放課後等デイサービスのことについてある程度理解できたら、実際どうすれば利用できるのかが気になるところです。先ずは、以下にあるQ&Aを読んでみて下さい。
Q:利用する事業所は、どこに相談して決めればいいのですか?
A:相談支援員を通して決めることもできますが、保護者自身が探して見学をして契約を結ぶ場合が多いようです。
Q:利用する事業所によって対象年齢制限はありますか?
A:事業所によりますが、放課後等デイサービスは就学年齢の6歳から18歳まで利用が可能です。
Q:利用日数に決まりはありますか?
A:住んでいる自治体の福祉の窓口(障害福祉課や福祉事務所)が決定します。障害の度合いや自治体の考え方によって、サービス受給日数はちがいますので、申請のときに、必要とする日数や理由をハッキリと伝えてください。詳しくは「放課後等デイサービスの利用の仕方」をご覧ください。
Q:利用するには親の就労などの制限はありますか?
A:ありません。
Q:親の所得に応じて利用料金は異なりますか?
A:異なります。負担いただく金額には世帯所得ごとの月額上限額が定められています。詳しくは「放課後等デイサービスを利用するための行政手続き」をご覧ください。
Q:利用する事業所は学校との連携はありますか?
A:連携することもあります。お子さまの様子をみて、学校との連携が必要そうであれば保護者の方にお伝えします。
Q:外出・宿泊などの活動はありますか?
A:集団プログラムの中で近隣の図書館や公園への外出をすることがあります。宿泊はありません。
Q:学校休業日の利用は可能ですか?
A:可能です。放課後だけでなく、土日、夏休み、冬休み、春休みの利用もお待ちしています。
放課後等デイサービスを利用するためには、行政に利用料の支給申請を行い、受給者証を支給してもらう必要があります。放課後等デイサービスの利用や、受給者証の申請をおすすめすると、親御さんのなかには「そんなことをしたら、我が子はこの先“障害児”として生きていかなければならないのでは?」と不安に思う方も多いようです。受給者証は、成長や発育、発達にちょっとしたサポートが必要なため、放課後等デイサービスを利用する補助金が受けられますよ、という証明書です。障害児に交付される「療育手帳」や「身体障害者手帳」とは関係しません。また障害児と認定されるわけでもありません。
障害児に支給される「療育手帳」や「身体障害者手帳」は審査が非常に厳しく、医師の診断書やさまざまな検査などが必要になります。障害児に認定されるということは「社会の特別な支援を必要とし、受けることができる」と認められるということです。
受給者証を申請し、放課後等デイサービスを利用しても、学校の内申書に傷がつくわけではありません。将来の進学や就職に、放課後等デイサービスの利用が支障をきたすこともありません。逆に「スムーズな社会進出のために必要なスキル」を学ぶ事ができる場所と考えるようにしてください。
放課後等デイサービスは、お住まいの市町村役場に「受給者証」を申請することで、利用が可能になります。
家庭の収入額に合わせて、利用料が補助されるようになっています。
収入が概ね890万円未満の世帯の場合は、通所月額上限4,600円となります。
上記以外の世帯の場合は、37,200円となります。
※おやつ代やお出かけの際のお食事代、お弁当を頼んだ時の食費などは別途支払うことになります。
また利用の上限日数があり、利用している放課後等デイサービスすべての利用日数をプラスして、上限以内におさめる必要があります。申請時に利用日数を行政の担当者と相談して決めますが、最初から利用可能な上限日数にしておくと、あとで増やすという手間が省けます。上限日数分を毎月使用しなければならないわけではなく、月によって数日しか利用しないというケースがあっても大丈夫です。
放課後等デイサービスを選ぶ段になると、調べれば調べるほど様々な特徴を持つ施設の案内を見ているうちに目移りしてしまい、なかなか決められないということもあると思います。そこで何を大切にすればいいのかなど、以下、選ぶポイントなどを整理し、みなさんのお役にたてればと思っています。
放課後等デイサービスを利用する準備をするとともに、どの施設を利用するかを選び始めることと思います。
放デイ(放課後等デイサービス)を探し始めると、あまりにも施設が多く、個性もさまざまで迷ってしまいます。どこがいいのかさっぱり分からなくなって、困ることがあります。そこで、どの放デイが良いかを探す前に、試してみてほしいことがあります。それは「なぜ放課後等デイサービスを利用しようと思ったのか」、その理由を整理することです。
