして、認知症の進行を緩和し安心して日常生活が送れることを目指す。
地域密着型介護老人福祉
施設入所者生活介護
定員29人以下の特別養護老人ホームが、つねに介護が必要な人の入所を受け入れ、入浴、排泄、食事などの介護や機能訓練などのサービスを提供する。
地域密着型特定施設
入居者生活介護
介護保険の指定を受けた定員29以下の介護付有料老人ホーム、養護老人ホームなどで、入浴、排泄、食事などのサービスを提供する。
福祉用具と住宅改修
福祉用具貸与 自宅で自立した生活を行うために、適切な福祉用具を選ぶための援助・取付・調整などを行い、福祉用具を貸与するサービス。「特殊寝台および附属品」、「床ずれ防止具」など13品目あり、要介護度によって対象となる用具が異なる。
特定福祉用具販売 自宅で自立した生活を行うために、指定された業者が、入浴や排泄用の貸与になじまない福祉用具を販売する。「腰掛便座」「簡易浴槽」など5品目あり、要介護度によって対象となる用具は異なる。
住宅改修 対象となるのは、手すりの取り付けや段差の解消など6つの種目。上限20万円までの工事に対して1割または2割の自己負担ですむ。

※従来の「介護医療型医療施設」は、2017年度末で廃止され2024年度まで移行期間が設けられている。