薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)について

目次
薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)とは
薬剤の使用過多による頭痛の原因
薬剤の使用過多による頭痛の症状
薬剤の使用過多による頭痛の診断
 《医師による評価》
薬剤の使用過多による頭痛の予後(経過の見通し)
薬剤の使用過多による頭痛の治療
最後に……

薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)とは

薬剤の使用過多による頭痛は、頭痛薬を過量に使用した人が、3カ月以上にわたり月に15日以上頭痛を起こした場合の診断名です。

・薬剤の使用過多による頭痛は、通常、片頭痛または緊張型頭痛のある人にみられます。
・痛みの種類には個人差があります。
・薬剤の使用過多による頭痛は、頭痛薬の服用頻度と、頭痛の発生頻度に基づいて診断されます。
・こうした頭痛の治療では、頭痛薬の使用を中止し、その頭痛薬を中止することで生じる症状を管理するために
 別の種類の頭痛薬を処方し、そして多くの場合、もともとの頭痛に対する治療薬も処方します。

薬剤の使用過多による頭痛は、一般人口の1~2%にみられます。男性よりも女性に多くみられます。
このタイプの頭痛がある人は、ほとんどが片頭痛または緊張型頭痛のために頭痛薬を服用しています。このような人は、薬で効果的に痛みが引かないため、頭痛薬の用量または服用頻度が過剰になっています。

薬剤の使用過多による頭痛の原因

薬剤の使用過多による頭痛の最も一般的な原因は、以下のものの乱用です。

・オピオイド
・ブタルビタール(butalbital、バルビツール酸系薬剤の一種)を含有する痛み止め(鎮痛薬)
・アスピリンまたはアセトアミノフェンとカフェインの併用
・トリプタン系薬剤(片頭痛を治療および予防する薬)

非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)やエルゴタミンの乱用もこの病気の原因になることがあります。 神経系が過敏になることで薬剤の使用過多による頭痛が起こると考えられています。つまり、痛みを誘発する脳の神経細胞が刺激されやすくなっているということです。 物質依存は薬剤の使用過多による頭痛の人によくみられます。また、薬剤の使用過多による頭痛になりやすい遺伝的素因がある場合もあります。

薬剤の使用過多による頭痛の症状

薬剤の使用過多による頭痛は毎日またはほぼ毎日発生し、多くの場合、朝最初に目を覚ましたときにみられます。痛みの部位と性質は人によって異なります。吐き気を感じたり、イライラしたり、集中力が低下したりすることもあります。

薬剤の使用過多による頭痛の診断

《医師による評価》

薬剤の使用過多による頭痛の診断は、頭痛薬を定期的に服用している人において、頭痛の発生頻度と頭痛薬の服用頻度に基づいて下されます。
以下のすべての条件を満たす場合、薬剤の使用過多による頭痛と診断されます。

・頭痛性疾患の治療として、アセトアミノフェン、アスピリン、その他の非ステロイド系抗炎症薬 (NSAID)を
 服用している人では月に15日以上、エルゴタミン、トリプタン系薬剤、オピオイド、
 もしくは複数の頭痛薬を併用して服用している人では月に10日以上の頭痛の発生。

・頭痛を和らげるために、1つまたは複数の薬を普段から過剰に服用しており、その状態が3カ月以上続いている。
・症状をうまく説明できる頭痛性疾患がほかにない。

まれに、他の病気の可能性を否定するためにCTまたはMRI検査が行われます。

薬剤の使用過多による頭痛の予後(経過の見通し)

治療を行うと、10年後には約50%の患者で痛みが消失(寛解)します。片頭痛の患者は、緊張型頭痛の患者より回復が良好な傾向にあります。
1年間の治療後に1カ月当たりの頭痛の日数が減った人は、寛解がより長く続く傾向があります。

薬剤の使用過多による頭痛の治療

・もともとの頭痛(通常は片頭痛)を予防する別の薬
・乱用している頭痛薬の中止
・薬剤を中止した後に起こる離脱症状を管理するために、別の種類の頭痛薬(レスキュー薬)を
 使用するときに別の薬剤(つなぎの薬)
・バイオフィードバック法や認知療法

