障害者総合支援法等一部改正について

  はじめに

「障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律」の公布について、厚労省社会・援護局障害者保健福祉部長から、都道府県知事・指定都市市長・中核市市長宛に通知があった。

障害者総合支援法等一部改正の施行日は、令和6(2024)年4月1日。一部は、公布日と令和5(2023)年4月1日になるようだ。改正の趣旨には、障害者等の地域生活・就労に対する支援強化を行うため、障害者等が希望する生活を営むためとしており、以下の6点があげられている。

地域における相談支援体制の拡充
就労選択支援の創設

週所定労働時間が特に短い特定の障害者を雇用した場合の雇用率算定における特例の創設
入院者訪問支援事業の創設による精神障害者の権利擁護の推進
指定難病の患者および小児慢性特定疾病児童に係る医療費助成制度の改善
障害福祉サービス等についての情報の収集、利用、連結解析に関する規定の整備および措置

では一体、障害者総合支援法はじめとする法律がどのように改正されるのだろうか? 国や政府、都道府県や市町村への通達も含め、改定の全体像がわかるよう、以下、順次確認する。

  目次

一 障害者総合支援法の一部改定
1 障害者が自らの希望する地域生活を実現するための支援の充実に関する事項
2 障害者が自らの希望する就労を実現するための支援の充実に関する事項
3 障害者等の福祉の増進のための調査、分析等および匿名障害福祉関連情報の利用、または提供に関する仕組みの創設に関する事項
4 その他
二 児童福祉法の一部改正
1 小児慢性特定疾病医療費の支給開始日の見直し
2 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の強化
3 小児慢性特定疾病対策地域協議会に関する事項
4 小児慢性特定疾病に関する調査、研究および匿名小児慢性特定疾病関連情報の利用、または提供に関する仕組みの創設に関する事項
5 障害児の福祉の増進のための調査、分析および匿名障害児福祉等関連情報の利用、または提供に関する仕組みの創設に関する事項
6 都道府県知事が行う指定障害児通所支援事業者の指定
三 精神保健および精神障害者福祉に関する法律の一部改正
1 目的規定における権利擁護の明確化等
2 医療保護入院の入院手続等に関する事項
3 措置入院者の退院促進措置等に関する事項
4 入院者訪問支援事業に関する事項
5 虐待の防止に関する事項
6 精神保健に関する相談支援体制の整備に関する事項
7 精神保健指定医の指定制度に関する事項
8 その他
四 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部改正
1 雇用の質の向上に向けた事業主の責務の明確化に関する事項
2 障害者雇用と障害者福祉の連携の促進に関する事項
3 障害者の多様な就労ニーズを踏まえた働き方の推進に関する事項
4 障害者雇用の質の向上の推進に関する事項
5 その他
五 難病の患者に対する医療等に関する法律の一部改正
1 特定医療費の支給開始日の見直し
2 難病に関する調査、研究等および匿名指定難病関連情報の利用、または提供に関する仕組みの創設に関する事項
3 療養生活環境整備事業の強化
4 難病対策地域協議会に関する事項
六 身体障害者福祉法の一部改正
七 知的障害者福祉法の一部改正
八 精神保健福祉士法の一部改正
九 施行期日等

