大学を受験するには高等学校卒業資格を取得しているか、取得見込みであることが必要です。この高等学校卒業資格は、全日制高校でも、もちろん通信制高校を卒業することでも得られます。実際、毎年多くの方が通信制高校から大学へ進学をしているので、通信制高校からの大学受験は問題なくできると言えるでしょう。
全日制よりも進学率が低いのは事実
学校の種類 | 大学への進学率 | 専修学校への進学率 |
通信制高校 | 16.7% | 23.8% |
全日制高校 | 54.4% | 23.0% |
参考:文部科学省 高等学校教育の現状
ただ上記の文部科学省が出したデータを見ての通り、通信制高校の大学への進学率は全日制高校と比べてかなり低いのも事実です。後述しますが、これは別に通信制高校の卒業者が大学への進学で不利になるという訳ではありません。通信制高校の卒業者は、そもそも進学を希望している人が少ないのです。これは通信制高校に通う人の3割は既に働いており、高卒資格を得るために通っているからです。日本では中卒・高校中退だと苦労することが多いです。しかし高卒資格を得られれば道が広がるので、そのために通信制高校に通っています。しかし目的はあくまでも高卒資格のためなので、進学はしないという方が非常に多いのです。他にもスポーツや芸能活動に集中するため全日制高校には通えず、卒業後も進学せずそのままスポーツや芸能業界での活動を目指す方、卒業したらすぐに就職したい方なども通信制高校には多いです。その結果、通信制高校から大学への進学率は、全日制高校と比べて低くなっています。
通信制高校は、全日制高校と違い専門性の高い美容、調理、プログラミングなどの分野について学ぶことができるという特徴もあります。そのため、卒業後は大学でなく専門学校に進学して、さらに技術と知識を磨こうという生徒も少なくありません。逆に通信制高校の中には、ほぼすべての生徒が大学進学を希望し、受験向けのコースを設定している学校もあります。大学進学よりも就職、専門学校への進学を重視している通信制高校もあるので、入学してから「しまった」ということのないように事前に資料請求をし、しっかりと比較検討するようにしてください。
通信制高校という学歴が、大学受験において低く評価されると思っているならそれは誤解です。大学に出す願書に高校名を記載する欄はありますが、出身校が全日制なのか通信制なのかを書く必要はありません。また、AO入試なども通信制高校から問題なくチャレンジできますし、AO入試を目指せる通信制高校やコースもあるくらいです。
先程も触れたように、通信制高校のなかには大学受験の指導に力を入れていない学校もあります。そういった学校はレポートや勉強の難易度はかなり低く、大学受験の対策にはなりません。極論すると、レポートの提出と最低限のスクーリングをしていれば卒業できてしまうので、一定以上の学力が必要になる大学受験には役立たないのです。
逆に「大学進学コース」を用意していたり、コースは設定していなくてもサポート校と連携して大学受験指導を行っている通信制高校もあります。そういった高校では全日制以上の大学受験対策をしてくれるので、問題なく大学へ進学をすることも可能です。
通信制高校と通信制サポート校は、名前は似ていますが、まったく違うものです。
通信制サポート校は、あくまでも通信制高校での学習をサポートする塾のようなものです。したがって、通信制サポート校のみでは高等学校卒業資格は取得できません。
大学受験に積極的な通信制高校には代表的なところとしてクラーク記念国際高等学校、飛鳥未来高等学校、第一学院高等学校などがあります。これらは東大や東工大、京大などの難関国立大学、早稲田、慶應などの有名私立大学などへの合格者も輩出していることが特徴です。誰もが偏差値70以上の大学に合格しているわけではありませんが、それは全日制高校でも同じことです。少なくとも偏差値55以上のまずまず名前を知られた大学に合格している人が多数というのは、中堅進学校並みの実績といってよいのではないでしょうか。
以上のように通信制高校は大学受験へのひとつのステップとして利用することができます。実際に通信制高校から大学に進学して気をつけたいポイントを紹介しますので、抑えて合格をつかみとりましょう。
