回答7 チックとは、まばたき、顔をしかめる、口をゆがめる・とがらせる、舌を突き出す、鼻をピクピクさせる、首を左右に振るといった動作性の症状(運動チック)と、咳払い、鼻や舌を鳴らす、叫びや単語を連発するなどの音声性の症状(音声チック)に大別されます。
チックはわざとやっているのではなく、こども自身も意識せずにやっている行動です。叱っても止まりませんし、短時間なら意識して止められても、ずっと止めようとすると苦しくて疲れてしまいます。また、意識すると余計にチックが増えるこどもが多いので、叱ってもプラスになることはありません。チックを見ても、「またやってる」とか「やめなさい」と注意せず、そっとしておいてあげてください。
チックを持つこどもは多く、5~10人に1人は一時的にチックを呈するといわれています。6~7歳頃に最も多くみられますが、症状が軽ければこどもも困らず、家族もチックとは認識せず「くせ」と思う程度で病院を受診することもありません。
生活の中でのストレスや不安によって症状が引き起こされたり、変化したりするため、「心の病気」と誤解されることがあります。また家族も、「育て方が悪かったのでは」と自責的になってしまうこともあります。しかし、チックの原因は生物学的因子、つまり「生まれつきチックの起こりやすい脳の性質」であり、多因子遺伝が考えられています。「叱られた」、「学校で嫌なことがあった」など、何らかの出来事の後にチック症状が出る場合もありますが、それは原因ではなく、単なるきっかけに過ぎないことが多いと考えられています。
こども自身が困らない限り、薬を使って治療する必要はありません。「チックがあると学校でいじめられるのではないか」と心配して治療を希望させるご家族もいらっしゃいますが、こどもが困っていない段階で、先回りして心配の種を取り除く必要はありません。チックがあっても、気にせず、困らずに普段の生活を送ることができれば問題ありません。チックが気になり出すと、周囲は四六時中そのことばかり気になってしまうかもしれませんが、「目をパチパチさせる変なくせ」ばかり強調してその子を見るのではなく、「思いやりのある優しい○○くん」と、その子を全体として、人格を持ったひとりの個人として評価する気持ちを忘れないようにしましょう。そして、こどもには「多少のくせがあっても、自分はこれで大丈夫なんだ」と自尊感情を持てるようにしてあげてください。
ですのでチックは、あまり特別のことではないと思っていただいて大丈夫です。症状が長く続くようでしたら一度医療機関にご相談に行かれることをお勧めします。