  一 障害者総合支援法の一部改定

 1 障害者が自らの希望する地域生活を実現するための支援の充実に関する事項では、……

(一)共同生活援助の支援内容の追加として、居宅における自立した日常生活への移行を希望する入居者に対して、日常生活への移行および移行後の定着に関する相談や、その他の主務省令で定める援助を行うことを追加するとある。
(二)地域生活支援拠点等の整備について、地域において安心して自立した日常生活・社会生活を営むことができるようにするため、次に掲げる事業を行うよう努めるとある。    
  障害の特性に起因して生じる緊急の事態に対処、または備えるために、地域生活障害者、その保護者、または地域生活障害者等の介護を行う者からの相談に応じ、地域生活障害者等を支援するための体制の確保や、その他の必要な措置について、関係機関との連携および調整を行う。これに併せて緊急の事態が生じたときの宿泊場所の一時的な提供、その他の必要な支援を行う事業。    
 関係機関と協力して、地域生活障害者等に対し、地域における自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう、障害福祉サービスの利用の体験、居宅における自立した日常生活・社会生活の体験の機会を提供する。これにともなう地域生活障害者、その保護者、または地域生活障害者等の介護を行う者からの相談に応じ、必要な情報の提供および助言を行い、あわせて関係機関との連携および調整を行う事業。    
 イ及びロに掲げる事業のほか、障害者等の保健、または福祉に関する専門的知識および技術を有する人材の育成および確保、その他の地域生活障害者等が、地域において安心して自立した日常生活、または社会生活を営むために必要な事業。    
市町村が、上記のイからハに掲げる事業を実施する場合は、これらの事業を効果的に実施するために、地域生活支援拠点等を整備することが必要となるとある。
(三)基幹相談支援センターの設置の努力義務化について、基幹相談支援センターが行う業務(一般相談支援事業等または障害児相談支援事業)に関する運営に、相談に応じ、必要な助言、指導その他の援助を行う業務等を追加するとある。但し、市町村は、基幹相談支援センターを設置するよう努めるものとある。
(四)都道府県による市町村に対する助言その他の援助として、都道府県は、市町村に対し、基幹相談支援センターの設置の促進、適切な運営の確保、事業の実施体制の整備の促進、適切な実施を確保するため、市町村の区域を超えた広域的な見地からの助言、その他の援助を行うよう努めるとある。
(五)協議会の機能の強化について、障害者総合支援法に規定する自立支援「協議会」は、地域における障害者等への支援体制に関する課題についての情報の共有に加え、適切な支援に関する情報の共有を行う。「協議会」は、支援体制に関する課題についての情報の共有等を行うために必要があると認めるときは、関係機関に対し、資料または情報の提供、意見の表明、その他必要な協力を求めることができる。関係機関は、その求めがあった場合には、これに協力するよう努めるとある。尚、「協議会」の事務に従事する者、または従事していた者は、正当な理由なしに、「協議会」の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

 2 障害者が自らの希望する就労を実現するための支援の充実に関する事項では、……

(一)就労を希望する障害者、または就労の継続を希望する障害者が、就労移行支援や就労継続支援を受けること、または通常の事業所に雇用されることについて、短期間の生産活動、その他の活動の機会の提供を通じて、就労に関する適性、知識および能力の評価、就労に関する意向、就労するために必要な配慮など主務省令で定める事項の整理を行い、その評価や整理の結果に基づいて、適切な支援の提供のために必要な障害福祉サービス事業を行う者等との連絡調整、その他の主務省令で定める便宜を供与する「就労選択支援」を創設するとある。(公布日から3年を超えない範囲内において政令で定める)
(二)就労移行支援や就労継続支援の対象者について、通常の事業所に雇用されている障害者であって主務省令で定める事由により、その事業所での就労に必要な知識や能力の向上のための支援を一時的に必要とするものを追加するとある。
(三)市町村は、障害者総合支援法の実施において、障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターとの緊密な連携を図りつつ、必要な自立支援給付や地域生活支援事業を総合的かつ計画的に行う責務を有するとある。
(四)指定障害福祉サービス事業者は、障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターとの緊密な連携を図りつつ、障害者等の意向、適性、障害の特性、その他の事情に応じ、常に障害者等の立場に立って効果的に行うように努めなければならないとある。

