放課後等デイサービスは2012年4月に児童福祉法に位置づけられた福祉サービスです。略して「放デイ」と呼ぶこともあるようです。従来は未就学児と就学児がともに通うサービスでしたが、2012年の児童福祉法改正によって、未就学児のための「児童発達支援」と、就学児のための「放課後等デイサービス」に分かれました。
通所支援サービスとして、放課後等デイサービスは以下のように位置づけられています。
“この法律で、放課後等デイサービスとは、学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第一条 に規定する学校(幼稚園及び大学は除く)に就学している障害児につき、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センターその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与することをいう。(児童福祉法第六条の二の二)” |
つまり放課後等デイサービスとは、障害児が生活向上のために必要な訓練を行い、社会と交流を図ることができるよう個々の環境に応じて適切かつ効果的な指導が期待されるものということになります。対象となるのは原則として6歳から18歳までの就学児童で、障害手帳、療育手帳(※「愛の手帳」「みどりの手帳」と呼ぶ地域もある)、精神障害者保健福祉手帳などの手帳を所持する児童。または、発達の特性について医師の診断書がある児童。厚生労働省「放課後等デイサービスガイドライン」によって、ひとりひとりの個別支援計画に基づき、以下の活動を組み合わせて支援を行うことが求められています。
①自立支援と日常生活の充実のための活動 ②創作活動 ③地域交流の機会の提供 ④余暇の提供 |
放課後等デイサービスは、2012年に制度がスタートしたときの利用者数51,678人から、2014年には73,985人になり、2016年7月には139,718人になっており、現在まで利用者数は急速に増えています。(厚生労働省統計情報「障害福祉サービス等の利用状況について」より)
保護者の必要性に応じるために、株式会社などの民間事業者の参入したことで放課後等デイサービスの数が増えて、障害のある子どもたちの放課後の居場所が増えました。しかし、療育内容やプログラムの質に差があるため、療育的な関わりをせずに単なるお預かりになっている放課後等デイサービスもあることが問題視されているのも事実です。現在は、厚生労働省が放課後等デイサービスのガイドラインを出すなど、療育の質の向上に向けた取り組みが進んでいます。
女性の活躍が言われる一方で、こどもの小学校入学によって夜間まで預けることが困難になり、ワーキングマザーが働き方の変更を強いられる「小1の壁」が取り沙汰されています。この問題に対応するために民間学堂と放課後等デイサービスが急増しています。
そこで学童と放課後等デイサービスの特徴を比べたところ、放課後等デイサービスは障害のあるお子さんのための3つの特徴があることがわかります。
① ひとりひとりに合わせた療育が受けられる ② 小集団の中で社会性を身につけられる場所である ③ 家族のサポーターとしての役割を担っている |
では、具体的には学童と何が違うのかを以下説明してみます。
まず小学生や中学生のお子さんが放課後を過ごす場所は、学校の放課後クラブ、児童館、図書館、学童、習いごと、公園、友達の家、祖父母のお家、自宅などがあります。その中でも、お子さんが安全で安心して過ごせる場所として注目されているのが「学童」と、障害のあるお子さんのための「放課後等デイサービス」です。
学童とは、「学童クラブ」「放課後こどもクラブ」「民間学堂」の3つに分けられます。
親が働いていることが利用の条件となります。指導員が見守る中で放課後を過ごします。
対象:親が就労している小学生3年生までの児童。一部の自治体では4年生以上も可能。 時間:平日は下校時から18時。土曜日は9時~17時が多い。 内容:こどもが自由に遊んでいる。児童館等との併設のところは、月3-4回ほどの開催されている工作等のイベントに参加することができる。 料金:東京23区の場合、おやつ代込みで4,000円~7,000円/月 運営:公設運営(自治体による直接運営)がもっとも多い。最近では民営(自治体から委託をうけた保育園、NPO法人、民間企業が運営)をしているところも多い。 |
公立小学校に通う全員が対象です。授業後の空き教室などで遊びます。
対象:公立小学校に通う全児童が対象。
自治体によっては、学区外の子どもの受け入れをしているところもある。
時間:平日は下校時から16~17時(季節や、自治体によって異なる)。
土曜日は実施してないところが多い。
内容:学校内や児童館で、自由に好きなことをして過ごす。
料金:無料の場合が多い。
運営:名称は各自治体によって異なる。(例:はまっこふれあいスクール/横浜市)
