回答6 お子さんには教科書の学習プリントなどの拡大コピーを作ってあげたり、下敷きなどを読む行の前に置いて文字を読みやすくしてあげると効果的です。大切なのはゆっくり読む練習をし、読む癖をつけ徐々に慣れさせることが重要です。また視力に支障(例えば乱視)がないかも考えられる要因の一つです。それでも改善しない場合は読字障害(ディスレクシア)であることも考えられます。
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ディスレクシアとは? ディスレクシアの初期症状について 家庭でできる支援について 公的な支援を求めるなら |
ディスレクシアは、1896年に英国のMorgan先生が最初に報告した文字の読み書きに限定した困難さをもつ疾患です。知的能力の低さや勉強不足が原因ではなく、脳機能の発達に問題があるとされています。そのため発達障害の学習障害に位置づけられており、2013年に改定された米国精神医学会の診断基準(DSM-5)では、限局性学習症(いわゆる学習障害)のなかで読字に限定した症状を示すタイプの代替的な用語としてdyslexia(ディスレクシア)を使用するようになりました。読字に困難があると当然ながら書字にも困難があることが疑われます。そのため日本では発達性読み書き障害と呼ばれることもあります。
以下にディスクレシアの初期症状をまとめてみました。
〇読字障害
・幼児期は、文字に興味がないし、覚えようとしない
・文字を一つ一つ拾って読む(逐次読み)
・語あるいは文節の途中で区切ってしまう
・読んでいるところを確認するように指で押さえながら読む
・文字間や行間を狭くするとさらに読みにくくなる
・初期には音読よりも黙読が苦手である
・一度、音読して内容理解ができると二回目の読みは比較的スムーズになる
・文末などは適当に自分で変えて読んでしまう
・本を読んでいるとすぐに疲れる(易疲労性)
・促音(「がっこう」の「っ」)、撥音(「とんでもない」の「ん」)、二重母音(「おかあさん」の「かあ」)など特殊音節の誤りが多い
・「わ」と「は」、「お」と「を」のように耳で聞くと同じ音(オン)の表記に誤りが多い
・「め」と「ぬ」、「わ」と「ね」、「雷」と「雪」のように形態的に似ている文字の誤りが多い
・画数の多い漢字に誤りが多い
以上のことから、根底には音韻処理困難があり、表記された文字とその読み(音)の対応が自動化しにくく、それを司る脳機能の発達が未熟であるとされています。
ここで留意しておきたいことは、ディスレクシアのこどもは「文字が読めない」と表現されることが多いのですが、これが誤りであり正しくは「読むのが極端に遅く、よく間違える」ということです。文字を読むのに時間がかかり、間違えることもあるといった状態では、読むだけで疲れてしまって、意味を把握する段階まで至りませんし、読書に対する拒否感が生じてしまうことになります。その結果、語彙や知識が不足して、学業不振が著しくなっていきます。さらには心身症や不登校といった二次障害の状態になってしまうこともあります。
家庭での対応(家庭でできること)を以下に記しておきます。
2.分からない言葉を絵やことばで説明する。
3.もう一度読み聞かせをする。
4.漢字に鉛筆で振り仮名を振る。
5.語の区切りを鉛筆で斜線を引く。
6.短い文を本人に音読させる。
7.できたら、振り仮名や斜線を消す。
8.来週学習する教科書の読み聞かせをしておく。
9.実際の生活で必要な単語や興味がある単語の読みを練習する。よく知っていて読める単語を書く練習をする。(読み書きへの拒否感が強い場合はやめておく)
10.学校では、想像以上のストレスを抱えているので、家ではリラックスできることやスポーツ、絵、音楽など好きなことをする時間が必要。
高学年になったらパソコンやiPadなどのIT機器の活用も良いと思います。英語は会話を中心にしていくこともひとつです。
学校の先生には、突然、皆の前で音読させないようにお願いしておきましょう。もしやらなければならない場合には、事前に読む箇所を教えてもらい、家で練習していくと良いかもしれません。通級指導教室や取出し授業のサービスを受けたりするときには、家でできないところをお願いするのも良いと思います。
その場合は自治体の保健センター、児童発達支援センターなどで相談することができます。
ディスレクシアは、ADHD(注意欠陥多動性障害)や自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群など)にも併存していることがありますし、算数のLDが併存していることもよくあります。行動面や対人面のみをケアするのでなく、ディスレクシアが併存している場合は、並行してディスレクシアへの対処を考えなくてはなりません。
学習障害(LD)の場合では、学校の一般的な教育の仕方では理解が進まないこともあります。医師の診断を受け、学習障害(LD)の指導に実績のある放課後等デイサービスなどで学力を補うのも一つの良い選択肢かもしれません。
また小学1年生から6年生までで、全般的な発達の遅れはなく、文字の読み書きに困難があるお子さんの診療する児童期メンタルヘルス診療科などもあります。
なお、ディスレクシア初診外来を受診する際には、以下のすべてにチェックが入ることが前提となっています。
□ 本人に音読が苦手という自覚がある
□ 本人も改善したいと願っている
□ 本人が受診を納得している
□ 1年以内に詳しい知能検査を受けていて、知的な遅れはない
□ その検査結果を持参できる
□ 医療機関(できれば教育機関から詳しい情報も)の紹介状がある