通常、もともとの頭痛を予防するために、医師はまず患者に別の頭痛薬を投与します。その後乱用している薬剤を中止しますが、多くの場合、突然中止します。しかし、オピオイド、バルビツール酸系薬剤、またはベンゾジアゼピン系薬剤を高用量で服用している場合は、2~4週間かけて徐々に量を減らしていきます。これらの薬剤を急に中止すると、吐き気、落ち着きのなさ、不安、睡眠不足などの症状が生じることがあります。どのような種類の痛み止めでも、中止すると、頭痛の頻度、持続時間、強度が増します。薬剤を中止した後の症状は、数日から最長で4週間続くことがあります。
乱用していた薬剤を中止した後に起こる頭痛の治療には、レスキュー薬が使用されます。可能であれば、別の種類の頭痛薬を使用します。医師はレスキュー薬の使用をできれば週2回未満に制限します。
レスキュー薬や予防薬による治療で症状を緩和できる可能性が低いとみられる場合は、つなぎの薬として他の薬剤を投与することができます。つなぎの薬としては、以下のものがあります。

・NSAID
・コルチコステロイド
・ジヒドロエルゴタミン
・プロクロルペラジンとジフェンヒドラミン
・クロニジン(乱用されていた薬剤がオピオイドであった場合の離脱症状の緩和に用いられる)
・フェノバルビタール(乱用されていた薬剤がバルビツール酸系であった場合、
 離脱によるけいれん発作の予防に用いられる)

薬物の過剰使用による病気の治療後には、頭痛を止めるために使用するすべてのレスキュー薬やつなぎの薬の使用を、以下のように制限するよう医師から指示されます。

・NSAIDは月に6日未満
・トリプタン系薬剤またはエルゴタミンを使用するか、複数の頭痛薬を併用する場合は、月に4日未満

頭痛の予防薬は処方された通りに服用を続けるべきです。
医師は頭痛の日記をつけることを推奨します。そこには、発作の回数と発生時刻、頭痛の引き金と考えられる要因、および治療に対する反応を記録します。このような情報があれば、頭痛の誘因を特定して、それを排除できる可能性があります。それにより、患者は頭痛の誘因を回避することで治療に参加でき、医師は治療の計画や調整がやりやすくなります。
バイオフィードバック法や その他の認知療法(リラクゼーション訓練、催眠術、ストレス管理など)は、注意の向け方を変えることにより、頭痛をコントロールまたは軽減したり、頭痛に対処したりするのに役立つことがあります。バイオフィードバック法を実践すると、痛みをコントロールすることができるようになります。
乱用していた薬剤の使用は避けるようにカウンセリングが行われます。また、健康的な生活習慣を身につけるよう指導されます。

最後に……

用語についてですが、「薬物乱用頭痛」から「薬剤の使用過多による頭痛」に変更になりました。これまで、Medication-overuse headacheは、ICHD-2日本語版の訳で「薬物乱用頭痛」を採用し、広く一般的に使用されるようになりましたが、一方で、「薬物乱用」という言葉が非合法の薬物の乱用を連想させるとして、不利益や誤解が生じる恐れがあることから、変更が望ましいのではないかという意見がありました。そこで、ICHD3beta版、ICHD3では、「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」に変更となっています。今後は、頭痛治療薬による乱用頭痛は「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」という用語が使用されるようになると思います。
薬剤の使用過多による頭痛は、市販薬でも処方薬でも起こる可能性があります。この頭痛への対応は、原因となる薬剤の服用を減らすことと、元々ある片頭痛などに正しく対処することが重要です。そのためには、病院での適切な診断と治療をするようにしてください。







このボタンがあればオンライン予約が可能です。



    • オンライン福祉事業所検索
      「キーワードで検索」「地域より選ぶ」「事業所種類」や「仕事内容/特徴」を利用して絞り込めます。
    • オンライン事業所見学予約
      障がい福祉事業所が有料登録されていると、当サイトから見学予約を行うことができます。検索をしていただくと各事業所の一覧が表示されます。






▶アカウント登録済の方はログインください




    • 事業所見学予約システム
      全国福祉事業所検索/予約サイト「放デイキューブ」の無料登録/有料登録のご案内です。