  障害者等の福祉の増進のための調査、分析等および匿名障害福祉関連情報の利用、または提供に関する仕組みの創設に関する事項

(一)障害福祉計画の作成等のための調査および分析等として、市町村および都道府県は、市町村障害福祉計画および都道府県障害福祉計画を作成するとある。主務大臣は、市町村障害福祉計画および都道府県障害福祉計画の作成するため、次に掲げるイおよびロに掲げる事項について調査および分析を行い、その結果を公表するとある。ハおよびニに掲げる事項についても調査および分析を行い、その結果を公表するよう努めるとある。
自立支援給付に要する費用の額に関する地域別、年齢別、または障害支援区分別の状況、その他の主務省令で定める事項。
障害者等の障害支援区分の認定における調査に関する状況、その他の主務省令で定める事項。
障害福祉サービス、または相談支援を利用する障害者等の心身の状況、障害者等に提供される障害福祉サービス、または相談支援の内容、その他の主務省令で定める事項。
地域生活支援事業の実施の状況、その他の主務省令で定める事項。 (以上令和5年4月1日施行)
(二)障害者等の福祉の増進のための匿名障害福祉等関連情報*の利用または提供 *匿名障害福祉等関連情報=障害福祉等関連情報に係る特定の障害者等、その他の主務省令で定める者を識別すること、およびその作成に用いる障害福祉等関連情報を復元することができないようにするために主務省令で定める基準に従い、加工した障害福祉等関連情報をいう。     
主務大臣は、障害者等の福祉の増進のため、匿名障害福祉等関連情報を利用し、または主務省令で定めるところにより、匿名障害福祉等関連情報の提供を受けて行うことについて相当の公益性を有すると認められる業務として、それぞれ次に定めるものを行うものに提供することができる。
国の他の行政機関および地方公共団体は、障害者の福祉の増進、ならびに自立支援給付および地域生活支援事業に関する施策の企画および立案に関する調査。
大学その他の研究機関は、障害者の福祉の増進、ならびに自立支援給付および地域生活支援事業に関する研究。
民間事業者、その他の主務省令で定める者は、障害福祉分野の調査研究に関する分析、その他の主務省令で定める業務。 主務大臣は、上記による利用、または提供を行う場合には、匿名障害福祉等関連情報を児童福祉法に規定する匿名障害児福祉等関連情報、その他の主務省令で定めるものと連結して利用し、または連結して利用することができる状態で提供することができる。 (以上公布日から3年を超えない範囲内において政令で定める)
(三)匿名障害福祉等関連情報の適切な管理として、匿名障害福祉等関連情報の提供を受け、これを利用する者は、匿名障害福祉等関連情報を取り扱うに当たっては、匿名障害福祉等関連情報の作成に用いられた関連情報に係る本人を識別するために、その障害福祉等関連情報から削除された記述、もしくは匿名障害福祉等関連情報の作成に用いられた加工の方法に関する情報を取得し、匿名障害福祉等関連情報を他の情報と照合してはならない。     (公布日から3年を超えない範囲内において政令で定める)
(四)主務大臣による是正命令等では、主務大臣は、匿名障害福祉等関連情報利用者が(三)に違反していると認めるときは、その者に対し、違反を是正するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。上記の命令に違反した匿名障害福祉等関連情報利用者には、所要の罰則が定められるとある。 (公布日から3年を超えない範囲内において政令で定める)

 4 その他では、……

(一)介護保険特定施設等に入所、または入居している障害者に係る介護給付費等の支給決定について、その者が施設への入所、または入居の前に有した居住地の市町村が行う。   (令和5年4月1日施行)
(二)関係市町村長は、都道府県知事に対し、都道府県知事が行う指定障害福祉サービス事業者の指定等について、あらかじめ、関係市町村長にその旨を通知するよう求め、通知を受けたときは、市町村障害福祉計画との調整を図る見地からの意見を申し出ることができる。
(三)都道府県知事は、(二)の意見を勘案し、その指定等を行うに当たって、事業の適正な運営を確保するために必要と認める条件を付することができるものとする。指定障害福祉サービス事業者等がその条件に従わない場合、またはその条件に違反したと認められるときは、期限を定めて、その条件に従うべきことを勧告し、または指定を取り消し、もしくは期間を定めて、その指定の全部、もしくは一部の効力を停止することができるとある。

  二 児童福祉法の一部改正

   1 小児慢性特定疾病医療費の支給開始日の見直しでは、……

小児慢性特定疾病児童に係る医療費支給認定は、指定医が医療費支給認定に係る小児慢性特定疾病児童の疾病の状態が、厚生労働大臣が定める程度であると診断した日、または医療費支給認定の申請のあった日から申請に通常要する期間を勘案して、政令で定める一定の期間前の日のいずれか遅い日に遡ってその効力を生ずるものとするとある。                         (令和5年 10 月1日施行)

