回答8 吃音(きつおん・どもり)は三歳~五歳の間で発することが多く、七~八割がたは治るといわれており原因については特定されてはいません。こどもに対する親御さんの基本的な態度としては、お子さんが話そうとしているときは遮らず最後まで聞いてあげてください。以下は、吃音について基本的な知識としなるものを記しておきます。
目次 |
吃音の症状 分類と原因 発達性吃音の発症と進展 吃音と成長 |
吃音(きつおん、どもり)は、話し言葉が滑らかに出ない発話障害のひとつです。単に「滑らかに話せない(非流暢:ひりゅうちょう)」と言ってもいろいろな症状がありますが,吃音の特徴的な非流暢には、以下の3つがあります。
・音のくりかえし(連発)、例:「か、か、からす」
・引き伸ばし(伸発)、例:「かーーらす」
・ことばを出せずに間があいてしまう(難発、ブロック)、例:「・・・・からす」
上記のような、発話の流暢性(滑らかさ・リズミカルな流れ)を乱す話し方を吃音と定義しています。
吃音は、発達性吃音と獲得性吃音に分類されます。
吃音の9割は発達性吃音です。発達性吃音の特徴として、以下のようなことが知られています。
・幼児期(2~5歳)に発症する場合がほとんど(小学校以降に発症することもあります)
・発症率(吃音になる確率)は、幼児期で8%前後
・発症率に国や言語による差はほとんどない
・有病率(ある時点で吃音のある人の割合)は、全人口において0.8%z前後
・男性に多く、その比は2~4:1程度である(年齢や調査により結果は変動します)
原因は確定されませんが、以下のような要因がお互いに影響し合って発症することが確認されています。
・発達的要因(身体・認知・言語・情緒が爆発的に発達する時期の影響)
・環境要因(周囲の人との関係や生活上の出来事)
*体質的要因(遺伝的要因)の占める割合が8割程度という報告もあります。
一方、獲得性吃音には、神経学的疾患や脳損傷などにより発症する獲得性神経原性吃音や心的なストレスや外傷体験に続いて生じる獲得性心因性吃音があります。どちらも発症時期は青年以降(10代後半~)です。
発達性吃音の多くは軽い繰り返し(例:あ、あ、あのね)から始まります。うまく話せる時期もあるのが特徴です(「波がある」と言うことができます)。7~8割くらいが自然に治ると言われています。残りの2~3割は徐々に症状が固定化して、楽に話せる時期が減ってきます。さらに症状が進むと、話そうとしても最初のことばが出なくなることが多いです。話しても吃音が出た時に、笑われたり、「ゆっくり話してごらん」と注意されたり、自分でも身体の不具合を感じたりすると、「話す(話して吃音が出る)」という行為と、笑われたり注意されたりした時の不快感が結びついて、話すことや吃音が出ることそのものに嫌悪や不安を感じるようになります。
何か工夫をしたこと(例:身体を動かして勢いをつける、ことばの最初に「あのー」をつける)でたまたまことばが出たという経験すると、出にくいときは常にその方法を使うようになることがあります(道具的学習)。
このように、単に「ことばを繰り返す、ことばが出ない」という症状以外の特徴(二次的行動)が見られるようになります。
こどもは最初、軽く繰り返すくらいであれば、全く自分の症状に気づかないことが多いです。しかし、頻繁に繰り返したり、ことばが出ないことを経験すると、そのこと自体にびっくりしたり、うまく話せないことを不満に感じたりします。それでも、幼い頃は、その感情もその場限りの一時的なものです。それが成長とともに吃音も固定化し、うまく話せないことが多くなってくると、周囲の人から指摘される場面も多くなり、こどもは自分のことばの出づらさをはっきりと意識するようになります。その結果、話す前に不安を感じるようになったり、吃音が出ることを恥ずかしく思ったりします。また、話す場面に恐怖を感じるようにもなります。このような心理は、成長の過程で「うまく話せない」という経験が増えれば増えるほど強くなります。
以上、簡単ではありますが、吃音について記しておきました。症状が治らず吃音が続くようでしたら小学校にある「ことばの教室」の利用や、言語聴覚士をおいて療育を行っている放課後デイサービスなどで訓練することもできます。