医療的ケア児等コーディネーターと医療的ケア児支援法

目次
医療的ケア児等コーディネーターとはどのような職種か
    ①医療的ケア児と医療的ケア
        《医療的ケア児の例》
    ②医療的ケア児等コーディネーターの目的
    ③医療的ケア児等コーディネーターになる方法

医療的ケア児等コーディネーターとはどのような職種か

「医療的ケア児等コーディネーター」とは、一体どのような職種なのでしょうか。以下では、医療的ケア児等コーディネーターの役割やなり方について説明します。また最後には、医療的ケア児等コーディネーターと関わりの深い2021年9月18日に施行された「医療的ケア児支援法(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律)」についても説明します。

①医療的ケア児と医療的ケア

「医療的ケア児」とは、生きていく上で日常的に医療的ケアが必要になる児童のことです。「医療的ケア」とは、代表的なものでは「喀痰吸引」「経管栄養」「血液中の酸素飽和度と脈拍数の測定」「導尿」「在宅酸素療法」「インスリン注射」などが挙げられますが、ケア児の症状により多岐に渡ります。医療的ケアは、医療者(医師や看護師など)が行う医行為(医療行為)とは区別されています。自宅、保育所、学校などの医療機関以外の場所で、家族もしくは研修を受けた教員や介護者等が日常的に行う医療的生活援助行為が、一般的に医療的ケアと呼ばれるものです。

《医療的ケア児の例》

  • 飲み込む力が弱く唾や痰を詰まらせてしまうことがあるため、一日に何度も喀痰吸引が必要な児童
  • 人工呼吸器など、医療デバイスによる補助や管理が必要な児童
  • 嚥下機能に問題があり、口から食事ができず、チューブや胃ろう(胃瘻)カテーテルなどを使い栄養の注入が必要な児童
  • 神経系の障害などで排尿がうまく行えず、尿道からカテーテルを入れ、尿の排出補助が必要な児童

②医療的ケア児等コーディネーターの目的

医療的ケア児が生きていくためにはさまざまな社会的支援が必要になります。しかし、まだまだ社会的な認知度も低いため、親御さんが医療的ケア児に必要なサービスや施設を探そうとしてもなかなか見つからず、苦労しているのが現状です。「医療的ケア児等コーディネーター」とは、医療的ケア児が必要としている支援やサービスの調整を行い、医療的ケア児やその家族が安心して過ごせるように、総合調整(コーディネート)を行う仕事です。加えて、医療的ケア児を支援するための地域づくりを推進することも、医療的ケア児等コーディネーターの役割です。似た職種として、障害を持つ児童などに対し、相談、支援、サービス調整などを行う「相談支援専門員」があります。しかし相談支援専門員は、医療的ケア児の分野に精通していないことも多く、より深く医療的ケア児をサポートできる存在として、医療的ケア児等コーディネーターが養成されることになりました。

③医療的ケア児等コーディネーターになる方法

医療的ケア児等コーディネーターには、医療的ケア児等に対する専門的な知識と経験に基づいて、支援に関わる関係機関との連携(多職種連携)を図り、とりわけ本人の健康を維持しつつ、生活の場に多職種が包括的に関わり続けることのできる生活支援システム構築のためのキーパーソンとしての役割が求められています。
医療的ケア児等コーディネーターになるためには、各都道府県で実施されている「医療的ケア児等コーディネーター養成研修」を受講する必要があります(無料)。養成研修は、講義と演習合わせて3~4日程度となり、東京都のように講義のみオンライン上で行う自治体もあります(日数、定員、講義方式などは自治体により若干異なります)。養成研修の主な受講対象は、医療的ケア児等コーディネーターとしての役割を担う予定のある、相談支援専門員、保健師、訪問看護師、行政職員などが想定されています。受講する上で、職業や年齢などの明確な定めはありませんが、自治体の推薦が必要となるケースもあります。

《医療的ケア児等コーディネーター養成研修カリキュラム例》

科目名 時間数 内容
1 総論 1時間 ①医療的ケア児等の地域生活を支えるために
②医療的ケア児等コーディネーターに求められる資質と役割
2 医療 3時間 ①障害のある子どもの成長と発達の特徴
②疾患の特徴
③生理
④日常生活における支援
⑤救急時の対応
⑥訪問看護の仕組み
3 本人・家族の思いの理解 2時間 ①本人・家族の思い
②意志決定支援
③ニーズアセスメント
④ニーズ把握事例
4 福祉 3時間 ①支援の基本的枠組み
②福祉の制度
③遊び・保育
④家族支援
⑤虐待
5 ライフステージにおける支援 2時間 ①各ライフステージにおける相談支援に必要な視点
②NICU からの在宅移行支援
③児童期における支援
④学齢期における支援
⑤成人期における支援
⑥医療的ケアの必要性が高い子どもへの支援
6 支援体制整備 1時間 ①支援チーム作りと支援体制整備/支援チームを育てる
②支援体制整備事例
③医療、福祉、教育の連携
④地域の資源開拓・創出方法
7 計画作成のポイント 2時間 演習に向けた計画作成のポイント
8 演習(計画作成) 7時間 事例をもとにした計画作成の演習
9 演習(事例検討) 7時間 事例をもとに、意見交換(グループディスカッション)
・スーパーパイザーによる計画作成の指導

要医療児者支援体制加算について

医療的ケア児等コーディネーターを配置した事業所は「要医療児者支援体制加算」の対象となり、障害福祉サービス等報酬を加算することができます。ここでは、この要医療児者支援体制加算について解説します。

①要医療児者支援体制加算とは?

