ホームスクーリング(ホームスクール)について

ホームスクーリングとは?

ホームスクーリング(ホームスクール)とは、学校に通わず《家庭》に拠点を置いて学習を行うことです。オルタナティブ教育の形式のひとつで、ホームエデュケーション(家庭ベース教育)とも呼ばれています。
アメリカやイギリス、カナダなど、欧米の多くの国ではホームスクールは制度化されており、アメリカでは372万人(2021年度調査)以上のこどもが、イギリスでは2023年に12万5,000~18万人のこどもが、ホームスクールで学んでいるというレポートもあります。制度化されている/されていないによって、認知度は異なるでしょうが、日本では制度化されてこそいないものの、選択肢の1つとして徐々に認知度が高まってきています。

不登校児童の増加と学校以外の学習の場

日本国内では、不登校の児童は増加傾向にあります。2023年の文部科学省の調査によると小・中学校の不登校児童生徒数は過去最多の34万6482人(小学校が13万370人、中学校が21万6112人)でした。これは前年度から4万7434人の増加で、11年連続で増加傾向が続いています。
文部科学省が定義する不登校は「30日間以上の連続した欠席」した児童を指すとあるので、学校を休みがちな潜在的な不登校児童を含めると、公表されている数字よりもさらに多くの生徒が存在すると云われています。
このような実情から、学校以外の居場所となるフリースクールや、通信制学校が注目を集めています。
その中で、学校以外でこどもが学習する手段に、家庭で学習をする「ホームスクーリング」があります。ホームスクーリングは手軽と思われがちですが、自宅で学力を伸ばすための学習をすべて実現するには様々な労力が必要です。ホームスクーリングのメリット・デメリットなどを把握した上で検討してみてください。

学校以外の学習手段が増加する背景

フリースクールやホームスクーリングでの学びが増加している理由としては、以下のような背景があると考えられます。

① 学校教育への不信感の高まりがあります。近年、学校でのいじめや体罰などの報道が後を絶ちません。こうした事件などを起因とした学校教育への不満から、学校以外の学びへの関心も高まっているのかもしれません。

② コロナ・パンデミックの経験とICTの発達です。インターネットを利用して自宅でも質の高い教育コンテンツを活用できるようになったことで、学校以外で良質な学習を受ける機会が増えてきています。

③ 多様性・個性を重視した社会的傾向も背景の1つです。近年、発達障害が注目され、定型的な学校教育より、こども一人ひとりの個性に合わせた教育を重視する親が増えていることも考えられます。

ホームスクーリングと就学義務違反

ホームスクーリングは、法律で明確に定められているわけではありませんが、日本国憲法第26条で保障されている「教育を受ける権利」や「教育の自由」の範囲内で行われる限り、合法的な教育形態と考えられています。
ホームスクーリングによる学習は、「正当な事由」があれば就学義務違反には問われません。その「正当な事由」の例として、「不登校」が挙げられています。不登校のこどもの学びの手段としてホームスクーリングを行うことは、問題ないといえるでしょう。ただし、こどもが高校や大学への進学を希望している場合は、ホームスクーリング以外で高卒資格を得る必要があることなどに留意しておく必要があります。

時間割からみるホームスクーリング

ホームスクーリングの時間割は、家庭によって柔軟に設定されます。だいたい朝9時頃から始まり、午前中に個別学習、午後には共同学習や屋外活動、読書などを組み込むスタイルが見られます。

《ホームスクーリング・タイムテーブルの例》
9:00~10:00 モーニングタイム:家族全員で取り組む学習(例: 賛美歌、読み聞かせ、詩など)
10:00~10:15 休憩:短い休憩を挟む
10:15~12:00 個別学習:こどもそれぞれが自分のペースで学習を進める時間
12:00~13:00 昼食・休憩
13:00~15:00 共同学習またはアクティビティ:プロジェクト学習、社会科、理科、絵画、生活スキルなど、家族で協力して行う学習や活動
15:00~17:00 自由時間・スポーツ・読書:自由な活動や、屋外での活動、読書など
  • 時間割作成・運営のポイント
    —————-
    • 柔軟性…
      定められたタイムテーブル通りにならないことが多いため、柔軟に対応することが大切です。
      —————-
    • 共同学習…
      家族全員で学べるものを取り入れると、効率化やこどもの吸収力向上につながります。
      —————-
    • 教材の選定…
      家族の興味や目標に合わせた教材を選ぶことが重要です。
      —————-
    • 朝の習慣…
      学習開始前、朝食やお手伝いなどの日課を済ませる家庭もあります。

