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変更その1:放課後等デイサービスの二類型化 「総合的な支援」とは 「特定領域への支援」とは 変更その2:公費対象外となりえるサービス内容 変更その3:基本報酬 変更その4:そのほかの支援の評価 不登校児童への支援の充実 家族への相談援助等の充実 最後に…… |
来年2024年度に迫った障害者総合支援法の改正にともない、厚生労働省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームからさまざまな資料が公表されています。今回は、その資料のなかから「放課後等デイサービス」の変更点について解説します。以下のことは、2023年10月18日の厚生労働省:児童発達支援・放課後等デイサービスに係る報酬・基準について≪論点等≫に記されています。詳しいことを知りたい方は参照ください。
放課後等デイサービスがどのようなサービスを提供するのか、改めて説明すると以下の通りです。
① 学校修学中の障害児に対して、放課後や夏休み等の長期休暇中において、
生活能力向上のための訓練等を継続的に提供する。
② 学校教育と相まって障害児の自立を促進するとともに、放課後等の居場所づくりを推進する。 しかし現状は、
公費負担による支援としてふさわしくない事業所があり問題となっています。
そこで放課後等デイサービスを「総合的な支援」と「特定領域への支援」の二つに分類する検討が
なされました。
厚生労働省から示されている放課後等デイサービスガイドラインに定められている事業所としての役割に加え、障害児の5領域(*)など、全体の視点を含めた総合的な支援を基本としたサービスを提供します。
*:5領域→「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」
参照:放課後等デイサービスガイドライン
総合的な支援に加え、子どもの状況に合わせた専門的な支援(理学療法、作業療法、言語療法など)を重点的に行うサービスを提供します。その際、アセスメント(子ども本人や環境など状況を収集・分析すること)を踏まえ、専門的支援の必要性を丁寧に判断し、計画的に実施されることが必要です。
近年、放課後等デイサービスの事業所が増えてきていますが、公費負担が適切か疑問視するサービスを提供している事業所が少なからず存在します。そこで今回の障害者福祉サービス等報酬の改定にともない、以下のサービスのみを提供している事業所は、公費負担の対象外になる場合があるので注意が必要です。
・ピアノや絵画のみの支援を提供している
・学習塾のような学習支援のみを提供している
ただし、ピアノや絵画などの支援でも、事業所の活動プログラムや個人に対するアセスメント、個別支援計画において、5領域とのつながりを明確化した支援内容としたうえで提供すれば、公費負担の対象となりえるようです。つまり、一般的に私費で負担する習い事のような支援も、総合的な支援との明確なつながりがあれば、公費負担を認めるということです。
放課後等デイサービスの現状は、支援の内容や年代、利用の仕方により、支援時間に差異があります。そこで、支援に対する人員配置の状況や支援内容に留意しつつ、支援時間の長短を考慮したきめ細かい評価が必要とされます。
また支援時間の長短にあわせた変更にともない、既存の延長支援加算の変更も検討しているようです。具体的には、一定時間区分を超えた時間帯の支援について、預かりニーズに対応した延長支援加算として評価してはどうか? ということのようです。
現在、放課後等デイサービスの基本報酬は、1日当たりの報酬として設定されています。そのうえで、定員規模による区分+平日と学校休業日で区分され、異なる単位数が設定されています。
そして平日であっても、サービス提供時間数が3時間以上か3時間未満かでも単位数が異なります。さらに、30分未満の支援は原則基本報酬を算定できません。
障害福祉サービス等報酬改定では、1日当たりの算定方法ではなく、支援時間の長短を考慮した算定方法に変更する可能性が出てきています。
上記の内容のほかに、不登校児童への支援の充実や障害児の家族に対する支援の充実なども検討されています。
小・中学校における不登校児童生徒数は24万4,940人(令和3年度調査結果)いるとされ、現在もその数は増加傾向にあります。そして、放課後等デイサービスでも不登校児童を受け入れ、支援しているのが実態です。
厚生労働省の令和4年度障害者総合支援法推進事業による「児童発達支援及び放課後等デイサービスにおける移行支援の取組状況調査」(令和5年3月公表)によると、放課後等デイサービスにおける不登校児童の状況について、以下のような数字が公表されました。
・有効回答事業所数4,022事業所のうち、不登校児童が2,522人いると回答があった
この数字からも、放課後等デイサービスで不登校児童の受け入れが高い印象を受けます。そこで、通常の発達支援に加えて、学校との連携のもと、継続的な通学につながる具体的な支援を行った場合の放課後等デイサービスに対する評価を検討する必要が出てきています。
放課後等デイサービスでは、思春期の子どもが意見を表明し、親子の葛藤が際立ってきます。そこで、年代に応じた親子の関係性を踏まえた家族支援が重要です。現行では、家庭連携加算・事業所内相談支援加算がありますが、これらの評価の見直しを検討してはどうかという意見が出ています。
また、放課後等デイサービスにおいて、家族が、子どもの特性やそれを踏まえた子どもとの関わり方などを学ぶ機会を提供した場合の評価を検討してはどうかという意見も出されています。
以上の内容は、2023年10月18日に開催された、厚生労働省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームによる資料によるものです。そのため、まだ検討段階であり、決定事項ではありません。
障害者総合支援法改定の内容は、2024年4月に施行されるまでは確実に「このように変更します」と言い切れません。ですが、検討の方向性はお伝えしてきた内容で動いていくはずです。
検討段階ではある内容ですが、それを事前に知っておくことで、自分たちの事業所がどんな準備しなければならないのかが少しずつ見えてくると思います。算定方法や単位数の変更を予期する提言もなされていますが、こればかりは2024年4月にならなければ具体的な数字は分かりません。
障害者総合支援法と障害福祉サービス等報酬の改定は、3年に1度のペースで行われます。