自閉症(自閉症スペクトラム障害)は、先天的な発達障害の1つで、特徴として以下のような特徴があるといわれています。
①社会性と対人関係の障害
②コミュニケーションや言葉の発達の遅れ
③行動や興味の偏り
従来、世界保健機関(WHO)の定めた国際疾病分類(ICD)やアメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)では、アスペルガー症候群などとともに広汎性発達障害というカテゴリーのもと自閉症という診断が位置づけられていました。2013年に刊行された「DSM-5」では、自閉症という障害名は廃止され、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の障害名のもとに統合されました。
そのため、今後自閉症という名称での診断は少なくなることが予想されますが、自閉症は現在も耳にする名称であり、また発達障害者支援法などの法律や文部科学省でも使用されています。
自閉症の原因にはさまざまな説がありますが、まだ特定はされておりません。生まれつきの脳機能障害であると考えられており、親のしつけや愛情不足など育て方が直接の原因ではありません。
最近は、自閉症の傾向があるこどもへの早期療育をおこなう例が増えてきています。早期から介入し療育をおこなうことで、特性自体を治療することは難しいものの、いじめ、不登校、抑うつなど二次的な問題を予防することができると言われています。
視線が合わなかったり近づくと避けたりする。人との関わりがあっても興味や感情を共有することが少ない。
「僕はいくつ?」と聞かれると「ぼくはいくつ?」とオウム返しをする。
ミニカーを1列に並べる。ドアを何度も開け閉めする。手をかざしてヒラヒラさせる。
毎日同じ道順をたどる。同じ服を着ることや同じ食物を食べることを要求する。
転んでけがをしても痛がらない。赤ちゃんの泣き声など特定の音を嫌がり耳をふさぐ。蛇口から流れる水を眺めることに熱中する。
自閉症のある子と接するときには以下のような工夫をすることで、その子の生きづらさをやわらげることができます。
「ちゃんと座って」「そこに置いて」などの曖昧な表現を使うと混乱しやすくなります。簡単な言葉でゆっくりと話すように心がけましょう。「前を向いて座ろう」「机の上に置いて」など短い言葉で、具体的に伝えまてください。また繰り返し同じことを伝えたいときには伝え方を統一しましょう。
苦手な音が聞こえる場所や見えるものがたくさんある場所では、絶えず刺激を受けてしまいます。静かなスペースを用意し、壁や机の上がスッキリとしている、物が置かれている場所にはカーテンをつけるなどして気が散らないようにしてください。
同じ遊びをしているときに、無理に別の遊びをさせる必要はありません。いつもの遊びをしてから、他の遊びにも誘ってみてください。例えば、いつもミニカーを1列に並べて遊ぶ場合には、車の絵本を一緒にみたり、駐車場に見立てた箱を用意してそこまで車を動かす遊びなどをしたりして、今興味のあるものから少しずつ、興味の幅を広げていきましょう。
変化に不安を感じやすい場合は、今後の見通しや自分のやることが、目に見えると安心します。「今日はプールのあと公園に行くよ」などの音声よりも、文字や絵の方が理解しやすいため、活動や手順は文字や絵、写真を使って流れを一覧にして見せてあげると安心することができます。また、いつ始まるのか、いつ終わるのかを感じ取ることが苦手な子もいます。その際にも目に見える方法で始まりと終わりを伝えるようにしてください。例えば、歯をみがき終わる時間を砂時計などで知らせます。
自閉症は、重度の知的障害を合併している人から、知的な障害がほとんどない人、IQ(知能指数)が通常より高い人まで幅広く、その個性も多様です。どこからどこまでが「知的障害」、どこからどこまでが「自閉症」と区切れるものではなく、まるで虹の光のように連続していることから、自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder:ASD)といわれます。早期に診断を受け、適切な支援を受けることが、将来的な社会生活のためにも大切になるといえます。