自治体による直接運営が多いが、最近では自治体から委託をうけたNPO法人、民間企業による運営が増えている。
早朝・夜の延長保育や、夕食、習い事付きなど多様なサービスを提供しています。
対象:親の就労の有無や、年齢制限は問わないところが多い。
施設によっては幼稚園・保育園の子どもをお預かりしているところなどさまざま。
時間:平日は、下校時から20時までは、ほとんどの施設が開校している。
施設によっては、22時や24時間・お泊り可能なところもある。
夏休み等の公立学校が休みの平日は、朝から対応している。
内容:子どもがやりたいプログラムを選択できる施設が多くある。
学習時間を設けて宿題や持ち込んだテキストにも積極的に取り組む。
お迎えが遅い子どもは手作り夕ご飯を食べることもできる。
料金:入会金3万円、週1日~5日等の利用日数や一日の滞在時間によって料金体系が異なる。1日4時間滞在・週5日の場合の目安は1か月5~6万円程度。
運営:民間企業や塾が、自治体の助成を受けずに運営。
障害のあるお子さんの保護者のニーズに応えるために、全国的に増えている。
対象:親の就労の有無は問わない。障害のある小学校1年生から高校3年生。
定員10人に対して大人が2~3人体制
時間:平日は下校時から18時まで。祝日・学校休業日は10~18時
内容:個別支援計画に基づく療育プログラムや学習指導、集団遊び、SSTなど、障害児のためのプログラムの提供などが提供されている。
料金:サービス利用料金の9割を自治体が負担。
放課後等デイサービスの利用料金は自治体ごとに多少の差があり、利用者の負担は1割なので1回あたり750円~950円。
負担額は世帯の収入毎に月額に上限が定められている。
運営:NPO法人、社会福祉法人、民間企業が運営。
学童と放課後等デイサービスを比較すると、それぞれに特徴があることがわかります。
学童にはない放課後等デイサービスの特徴とは何かということを、以下、放課後等デイサービスの特徴である3つを順次紹介します。
放課後等デイサービスではみんなが同じプログラムに取り組むのではありません。特徴の1つは「ひとりひとりに合わせた療育」を提供することにあります。集中力がもつのが5分のお子さんに15分間集中させようとしても、そのことで勉強そのものが嫌いになってしまったらもともこもありません。プログラムに合わせるのではなく、個別支援計画にもとづいて一人ひとりの課題にあわせたプログラムを設定します。具体的には、保護者との面談をとおして個別支援計画を作成し、お子さんの発達段階や特性に応じて課題を設定します。これは学童クラブや放課後子どもクラブにはない特徴です。
特徴の2つ目は「小さな集団」であることです。ひとり遊びなら家でもできますが、他のお子さんと一緒にすごすので“自分の思いどおりにならないこともおきる環境となります。学童クラブや放課後子どもクラブ、民間学童の定員が40~70人なのに対して、放課後等デイサービスの定員は10人ほどの小さな集団です。小さな集団のメリットは、集団の中で人を傷つけず、自分も傷つかない距離でお友達と関われるように、スタッフの目がとどく中で自由にすごせることにあります。
放課後等デイサービスの3つ目の特徴は、家族のサポーターとして「レスパイト(respite)」の役割を担っていることです。レスパイトとは、「休息」「息抜き」「小休止」という意味です。福祉サービスなどを利用している間に、介護をしている家族などが一時的に介護から解放され、休息をとれるようにする支援のことです。
放課後等デイサービスでお子さんをお預かりしている間に、ご家族が自分のための時間を持つことができ、家のご用事や兄弟の世話をすることができます。お母さんが息抜きできることは、お子さんにとってもいい効果があります。レスパイトをぜひ活用してみて下さい。よって放課後等デイサービスは、障害のあるお子さんだけでなく、家族のサポーターでもあるのです。
障害のあるお子さんが安全に安心してすごせる場所として学童と放課後等デイサービスをご紹介しました。それぞれに特徴があり、お子さんの成長や生活に合わせて使い分けることができます。
一方で、放課後等デイサービスは「ただのお預かりになっているのではないか?」と厳しいご意見を聞くこともあります。確かに、放課後等デイサービスとしての本来の役割を果たせていないデイサービスもあるのかもしれません。その場合は、先ほどあげた
①ひとりひとりに合わせた療育を提供できること、 ②小集団の中で社会性を身につける場所であること、 ③家族のサポーターとしての役割を担っていること、 |
以上の3つをどのように提供しているのか、見学の際に確認してみて下さい。
お子さんに合った放課後の居場所を探す手がかりになるのではないかと思います。
放課後等デイサービスは、地域にいくつもあり、事業所によっては特色や雰囲気も違うため、お子さまにあった事業所を慎重に選んで下さい。ここでは、放課後等デイサービスを選ぶ6つのポイントについてご紹介します。