   2 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の強化では、……

都道府県は、地域における小児慢性特定疾病児童の実情の把握、その他の事業の実施に必要な情報の収集、整理、分析および評価に関する事業として厚生労働省令で定める事業を行うよう努め、また、この事業のほか、小児慢性特定疾病要支援者証明事業を行うよう努めるものとある。      
(令和5年 10 月1日施行)

    3 小児慢性特定疾病対策地域協議会に関する事項では、……

(一)都道府県、指定都市、中核市、ならびに児童相談所設置市は、関係機関、関係団体、小児慢性特定疾病児童およびその家族、小児慢性特定疾病児童に対する医療、福祉、教育、雇用に関連する職務に従事する者、これらの関係者により構成される小児慢性特定疾病対策地域協議会を置くよう努めるものとある。
(二)協議会が置かれた都道府県、指定都市、中核市、ならびに児童相談所設置市の区域について難病対策地域協議会が置かれている場合には、両協議会は、相互に連携を図るよう努めるものとある。
(以上令和5年 10 月1日施行)

   4 小児慢性特定疾病に関する調査、研究および匿名小児慢性特定疾病関連情報の利用、または提供に関する仕組みの創設に関する事項については、【一】の3に準じた規定を定めるとある。

   5 障害児の福祉の増進のための調査、分析および匿名障害児福祉等関連情報の利用、または提供に関する仕組みの創設に関する事項については、【一】の3に準じた規定を定めるとある。(令和5年4月1日施行・一部公布日から3年を超えない範囲内において政令で定める)

   6 都道府県知事が行う指定障害児通所支援事業者の指定については、【一】の4の(二)および(三)に準じた改正を行うとある。

  三 精神保健および精神障害者福祉に関する法律の一部改正

   1 目的規定における権利擁護の明確化等では、……

精神保健および精神障害者福祉に関する法律は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、精神障害者の権利の擁護を図りつつ、その医療および保護を行う。障害者総合支援法と相まって、その社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行い、その発生の予防、その他国民の精神的健康の保持および増進に努めることによって、精神障害者の福祉の増進および国民の精神保健の向上を図ることを目的とするとある。                                  (公布日施行)

   2 医療保護入院の入院手続等に関する事項では、……

(一)医療保護入院を行う精神科病院の管理者および措置入院等を行う都道府県知事は、その対象者および医療保護入院の同意をした家族等、指定医の診察の立会いを行った家族等に対し、その措置を行う理由および退院等の請求に関すること等を書面により知らせなければならないとある。
(令和5年4月1日施行)
(二)精神科病院の管理者は、6月以内で厚生労働省令が定める期間の範囲内の期間を定め、医療保護入院を行うことができるとある。
(三)精神科病院の管理者は、医療保護入院について患者の家族等が同意、または不同意の意思表示を行わない場合に、市町村長の同意により医療保護入院を行うことができるとある。
(四)精神科病院の管理者は、医療保護入院者であってイおよびロのいずれにも該当する者について、厚生労働省令で定めるところにより、その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくても、6月以内で厚生労働省令が定める期間の範囲内の期間を定め、(二)および(三)の入院の期間を更新することができるとある。
指定医による診察の結果、なお精神保健および精神障害者福祉に関する法律第 33 条第1項第1号(医療保護入院)に掲げる者に該当すること。

厚生労働省令で定める者により構成される委員会において、医療保護入院者の退院による地域における生活への移行を促進するための措置について審議が行われたという事実があること。

(五)精神科病院の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、医療保護入院者の家族等に(四)の同意に関し必要な事項を通知しなければならない。厚生労働省令で定める日までに、その家族等のいずれの者からも(四)による入院の期間の更新について不同意の意思表示を受けなかったときは、(四)の同意を得たものとみなすことができる。ただし、(四)の同意の趣旨に照らし、適当でない場合として厚生労働省令で定める場合においては、この限りではないとある。
(六)精神障害者に対して、身体に対する暴力等を行った者を、医療保護入院の同意をすることができる「家族等」からは除かれるとある。
(令和5年4月1日施行)
(七)市町村長は、医療保護入院について患者の家族等が、同意または不同意の意思表示を行わなかった場合においても、都道府県知事に対し、医療保護入院中の者の退院が請求できるとある。

