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強度行動障害とは? |
児童福祉サービスでは、他害や自傷行為が起きやすいこどもに対し、本人の生活の質を向上させるために、特別に配慮された支援が必要になります。
強度行動障害児支援加算とは、強度行動障害支援者養成研修修了者が、上記のような他害や自傷行為が起きやすいこどもにサービスを提供した時に、所定単位数に加算できるものです。
以下、児童発達支援・放課後等デイサービスの事業所が、強度行動障害児支援加算を取得する際に必要な算定要件・単位数・加算を取得した場合の算定額について説明します。
強度行動障害とは、自閉症や知的障害等の精神科的な診断ではなく、噛みつきや頭突き等の直接的な他害や、睡眠の乱れ等の間接的な他害、自傷行為等が通常考えられる範囲を超えた頻度と形式で現れている状態です。中学校、高校の時期に行動障害が顕著になる場合が多くなるとされています。「家庭にあって通常の育て方をし、かなりの養育努力があっても著しい処遇困難が持続している状態」と定義されています。
厚生労働省の施策として平成25年度から強度行動障害支援者養成研修事業(基礎研修)が実施されています。強度行動障害支援者養成研修とは、自傷や他害行為に代表される著しい行動障害がある人に対して、様々な障害福祉サービス事業所において適切に支援が行えるよう、支援者に基礎的な知識と技術に関する情報を提供することを目的とした研修です。
強度行動障害支援者養成研修の内容や期間、受講費用などは、都道府県や実施する機関、企業によって異なります。地域で行われている強度行動障害支援者養成研修について、それぞれ確認してください。
強度行動障害支援者養成研修は基礎研修と、実践研修とに分かれています。
基礎研修の受講資格は、原則として、障害福祉サービス事業所などで知的障害、あるいは精神障害のある方への対応業務に従事する、もしくは今後従事する予定のある人と定められています。研修内容の中心は強度行動障害の症状や特性に対する理解と、支援の枠組みを習得することです。研修期間は2日間で実施時間は合計12時間ですが、1回目と2回目の受講が連日となることもあり、離れた日程となることもあります。基礎研修の履修期間は、原則1カ月以内とされています。2日間にわたる研修の1回目を受けた後、1カ月以内に2回目の受講が必要です。
実践研修の受講資格は、基礎研修を修了していることです。また基礎研修と同じく、原則として、障害福祉サービス事業所などで知的障害、あるいは精神障害のある方への対応業務に従事する、もしくは、今後従事する予定のある人と定められています。実践研修の内容は、強度行動障害に対する環境支援や、チーム支援の方法、アセスメント、支援の評価方法、また危険な状況における対処法といった具体的な支援方法に及びます。また実践研修では、同じ職場で指導者として、働く人に支援のしかたなどを共有する方法にも言及があります。研修期間は基礎研修と同じく2日間で、合計12時間です。実践研修については原則2カ月以内の受講と定められています。実践研修では、やむを得ない事情がある場合について4カ月以内の受講が認められるケースもあります。
強度行動障害支援者養成研修の受講費用は、基礎研修、実践研修ともに2万円ほどに設定されていることが多いようです。ただし前述のとおり、都道府県や実施する機関、企業によって金額も異なるため、募集要項などで必ず事前確認をしてください。
事業所が強度行動障害児支援加算を算定するには、以下の要件を満たす必要があります。
・厚生労働大臣が定める基準に適合する強度行動障害を持つ児童(就学児)へサービスを提供すること(つまり強度 行動障害のスコアを元に市町村が、支援が必要と判断したこどもへのサービス提供であること)
・強度行動障害支援者養成研修事業の研修修了者によるサービス提供であること
※研修受講者は、常勤ではなく、非常勤の従業者であっても算定対象となります。
・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理指導担当職員、看護職員又は視覚障害者の生活訓練を専門とする技術者の養成を行う研修を修了した者を配置すること
・心理指導を行うための部屋ならびに設備を有すること
『厚生労働大臣が定める基準に適合する強度行動障害を持つ児童』とは、行動障害の区分と行動障害が見られる頻度に応じて、以下の強度行動障害児支援加算確認票によりスコアの合計が『20点以上』であることを市町村が認めた児童を指します。
行動障害の内容 | 1点 | 3点 | 5点 |
ひどく自分の体を叩いたり傷つけたりする等の行為 | 週に1回以上 | 1日に1回以上 | 1日中 |
ひどく叩いたり蹴ったりする等の行為 | 月に1回以上 | 週に1回以上 | 1日に頻回 |
激しいこだわり | 週に1回以上 | 1日に1回以上 | 1日に頻回 |
激しい器物破損 | 月に1回以上 | 週に1回以上 | 1日に頻回 |
睡眠障害 | 月に1回以上 | 週に1回以上 | ほぼ毎日 |
食べられないものを口に入れたり、過食、反すう等の食事に関する行動 | 週に1回以上 | ほぼ毎日 | ほぼ毎食 |
排せつに関する強度の障害 | 月に1回以上 | 週に1回以上 | ほぼ毎日 |
著しい多動 | 月に1回以上 | 週に1回以上 | ほぼ毎日 |
通常と違う声を上げたり、大声を出す等の行動 | ほぼ毎日 | 1日中 | 絶えず |
沈静化が困難なパニック | あり | ||
他人に恐怖感を与える程度の粗暴な行為 | あり |
155単位/1日。
地域区分は計算の便宜上10とする。
例)区分1-1の放課後等デイサービス(平日のみ開所)で、算定対象となるお子さま1名が月に5回利用している場合
155単位×5回=775単位
775単位×10=7,750円/月
重症心身障害児に対し指定放課後等デイサービスを行う場合(1・ハ)の基本報酬を算定している場合、強度行動障害児支援加算を算定できません。
「強度行動障害児支援加算」の算定には研修修了者が必要です。1ヶ月分の加算額は研修修了者への特別手当程度と言えるかもしれません。加算対象となる児童の支援にのみ算定されるので、全体的な収益の拡大にはあまり寄与するものではありません。故に「強度行動障害児支援加算」を取得して売上を上げるというよりは、強度行動障害のスペシャリストを配置する負担と考える方がいいかもしれません。