最寄りの放課後等デイサービスに定員に空きはあるかどうかを確認して下さい。
どんなによい事業所があったとしても、定員に空きがなければ入ることはできません。人気の事業所は定員がいっぱいの場合もありますので、まず定員に空きがあるかどうかを必ず調べるようにして下さい。
見学や体験会を定期的にやっているかどうかも大切なポイントです。
見学や体験会を実施している事業所は、通所も比較的スムーズに行えることが多いはずです。
放課後等デイサービスに通所するまでの流れ(「放課後等デイサービスの利用の手引き」参照)は、以下の通りです。
①事業所へ問い合わせ ②見学・体験会への参加 ③曜日ごとの空き状況の確認 ④サービス利用計画と医師の診断書を自治体に提出 ⑤受給者証の発行 ⑥事業所との契約 ⑦通所の開始 |
事業所への問い合わせから、見学・体験会までに時間がかかってしまう事業所は、なかなか通所までスムーズに進まないことがあります。その間に、通所したい事業所の空きがなくなることもよくあるので気をつけて下さい。見学・体験会までの流れがスムーズな事業所は受け入れ態勢もしっかりとしており、通所までも丁寧に対応してくれるところが多いはずです。
自宅からの通いやすさ、通所の便についても確認して下さい。
放課後等デイサービスまで自家用車で送迎する場合もありますが、事業所によっては送迎サービスがあります。小学校から事業所にお子さまを送ってくれ、帰りは自宅まで送り届けてくれます。利用者に合わせた送迎サービスをしてくれるところもありますので、直接事業所に相談してみることをおすすめします。
送迎サービスがあると、親が送迎する手間がかからない分、家庭のこともできるので、かなり便利です。また、送迎の時間を通して、事業所のスタッフの方とも関係性を深めることができ、お子さまの成長にもプラスになる側面もあります。
こどもへのプログラムの内容も確認しておくべきことです。
放課後等デイサービスでは、お子さまの症状が重度か軽度かによって支援内容が異なってきます。支援するプログラムの内容にも、遊びや運動・音楽・学習・療育など、さまざまな種類があります。
《プログラムの種類》 ・学童保育タイプ(学校の宿題・散歩・遊び・自由時間など) ・運動タイプ(運動・からだ遊び・ボルタリング・レクレーションなど) ・音楽タイプ(ダンス・リトミック・楽器・オリジナル体操など) ・学習タイプ(勉強・英語・パソコン・学習を中心としたプログラム) ・療育タイプ(創作活動・仕事体験・作業療法など一人ひとりに合わせたプログラム) |
放課後等デイサービスによって特色が違います。どれか一つだけのプログラムというよりは、曜日や対象によって複数の種類のプログラムを実施している事業所が多いようです。お子さまの特性に対して、どのような支援プログラムが効果的かをかかりつけの医師や相談員などに相談しながら検討していくことをお薦めします。
いくつか、よさそうな放課後等デイサービスが見つかったら、実際に問い合わせて見学に行ってみることをおすすめします。どんなに事業所の特色やプログラム内容を文面で調べても、実際に行って体験するに越したことはありません。
行って施設の外観や内装・設備などを実際に見ておくことも大切です。定員の人数に対して十分な広さがあるのか、安全面や衛生面などの配慮があるかどうかも確認して下さい。また支援員がどのようにこどもに接しているかも見ることができます。
見学に行くと、事業所の責任者がお子さまの状態をカウンセリングして適切なアドバイスをしてくれます。また、お子さまが実際にプログラムを体験する様子を見ながら、総合的に評価することもできます。
最後は、お子さま本人の気持ちがもっとも大切です。
どんなに親がいい事業所だと思っても、お子さま本人が気に入らなく行きたくない場所であれば、そこに通うのはお薦めいたしません。おそらく、保育園・幼稚園や学校でも周囲となじめない体験が一度や二度、お子さまにもあったことと思います。そういった中で、抵抗感のある環境に新しく飛び込んでいくのは、とても勇気がいるものです。最後は、お子さま本人の気持ちもよく確かめてから、事業所は選ぶようにして下さい。
その1)まだ放課後等デイサービスを利用したことがなく、利用を検討中だという人は、 まずは放課後等デイサービスを見学に行くことをお薦めします。 (詳しくは、「放課後等デイサービスの選び方」を参照) その2)それから住んでいる自治体の障害福祉の窓口で「受給者証」の発行の申請をします。 |
受給者証は福祉サービスを利用するために市町村自治体から交付される証明書です。受給者証には保護者と児童の住所、氏名、生年月日、サービスの種類、その支給量(日数や時間数)が記載されます。受給者証には2種類あり、「福祉サービス」を受けるためのものと「医療」を受けるための受給者証があります。放課後等デイサービスは療育手帳を取得していなくても、受給者証があれば利用することができる福祉サービスです。福祉サービスのなかでは「障害児通所支援」に該当します。