   3 措置入院者の退院促進措置等に関する事項では、……

(一)措置入院者を入院させている病院の管理者は、退院後生活環境相談員を選任し、措置入院者の退院後の生活環境に関し、入院者やその家族等からの相談に応じさせ、これらの者に対する必要な情報の提供、その他の援助を行わせるとともに、これらの者の求めがあった場合には、地域援助事業者を紹介しなければならないとある。
(二)都道府県知事は、措置入院を行った場合に、入院措置に係る入院中の者の症状等を精神医療審査会に通知し、その入院の必要があるかどうかに関し審査を求めなければならないとある。

   4 入院者訪問支援事業に関する事項では、……

(一)都道府県は、精神科病院に入院している者のうち、市町村長の同意による医療保護入院者や、その他の外部との交流を促進するための支援を要する者に対し、入院者訪問支援員が、その求めに応じ、訪問により、その者の話を誠実かつ熱心に聞くほか、入院中の生活に関する相談、必要な情報の提供、その他の厚生労働省令で定める支援を行う事業(入院者訪問支援事業)を行うことができるとある。
(二)入院者訪問支援員は、その支援を受ける者が個人の尊厳を保持し、自立した生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立って、誠実にその職務を行わなければならないとある。
(三)入院者訪問支援事業に従事する者、または従事していた者は、正当な理由がなく、その職務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。
(四)入院者訪問支援事業を行う都道府県は、精神科病院の協力を得て、精神科病院における入院者訪問支援員による支援の在り方および支援に関する課題を検討し、支援の体制の整備を図るよう努めなければならないとある。

   5 虐待の防止に関する事項では、……

(一)精神科病院の管理者は、精神科病院において医療を受ける精神障害者に対する虐待を防止するため必要な措置を講ずるとある。
(二)精神科病院において精神障害者の医療および保護に係る業務に従事する者による障害者虐待を受けたと思われる精神障害者を発見した者は、速やかに、都道府県に通報しなければならない。また業務従事者による障害者虐待を受けた精神障害者は、その旨を都道府県に届け出ることができる。
(三)業務従事者は、(二)の通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けないとある。
(四)(二)の通報、または届出を受けた都道府県の職員は、その職務上知り得た事項で、通報、届出をした者を特定させるものを漏らしてはならないとある。
(五)厚生労働大臣または都道府県知事は、(一)の措置、(二)の通報、もしくは届出に関し、精神科病院の管理者に対し、報告徴収および改善命令等を行うことができるとある。
(六)都道府県知事は、毎年度、業務従事者による障害者虐待の状況、業務従事者による障害者虐待があった場合に採った措置、その他厚生労働省令で定める事項を公表するとある。
(七)は、業務従事者による障害者虐待の事例の分析を行うとともに、業務従事者による障害者虐待の予防および早期発見のための方策、ならびに業務従事者による障害者虐待があった場合の適切な対応方法に資する事項についての調査および研究を行うとある。

   6 精神保健に関する相談支援体制の整備に関する事項では、……

(一)都道府県や市町村等が行う相談・援助は、精神障害の有無、その程度にかかわらず、地域の実情に応じて、精神障害者や精神保健に関する課題を抱える者の心身の状態に応じた保健、医療、福祉、住まい、就労、その他の適切な支援が、包括的に確保されることを旨として行われなければならないとある。
(二)都道府県や市町村は、精神保健に関する課題を抱える者、その家族等に対し、精神保健に関する相談支援等を行うことができるとある。
(三)都道府県や市町村は、精神障害者、精神保健に関する課題を抱える者への支援体制の整備について、関係機関、関係団体、その家族等、これらの者の保健医療、福祉に関連する職務に従事する者、その他の関係者による協議を行うよう努めなければならないとある。
(四)都道府県は、市町村の求めに応じ、その市町村が行う業務の実施に関し、精神保健福祉センター等による技術的事項についての協力、その他その市町村に対する必要な援助を行うように努めなければならないとある。