ホームスクーリングに向くこどもの特徴

ホームスクーリングとはどういうものか、アウトラインはおわかり頂けたと思います。では、どのようなこどもにホームスクーリングは向いているといえるでしょうか。

〇好奇心旺盛

ホームスクーリングでは、学校の授業のように決められたカリキュラムがある訳ではありません。自分で興味を持ったもの、もっと勉強したい分野など、積極的に勉強することができますし、通常の授業では出会わないような分野に出会える可能性もあります。自分で学びたいものを選び、自発的に好奇心を持って学習を進められるとより良い効果が得られます。

〇親との関係性が良好

ホームスクーリングでは親がこどもの学習をサポートする割合が多くなってきます。特に小学校低学年のうちは、スケジュール管理など、自分でおこなうことが難しいことや、教材の準備などは親の役目となってきます。親との関係性が良好であれば、学習環境を整えられるだけでなく、さらなる自発的な学びや精神面での成長など、多くのことが期待出来るでしょう。

〇発達障害などの特性がある

発達障害を持っていると通常の学校のクラスでは自分の個性を発揮するのが難しい場合もあります。ホームスクーリングでは自分に合わせた環境で、伸び伸びと、好きなことを学べるので、委縮する事なく自分の個性を発揮でき、良い方向に作用させることができます。

〇対人関係が苦手

いじめを受けて引きこもり気味になってしまった等、対人関係が苦手でも、ホームスクーリングでは自分のペースで学ぶことができ、勉強に集中できます。インターネット環境があれば外出が難しい状態でも最新の情報を得る事ができますし、近年ではオンラインの技術も発達しているので、自室にいながら授業を受ける事も可能です。

ホームスクーリングのメリット

ホームスクーリングのメリットとしては以下の点が挙げられます。

  • こどものペースに合わせた学習
  • こどもの興味・関心に応じたカリキュラム
  • いじめや学校のストレスからの解放
  • 家族との絆が深まる
  • 学校の制約を受けない自由な学習環境

個別指導が実現しやすいのが大きな特徴です。学校では難しいこどものニーズに応じたきめ細かな教育が行えるのが魅力だといえます。発達障害を持つこどもにすすめられるケースも少なくありません。

ホームスクーリングのデメリット

一方で、ホームスクーリングのデメリットとしては、以下の点に注意してください。

  • 社会との繋がりが希薄になりがち
  • 教育内容にばらつきが出る
  • 継続的な学習環境の提供が保護者の負担になる
  • 教材の比較検討・購入などの労力が必要
  • 進学先の評価が読みづらい

学校教育のメリットである友人関係の構築や集団活動が難しくなります。教育内容も保護者の知識に左右され標準が保ちにくい課題があります。保護者の負担も大きく、長期間のホームスクーリングは困難を伴います。

ホームスクーリングの今後の課題

ホームスクーリングの今後の課題として、以下の3点が挙げられます。

①社会性の担保について

学校教育のメリットである集団活動が制限されるため、友人関係の構築が課題になります。外部の活動との連携により、社会性を身につける工夫が必要となります。

②教育の質の担保

教育内容・方法が保護者に委ねられるため、教育水準の標準を確保する仕組みが求められます。外部評価の導入など、制度設計が課題となっています。

③就学形態の多様化への対応

ホームスクーリング以外にも、通信制高校やインターナショナルスクールなど就学形態は多様化しています。こうした流れを踏まえ、柔軟な制度設計が期待されています。
ホームスクーリングを適切に行うためには、これらの課題に適切に対応していくことが重要だと考えられます。

最後に……

ホームスクーリングを行う場合でも、在籍する学校に出席扱いを申請することは可能です。ただし、出席扱いの基準は各学校の裁量に委ねられており、学習成果の確認などが必要となるケースが多いです。家庭ごとにホームスクーリングを行った場合でも、学習の進捗や成果を客観的に証明できる書類等を用意することは簡単なことではありません。
出席扱いを利用することで、学校との関係を維持しながらホームスクーリングを行う道が開けていきます。ただし、出席扱いの詳細は各学校に確認が必要です。







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