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全般性不安障害とは、生活の中で漠然とした不安や心配を慢性的に持ち続けてしまう疾患です。全般性不安障害の患者か抱える不安は、持続的でかつ、不安と感じる対象に不釣り合いな程過剰である場合が多く、本人がその不安の感情をコントロールできないのが、全般性不安障害の特徴です。その様な不安の気持ちが継続的に認められることから、体も継続的に緊張をしているため、身体的に疲れやすく、頭痛や肩こり、発汗などの症状が全般性不安障害には認められます。
不安症は以前、不安障害・不安神経症といわれており、全般性不安障害の他に、パニック障害や社会不安障害が挙げられます。
社交不安障害やパニック障害のように、不安となる感情が誘発される場所や状況が限定されるのに対し、全般性不安障害は不安を感じる範囲は非常に広く、日常に起きる生活の全てを対象としています。また、全般性不安障害の患者さん本人自身も、どうしてその事柄に対して、ここまで不安や心配が強くなってしまうのか分からず、余計に苦しんでしまう疾患です。
全般性不安障害の病状の初期には、不安の症状が日常生活のあらゆる所に散らばって出現するために、「そういう性格」として病的な不安とは受け取られない事が多く、身体症状やうつ病、さらには、他の不安症であるパニック障害や社交不安障害を併発してしまうことがあります。
全般性不安障害の原因ははっきりしていませんが、全般性不安障害になりやすい性格としては、心配性、ネガティブ、自身がない、完璧主義等が挙げられており、生物学的には脳内のセロトニンの分泌が関係している点や、遺伝性についても指摘されていますが、まだはっきりとはしていません。元々の性格も相まって、気づかれにくいという点も注意すべき特徴であると考えられます。
この様な病状の経過の為に、周りからは全般性不安障害の症状が十分に理解されず、時には症状を訴えても相手にされずに、結果として本人が我慢しすぎたりしてしまうこともあるので、全般性不安障害かもと疑われる方は医療機関へお早めに相談してください。
全般性不安障害は、不安障害の一種で、強い不安や危機感のために自律神経失調症のような症状(息苦しさ、動悸、倦怠感、めまいなど)が現れます。明らかな原因は分かっていませんが、脳の中の不安や恐怖を感じる器官(扁桃体など)の機能異常と考えられています。患者さんの割合は女性にやや多いですが、小児期から壮年期まで多くの世代でみられます。
仕事や学業などさまざまな場面・出来事・活動において、過剰な不安や心配を抱き、そのコントロールが難しい状態が6カ月以上続きます。全般性不安障害は、不安が伴い下記の症状のうち、3つ以上がみられます。
① 落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり
② 疲れやすさ
③ 集中力の低下
④ 怒りっぽさ
⑤ 筋肉の緊張
⑥ 睡眠障害
以上のような症状がみられ、その不安や心配、または身体症状による苦痛が大きく、就労や就学、日常生活にも支障をきたす状態であれば、全般性不安症と診断されます。
その際、甲状腺疾患など、その他の病気による症状ではないことを確認するために、身体疾患の検査や診察が必要となります。
また、自律神経失調症の症状が現れる可能性のある薬剤や、神経系の働きに作用する神経作用物質を使用したかどうかも確認することが必要です。
治療は薬物療法と精神療法を併用することが多いです。
●薬物療法
抗うつ薬として使用される、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ベンゾジアゼピン系抗不安薬などを使用します。 根本の不安症状に対してはSSRIやSNRIを、身体的な緊張や不眠には即効性のある抗不安薬を使用します。
●精神療法
「認知行動療法」という治療法が有効とされています。 この治療法は、ある出来事に対する自分の思い込みや考え方、受け止め方など、行動の特徴を認識し、修正することで、不安などの感情を軽減する治療法です。リラクゼーションなども効果があるといわれています。
全般性不安障害の患者は、周囲からは心配症であるように見えることがあります。初めのうちは、不安感や不調の訴えを聞いてあげることができても、同じことを繰り返していると、徐々に話を聞くことが面倒になってしまうことがあるかもしれません。不安や心配にゆっくりと耳を傾け、理解を示すことは本人にとって安心感を与えます。まずはじっくりと話を聞いた上で、これまで元気だった方が、不安と体調不良を訴え続けていると感じた場合は、全般性不安障害を疑って、早期に受診することを勧めてください。
全般性不安障害は、きちんとした治療を受けることで症状は回復します。