   7 精神保健指定医の指定制度に関する事項では、……  

厚生労働大臣の登録を受けた者が行う精神保健指定医の指定に必要な研修は、指定の申請前三年以内に行われたものまで有効とするとある。 (令和5年4月1日施行)

   その他では、……

「精神障害者」の定義のうち、精神疾患の例示から「精神病質」が削られるとある。(公布日施行)

  四 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部改正

   1 雇用の質の向上に向けた事業主の責務の明確化に関する事項では、……  

事業主の責務として、障害者である労働者の能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えること。また、適正な雇用管理を行うことに加え、職業能力の開発および向上に関する措置を行うことによって、その雇用の安定を図るように努めなければならないとある。(令和5年4月1日施行)

   2 障害者雇用と障害者福祉の連携の促進に関する事項では、……

(一)公共職業安定所における適性検査、職業指導について、公共職業安定所および障害者職業センターは、障害者総合支援法に規定する就労選択支援を受けた者から、その評価等の結果の提供を受けたときは、その結果を参考として、適性検査、職業指導等を行うとある。
(二)障害者職業総合センターおよび地域障害者職業センターの業務の追加として、障害者職業総合センターおよび地域障害者職業センターは、就労支援事業者(障害者総合支援法に規定する就労選択支援、または就労移行支援を行う事業者)、その他の関係機関およびこれらの職員に対する職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言、研修等、その他の援助を行うとある。(令和5年4月1日施行)

   3 障害者の多様な就労ニーズを踏まえた働き方の推進に関する事項では、……

(一)雇用義務等に関する規定における対象障害者である労働者の数の算定に当たっては、重度身体障害者、重度知的障害者、または精神障害者である特定短時間労働者は、その一人をもって、厚生労働省令で定める数の対象障害者である労働者に相当するものとみなすとある。
(二)国および地方公共団体の対象障害者である職員の数の算定についても、上記(一)と同様とある。
(三)上記(一)の改正に伴い、特に短い労働時間以外での労働が困難な状態にある対象障害者を特定短時間 労働者として雇い入れる事業主、または対象障害者である特定短時間労働者を雇用する事業主に対する、これらの者の雇入れ、または雇用の継続の促進を図るための特例給付金の支給廃止するとある。

   障害者雇用の質の向上の推進に関する事項では、……

(一)納付金関係業務の拡充として、納付金関係業務において、加齢に伴って生ずる心身の変化により、職場への適応が困難となった対象障害者である労働者の雇用の継続のために、必要となる労働者が職場に適応することを容易にするための措置に要する費用、また対象障害者の雇入れやその雇用の継続を図るために、必要な一連の雇用管理に関する援助の事業に要する費用に充てるための助成金の支給を行うとある。                  (公布日から3年を超えない範囲内において政令で定める)

   (二)障害者雇用調整金および報奨金の支給については、以下の通り。

  障害者雇用調整金の支給に当たって、支給対象となる事業主の雇用する対象障害者である労働者の     数が、政令で定める数を超える事業主については、政令で定める数に単位調整額を乗じて得た額に、超える部分の数に厚生労働省令で定める金額を乗じて得た額を加えた金額を支給するとある。

  報奨金の支給に当たって、支給対象となる事業主の雇用する対象障害者である労働者の数が、厚生労働省令で定める数を超える事業主については、厚生労働省令で定める数に単位調整額以下の額に厚生労働省令で定める額を乗じて得た額に、超える部分の数に厚生労働省令で定める金額を乗じて得た額を加えた金額を支給するとある。      (以上公布日から3年を超えない範囲内において政令で定める)

   その他では、……

(一)有限責任事業組合の算定の特例として、申請に基づき厚生労働大臣の認定を受けた場合に、その特定事業主が雇用する労働者をその特定組合等のみが雇用する労働者と、その特定事業主の事業所を、その特定組合の事業所とみなす特例の対象となる事業協同組合等に、有限責任事業組合契約に関する法律に規定する有限責任事業組合を追加するとある。
(二)在宅就業支援団体の要件には、在宅就業支援団体の要件として、常時 10 人以上の在宅就業障害者に対して、実施業務の全てを継続的に実施していることとされていることを常時5人以上と、従事経験者が2人以上であることとされているのを、従事経験者を置くにするとある。(以上令和5年4月1日施行)