「要医療児者支援体制加算」は、障害福祉サービス等報酬における加算項目の一つであり、加算は35単位/月となります。平成30年度障害福祉サービス等報酬改定により、計画相談支援及び障害児相談支援について、質のさらなる向上を目指すための見直しが行われ、要医療児者支援体制加算が新設される形となりました。

②要医療児者支援体制加算の対象となる事業所は?

重症心身障害など医療的なケアを要する児童や障害者に対して、適切な計画相談支援等を実施するために、「定められた研修」を修了し、専門的な知識及び支援技術を持つ相談支援専門員を事業所に配置すると、要医療児者支援体制加算の対象となります。この「定められた研修」というのが、前述した「医療的ケア児等コーディネーター養成研修」にあたります。医療的ケア児等コーディネーター養成研修を受講し、医療的ケア児等コーディネーターに認定された人材を配置することで、その事業所は加算の対象となります。

注目を増す医療的ケア児等コーディネーター

医療的ケア児等コーディネーターが注目されている理由の一つとして、医療的ケア児人口の増加が挙げられます。昨今、新生児医療技術が向上したため、ひと昔前の時代では命を落としていたような疾患や障害を抱える児童を助けられるようになりました。同時にそれは、継続的なケアが必要になる医療的ケア児の増加に繋がる形となり、2021年(令和3年)における国内の医療的ケア児人口は20180人まで増加しています。医療的ケア児の中には、日々頻繁なケアが必要になる児童もいて、ケアをする周囲の家族などに大きな負担が圧し掛かっていることが多いです。中にはこどものケアのために、仕事を退職したり、離婚してしまうケースもあります。不安や悩みを抱える医療的ケア児、またその家族が増える中、社会全体で支援を行っていく必要があります。その最前線にいるのが、医療的ケア児と社会の繋がりを総合調整(コーディネート)する医療的ケア児等コーディネーターであり、今各方面から注目されています。

最後に……

以上、医療的ケア児等コーディネーターについて解説しました。医療的ケア児が増加する中、医療的ケア児等コーディネーターに対しての需要も今後より高まっていくことが予想されます。いま、福祉、介護、看護などの仕事に就いている方であれば、医療的ケア児等コーディネーターはその延長線上にある仕事の一つともいえますので、医療的ケア児を救いたいという意思がある場合は、将来の仕事として考えてみるのもよいかもしれません。最後に、医療的ケア児支援法について説明して終わります。

①医療的ケア児支援法とは?

医療的ケアに関する法律として「医療的ケア児支援法(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律)」が2021年6月に成立、同年9月18日に施行されました。「医療的ケア児とその家族の日常生活や社会生活を社会全体で支援すること」を基本理念としており、そのための法的なルールを定めているのがこの医療的ケア児支援法となります。
医療的ケア児支援法の条文は、e-Gov(電子政府の総合窓口)で確認できます。

②背景にあるケア児人口の増加

医療的ケア児支援法が作られた背景には、医療的ケア児の増加が関係しています。少し前の時代には、疾患や障害を持つこどもの場合、出生時や出生後しばらくして亡くなってしまうことが少なくありませんでした。それが近年、新生児医療技術が向上したため、以前は助けられなかった命を救うことができるようになりました。しかし疾患や障害を持つこどもたちは、生き延びられても「医療的ケア児」としてその後もサポートが必要となるケースが多いです。結果、医療的ケア児人口の増加に繋がったと考えられています。
厚生労働省がまとめた「医療的ケア児について」の資料によれば、国内の医療的ケア児人口は2005年(平成17年)時点では9987人でしたが、2021年(令和3年)には20180人まで増加しています。

③ケア児や家族を社会全体で支援する法律

こどもたちの命が助かることは喜ばしいことではありますが、医療的ケア児が増加したことで新たな課題も浮き彫りになりました。医療的ケア児は、文字通り医療的ケアが日常的に必要になりますが、医療的ケアが行える保育所や学校などの施設は限られています。そのため身近な家族が医療的ケアを行なっているケースが多いですが、毎日のように医療的ケア児をケアするというのは、体力的にも精神的にも大きな負担となります。それが原因で仕事を辞めなければならなかったり、離婚してしまうケースもあります。また、医療的ケア児は「障害児」として認められないケースもあり、利用できる支援制度などが限られてしまうこともあります。そうした課題を踏まえ、医療的ケア児とその家族を社会全体で支援し、安心して生きていけるようにするために、この医療的ケア児支援法が作られました。

④医療的ケア児支援法のポイント

医療的ケア児支援法では、さまざまな条文が書かれていますが、ポイントとなるのは、以下のように「責務」が明確にされたことです。

  • 国や地方自治体の医療的ケア児支援が「責務」となり、措置が明文化された(医療的ケア児が在籍する保育所や学校へ支援する など)こと.
  • 保育所、学校等の「責務」が明文化された(看護師または喀痰吸引等が可能な保育士を配置する など)こと
  • 各都道府県に医療的ケア児支援センターを設置すること

今後、国、地方自治体、保育所、学校等は、「責務」として医療的ケア児を支援していく必要があるため、医療的ケア児への支援体制がより強化されていくと期待されています。







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