「なぜ『どうしても放デイを探さなければ』と思ったのか」、その理由を整理しておくと、どんどん入ってくる情報に惑わされることなく、目的の放デイを目移りすることなく探すことができるはずです。
例えば……
・両親が共働きなので学童に行ってほしかったが、入れなかった。
・何か習い事をさせたかったが、どこに行っても合わなかった。
・勉強ができないので塾に通わせたいが、合う塾や先生が見つからない。
このように、どうしても譲れない本来の目的をしっかり整理しておくことで、放デイサービスはぐっと探しやすくなります。
放課後等デイサービスを選ぶにあたり、もうひとつ整理しておきたいことがあります。それは「自分たち家族は放課後等デイサービスに何を求めるのか」ということです。
・とにかく平日放課後に預かってほしい。
・学校に迎えに行って預かり、家まで送ってきてほしい。
・土日祝日に預かってほしい。
・こどもの特性に合わせて勉強をさせてほしい。
・何かスポーツを習わせたい。
・何か音楽を習わせたい。
以上のように、放課後等デイサービスに求めることをいくつでも良いので挙げてみてください。
放課後等デイサービスに求めることを挙げられたら、それに優先順位をつけてみてください。まずは「どうしても放課後等デイサービスに預けなければならない理由」を選びます。最優先事項が決まったら、2番目、3番目…と順番をつけていきましょう。誰に見せるわけでもありません。本音の順番をつけてください。
自分自身の本音と向き合い、優先順位が決まったら、順番通りに並べてみてください。自ずと「こどものための理由」と「親の都合による理由」に分けられるのではないでしょうか。
もし「親ファースト」の理由が優先だったり、数が多かったりしても、親が自分を責める必要はまったくありません。共働きで平日預かり先が無いなら、こどものためにも預かり先を探すことはごく当然のことです。
また平日は体力・気力ともにボロボロになるまで働くパパママが、土日くらいは家のことがしたい、自分の時間が欲しいと思うことも当然です。
こども達が心身ともに健康に育つために、パパとママもきちんと休み、心身をメンテナンスすることは重要なことです。罪悪感を持つ必要は全くありません。
優先順位の上位が「こどもファースト」の理由だった場合、放課後等デイサービスの探し方についてご紹介します。
放課後等デイサービスにも、さまざまな種類があります。まずはこどもの課題はなにか、どんな点を伸ばしてあげたいかによって、指導内容が合うかどうかを見ていきましょう。
放デイの指導内容はだいたい以下のような内容に分かれます。
・療育型(障害の特性にあわせた指導)
・学習型(宿題・勉強など)
・運動型(器械体操などスポーツ系)
・音楽系(リトミックや楽器など)
どこが合っているかを選ぶには、日ごろのこどもの様子に重要なヒントがあります。
・じっと座っていることが苦手
・他の人がいると落ち着かない
・一度気分が荒れるとなかなか切り替えられない
・情緒が不安定で、落ち込んだりキレたりすることが多い
・他のこどもとどうしてもうまく関われない
・他害・自傷がある
こどもが学童を断られたり、塾が合わなかったりするのも、上記のことなどと重なるのではないでしょうか。そこにはさまざまな理由があるはずです。そしてこどものつまずきは、こどものノビシロの芽です。見逃さないようにしてください。
こどもに合ったサービス内容の放デイを探すことは、こどもの「育ち」「発達」に合った施設を探すことと同じです。こどもの傾向からどんな施設がマッチするか以下に記します。
・じっと座っていることが苦手 ▶︎ 療育型・学習型
・他の人がいると落ち着かない ▶︎ 個別支援型・療育型
・気分が荒れるとなかなか切り替えられない ▶︎ 療育型・情緒発達支援に優れた施設
・情緒が不安定 ▶︎ 情緒発達支援に優れた施設
・他のこどもとうまく関われない ▶︎ 学習型・個別支援
・他害・自傷がある ▶︎ 療育型・情緒発達支援に優れた施設
以上が、こどもの特性、苦手に合わせたマッチングの例です。施設によってさまざまな療育や個別支援・情緒発達支援のかたちがあるので、他にももっと良い施設があるかもしれません。
たとえば、以下のような受け入れ態勢が整っている放デイ施設では、こどもが自分の居場所を確保し、スタッフという「家族以外の大人」を信頼できるようになるのではないでしょうか。
・居場所を確保できる施設である
・居場所を作ってくれるスタッフがいる
・こどもの気持ち、やるせなさ、いらだちを受け止めてくれるスタッフがいる
・友だちを作りやすい環境
・思い切り体を動かし運動する・遊ぶ機会を作ってくれる
・こどもの好奇心をつかむ「プログラミング」「工作」などを上手に取り入れている
・こどもの抱える「困りごと」に向き合ってくれる