  五 難病の患者に対する医療等に関する法律の一部改正

  1 特定医療費の支給開始日の見直しでは、……

指定難病の患者に係る特定医療費の支給認定は、指定医が、支給認定に係る指定難病の患者の病状の程度が厚生労働大臣が定める程度であると診断した日、または支給認定の申請のあった日から申請に通常要する期間を勘案して政令で定める一定の期間前の日のいずれか遅い日に遡って、その効力を生ずるものとするとある。 (令和5年 10 月1日施行)

   2 難病に関する調査、研究等および匿名指定難病関連情報の利用、または提供に関する仕組みの創設に関する事項については、「一 障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律の一部改正」の3に準じた規定を定めるとある。

   療養生活環境整備事業の強化では、……

(一)都道府県は、指定難病要支援者証明事業(指定難病にかかっている旨、その他の厚生労働省令で定める事項を書面、その他の厚生労働省令で定める方法により証明する事業)を行うよう努めるとある。
(二)難病の患者等からの相談に応じ、必要な情報の提供および助言、その他の便宜を供与する事業を行う都道府県は、難病の患者の福祉、または雇用、その他の難病の患者に対する支援に関する業務を行う関係機関との連携に努めなければならないとある。(令和5年 10 月1日施行)

   難病対策地域協議会に関する事項では、……  

難病対策地域協議会が置かれた都道府県、保健所を設置する市および特別区の区域について、小児慢性特定疾病対策地域協議会が置かれている場合には、両協議会は、相互に連携を図るよう努めるとある。
(令和5年 10 月1日に施行)

  六 身体障害者福祉法の一部改正

介護保険特定施設等に入所、または入居している身体障害者に対する援護については、「一 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部改正」の4の(一)に準じた改正を行うとある。
(令和5年4月1日施行)

  七 知的障害者福祉法の一部改正

介護保険特定施設等に入所、または入居している知的障害者に対する更生援護については、「一 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部改正」の4の(一)に準じた改正を行うとある。
(令和5年4月1日施行)

  八 精神保健福祉士法の一部改正

精神保健福祉士の業務に、精神障害者および精神保健に関する課題を抱える者への、精神保健に関する相談を追加するとある。

  九 施行期日等

   検討すべきことでは、……

(一)政府は、この法律の施行後五年を目途として、一から五までの改正後の障害者総合支援法、児童福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律、難病の患者に対する医療等に関する法律の規定について、その施行の状況等を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるとある。
(二)政府は、精神保健および精神障害者福祉に関する法律の規定による本人の同意がない場合の入院の制度の在り方に関し、精神疾患の特性および精神障害者の実情等を勘案するとともに、障害者の権利に関する条約の実施について、精神障害者等の意見を聴きつつ、必要な措置を講ずることについて検討するとある。

   経過措置および関係法律の整備では、……

この法律の施行に関し、必要な経過措置を定めるとともに、関係法律について所要の改正を行うとある。

    施行期日については、……

この法律は、令和6年4月1日から施行することとした。ただし、次(以下)に掲げる事項は、それぞれに定める日から施行する。

(一)公布の日に施行する改定もの
「三 精神保健および精神障害者福祉に関する法律の一部改正」の1および8
(二)令和5年4月1日に施行する改定もの
「一 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部改正」の3の(一)及び4の(一)
「二 児童福祉法の一部改正」の5の一部
「三 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正」の2の(一)の一部及び(六)並びに7
「四 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部改正」の1、2の(二)の一部及び5
「六 身体障害者福祉法の一部改正」
「七 知的障害者福祉法の一部改正」
(三)令和5年 10 月1日に施行する改定もの
「二 児童福祉法の一部改正」の1、2の一部及び3
「五 難病の患者に対する医療等に関する法律の一部改正」の1、3の(二)及び4
(四)公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定めるもの
「一 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部改正」の2の(一)及び3の(二)から(四)まで
「二 児童福祉法の一部改正」の5の一部
「四 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部改正」の2の(一)及び(二)の一部

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