通信制高校から大学を目指すのは何の問題もないものの、やはり注意しなくてはいけない点もいくつかあります。たとえば通信制高校は自主学習が基本となっていますが、大学は基本的にはスクーリングをすることになります(最近はコロナのせいでそうでもない大学が多いようですが)。通信制高校はコースに寄っては週に5日という全日制とほぼ変わらない登校日を設けて、毎日授業をすることもできます。毎日顔を合わせるクラスメイトもいるので、受験勉強で切磋琢磨することもできますし、大学にいった後のギャップも少なくて済みます。
通信制高校というのは、勉強をするのもしないのも自分次第です。あまり登校日のない学校を選ぶと、何日も勉強しなくても誰にも怒られません。しかし、そうなると大学受験はおろか卒業も難しくなりかねません。もし全日制高校に通っていれば、なんとなく毎日登校しているうちに、なんとなく卒業の日を迎えて、「まわりが進学するから、なんとなく自分も…」と大学に進学することもできるでしょう。しかし通信制高校から大学進学を目指すには「なんとなく」だけでは乗り切れません。勉強をするモチベーションを維持するために、大学進学は他ならない「自分のため」と、はっきりと自覚するようにしましょう。
最近は受験勉強を強力にバックアップする通信制高校も増えています。たとえば、家庭教師のトライが母体となっているトライ式高等学院の特進科では、受験対策専門のプロ講師によるマンツーマン授業を受けることも可能です。また、AO入試対策をしっかりとしてくれる通信制高校といえば、ヒューマンキャンパス高等学校も有名です。AOとは自己推薦のことですが、通信制高校から推薦入学というのはあまり想像できないかもしれません。しかし、実は通信制高校でもAO入試に問題なくチャレンジできるのです。さらに、施設的なサポートも重要です。たとえば家ではなかなか集中できない日もあるでしょう。そんな時に役立つのが通信制高校の自習室です。全国規模で展開している通信制高校なら家の近くのキャンパスに通うこともできます。「いざとなったら自習室で勉強できる」「わからないことは、キャンパスにいる先生に聞ける」といった環境を提供してくれるので、安心して受験勉強に励むことができそうです。
通信制高校に通いながら大学合格を目指すならできるだけ効率良く勉強することがカギになります。いくらでも時間がある分、ついダラダラしてしまうのを防がなくてはいけません。通信制高校での受験勉強を進める際のコツを紹介します。
あくまでも一例ですが、英文法の教材を熱心に勉強したものの、志望校の受験では、リスニングや読解がメインで英文法の問題は少ない場合、進学が失敗してしまう可能性が高いです。また、大学によってはリスニングは基礎レベルだが、読解はレベルの高い問題が出題されるケースなどもあるので、過去問題などの購入をしておく必要も出てくるでしょう。このように通信制高校から大学に進学するため勉強をする場合、志望校に合わせた教材の選択は非常に重要となります。
まだ通信制高校に入学していない、または入学しているけど目標が定まっていない方の中には、まだ志望校が決まってないという方も多いと思います。無理に志望する大学を決める必要はありませんが、モチベーションの維持や目標の達成のために最低でも第3志望くらいまでは決めておいた方が良いです。おすすめの選び方は今の自分の偏差値より、少し上の大学を選ぶという方法です。テストの結果に応じて選ぶのがコツです。
入試問題は各大学によって傾向があります。希望校に合格したいならその傾向を理解して、しっかりと対策を立てるようにしたいところです。ただこれは一人で勉強していると難しい部分でもあります。その点、毎年大学受験に挑む生徒を指導している通信制高校の先生には、情報もノウハウも蓄積されています。もしわからないことがあれば、通信制高校の先生やスタッフにどんどん質問するようにしましょう。通信制高校はきめ細やかなサポートをしてくれるところも少なくありません。生徒一人ひとりの状況、希望に応じて的確なアドバイスが期待できます。困ったことがあったら何でも相談してみてください。
通信制高校から大学進学は難しいと言われていますが、実際はそんな事はありません。通信制高校から大学合格した先輩も大勢います。特に大学受験に特化したコースを設けている通信制高校なら、下手な全日制高校よりも進学しやすいので、「大学に進学したいけど全日制高校は嫌だ」という方に最適です。一人の勉強に不安がある人は、通信制サポート校を利用するのもよいでしょう。サポート校によりますが、サポート校を利用した人の卒業率は97%と非常に高く、進学している人も多いです。