発達障害を抱え、しかし知能は普通学級に通うほど高いこども達は、少なからずプライドを傷つけられています。
・勉強ができない
・自分が他の人とはどうやら違うらしい、と気づく
・「普通」じゃないと指摘される
・友だちがいない、少ない、うまくやっていけない
・いじめに遭った経験がある
・みんなの前で先生に自分ばかり叱られる
こうした経験を重ねていくと、こどもの自己肯定感はどんどん削られ、自分を嫌いになり、自信を失ってしまいます。親として、それはとても悲しいことですね。
こどもがイライラして荒れている時、暴言や暴力をふるって泣きわめいている時などの対処法をご紹介しておきます。
・荒れているときは「わかるよ、イライラするね、腹が立って苦しいよね」と受け止める
・どんなに荒れて暴言を吐いている時でも否定は禁物。ただ受け止める
・落ち着いてきたら、じっくりと話を聞く
・原因を聞いている間も絶対に否定しない。その時々の気持ちを受け止める
発達障害を持つ子が荒れている時、それは自分の心の中で吹き荒れる嵐を持て余している状態です。この時に「そんな言葉使わないの!」「暴れたらダメ!」など、否定することは逆効果です。
「腹が立って苦しいね、わかるよ」と理解の言葉をかけて、ただ受け止めてあげることで、こどもは孤立せず、自分の気持ちを理解してくれる親を信頼できるようになります。
そして親だけでなく、同じように自分のもてあます感情・情緒を受け止め、落ち着く場所を提供してくれるスタッフがいる施設が見つかれば、スタッフのことも信頼できるようになります。
少しずつ信頼できる場所、信頼できる大人を増やしていくことで自己肯定感や自信を取り戻すことにつながり、ひいては情緒の安定や成長につながっていくのです。
発達障害は社会性の障害とも呼ばれます。勉強やコミュニケーション能力など、社会性を身につけていく段階で「苦手なことが多いかもしれない」と気付くことがあります。
そのため、生活スキルやコミュニケーション能力、社会性、気分の切り替えなどを伸ばすようなプログラムや療育方法を確立していて、さらに家庭・学校との連携を密にとってくれる施設を探しましょう。
・生活スキル・コミュニケーション能力などを伸ばすプログラムを確立している
・ソーシャルスキルトレーニングなどの専門的療育ができるスタッフがいる
・長く療育に携わっているスタッフや支援学校教員経験者など相談できるスタッフがいる
・こどもが何につまずいているのか冷静に観察し気づいてくれる
・「HUG(登録制のWeb連絡帳)」や連絡帳など、保護者との連携を密にとってくれる
・積極的にこどもが通う支援学校や支援学級、学校と連携をとってくれる
以上のようなポイントに焦点を当てて探してみてください。
放課後等デイサービスは、主に小学生を対象にしているところが多数派です。しかし中には中学生や高校生向けの就業支援放デイや、こどもの学年がかたよりすぎているところもあります。
例えば、小学1年生が利用するのであれば、小学校低学年のこどもがたくさん通っている所がおすすめです。お友だちも作りやすいですし、体格も同じくらいなので衝突などの事故も大きくなりにくいといえます。
しかし高校生まで同じ部屋、しかも指導の目が行き届かずおのおの勝手に走り回っているような施設だと、体の大きな高校生に小学生が吹っ飛ばされてしまうようなことも起こり得ます。
利用しているこども達の年齢や学年もチェックし、だいたい我が子と同じくらいか、許容範囲内にある学年のこども達が多いところを選ぶと良いでしょう。
親の都合優先で選ばざるを得ない場合は、どのような点に注意すれば良いのか以下、見ていきます。
まずは利用できる時間、利用できる日にちで探しましょう。放デイでは「預かり型(学童保育のようなもの)」と呼ばれるところが多いですね。
・平日、仕事が早く終わる方の親の就業時間まで預かってくれる
・土日や祝日も預かってくれる
・お盆・お正月休みはいつからなのかチェックしておく
・万一親の仕事が長引いたり残業になったりしたとき、融通がきく
こうした点をチェックし、すり合わせてOKが出るところを選んでみてください。
親の職場や家から遠い場所に放デイがある場合、送り迎えの有無が決め手になることも。
・学校→施設の迎えをしてくれる
・施設→家の送りをしてくれる
・休日、家⇔施設の送迎をしてくれる
送迎がある放デイを利用すると、共働き家庭やひとり親家庭のパパママはとても助かります。
放課後等デイサービスは、親だけの力で探さなければならないわけではありません。行政をはじめ、さまざまなサービスやサイトなどが応援してくれます。例えば……
・市町村役場の福祉課・育児課(市町村によって名称が異なります)
・市町村の社会福祉協議会
・相談支援事業所(市町村役場や社協に訊ねてみましょう)
・地元の特別支援学校
・Googleの口コミを読む
地元の特別支援学校の中には、その地域の福祉・障害者支援の情報発信を担っているところもあります(地域教育相談室等)。学校によって対応してくれるかどうかが異なるので、まずはサイトで調べたり、電話をしたりして力になってもらえるか訊いてみましょう。
上で紹介した場所では、こどもの状態や親の事情を整理して伝えると、「ここの施設はどうですか?」「こんな施設一覧がありますよ」というように、施設の情報を提供してすすめてくれます。
でも「ここの施設はオススメ、ここの施設はダメ」とは決して言ってくれません。そんな時に役立つのが、Google検索で出てくる施設に対する口コミです。実際の利用者の生の声ですが、匿名投稿でもあるので、話半分ほどで目を通してみてください。
地域の支援サービスやサイトの口コミなどから「条件も合うし、ここって良いかも!」と想える施設がある程度の数にしぼれたら、今度は親子で見学に行ってみましょう。
放課後等デイサービスに、あらかじめ電話をして「利用を考えているので、こどもと一緒に見学に行きたい」旨を伝えます。
その時点で、放デイ側に人数の空きがなければ、残念ですがお断りされます。そんな時はただ電話を切るのではなく、「お近くや、ご存知の施設さんで、おすすめのところはありますか?」とリサーチしてみましょう。同業者が、同業者のことを一番よく見て知っています。
もし人数に空きがあれば、見学をさせてもらいましょう。電話で話したときにこどもの特性と苦手なこと、なぜ放デイを探しているのかをきちんと伝えておき、こどもと一緒に見学することで、施設側の対応も見えてきます。
電話をかけたときや、施設見学に訪れた際は、必ず相手がどんな対応をしてくるか、どんな人となりかをじっくり観察しましょう。またこどもにどう対応してくれるかもしっかりチェックしましょう。
対応してくれるスタッフは、施設の管理者や、児童発達支援管理責任者(児発管)など、施設やこども達の支援を管理する立場の人です。
こどもに対する態度や話しかけ方、スタッフへの声のかけ方や通っているこども達への対応をはじめ、「この人が自分の上司だったらどうだろう」など、多角的な目で見てみましょう。
施設によっては新しくて明るく、個別に落ち着けるパーテーションや個室などの場所もあり、視覚的支援も考え抜かれた素晴らしい建物というところもあります。
ある程度古い建物でも視覚的支援などにスタッフの工夫が活かされており、掃除も行き届いているところもあります。こども達も生き生きとして、スタッフたちに信頼の眼差しを寄せ、楽しそうに通ってくるような施設であったりします。
逆に暗くて掃除も行き届かず、なんとなく不潔で絵本やおもちゃもろくになく、こども達が無気力にDVDを見てぼーっとしているような施設もあります。スタッフ同士の会話も覇気がないような施設は、ちょっとこどもを預けたくなくなりますよね。
できれば実際にこども達の支援を行っている時間にも見学させてもらうと、お客様向けではない、真の姿が見えてきます。
最終的には、利用するこどもが気に入ったかどうかが判断の分かれ道となります。送迎や利用時間など、どうしても譲れない条件だけ確認したら、あとはこどもが気に入ったかどうかで決めてください。
放課後等デイサービスは、入ってから「合わない」と感じた時点でやめても特に罰則などはありません。放デイの方でも、こどもがどうしても合わず、来るたびにつらい思いをしているようであれば、やめても嫌な顔はされないことがほとんどです。
こどもの気まぐれに任せるわけではありません。しばらく様子を見て、あまり合わないようであればスタッフと連絡を密にし、こどもの気持ちを受け止めつつ話をじっくり聞いて、少しでも楽しく通える工夫をしてみてください。
家庭の事情によって、またこどもの特性や個性、苦手やノビシロによって、選ぶべき放課後等デイサービスは違ってきます。
学童の代わりに預かってほしい場合、習い事や塾の代わりに通わせたい場合によって、放デイサービスの内容はまったく違ってきます。またパパママの仕事の都合によっても、利用できる放デイは限られてきます。
発達障害を持つこどもは、環境の違いが苦手なことも少なくありません。新しい環境である放デイに慣れるまで、少し時間がかかると思ってゆったり構えておくと、親も焦らずに済みます。
こどもが放デイに慣れ、スタッフと信頼関係を結べるようになるまで、親はこどもの心の嵐を受けとめて、スタッフと連絡をとりつつ、こどもの中に起きる小さな変化を観察してください。放デイが楽しく、お子さんの居場所と自己肯定感を与えてくれる場所だと認識できるようにサポートしていきましょう。